コンタクトセンター最前線(第33回):センター統合を機にオフィス環境を整備 生産性と品質のさらなる向上を目指す

(株)東京スター銀行

2001年6月、 新たなスタートを切った (株) 東京スター銀行。 同行は、 3カ所に分散していたコールセンター機能を統合することで、業務効率の改善を図った。 統合の経緯と今後の展開について紹介する。

独自性の高い商品とチャネル作りで資産形成のパートナーに

 2001年6月、東京相和銀行からの営業譲受により、首都圏を基盤に新たに営業を開始した(株)東京スター銀行。同行が掲げるフィロソフィーは、「“Financial Freedom”お金の心配のない、経済的な自由を手に入れるために。お客さまをサポートいたします」。パートナーとして、顧客が金融知識を身に付ける手伝いをし、お金にまつわる問題を解決することを目指し、ビジネスを展開している。
 同社の顧客は中小企業と個人。従業員数30名以下の小規模な企業や個人事業主などを対象に、無担保・第三者保証不要の融資を実施したり、ペイオフ対策として日本初の保証付新型外貨定期預金の開発や金利優遇キャンペーンなどを積極的に行った結果、2003年9月末現在の預金残高は1兆678億円に達し、営業開始以来、1兆円を超える預金残高を維持している。
 こうした業績を支えるのが、店舗、コールセンター、Webサイトといった各種チャネルである。同行では、百貨店内に店舗を設置したり、顧客がゆったりと心行くまで相談できるコーチング・ブースを設けたり、さらには定期的に資産運用セミナーを開催するなど、独自の施策を積極的に推進。また、操作性に優れたWebサイトの構築や店舗における高品質なサービスを追求すると同時に、コールセンターにおいても高品質なサービスの提供に注力している。

分散していたセンター機能を戦略的に統合

 同行がコールセンターを開設したのは、2001年6月。旧行時代より東京の幡ヶ谷に開設していた、既存顧客を対象としたテレホンバンキングを担うコールセンターを引き継ぐかたちでスタートした。続いて同年11月には、東京の古川橋に新規顧客を対象に各種問い合わせや資料請求を受け付けるコールセンターを開設。さらに、2003年8月には、ローン商品の1〜90日までの延滞の督促とその管理業務を行うコレクションを開設した。
 これらのセンターは、古川橋にあったコールセンターが統括していたが(図表1)、センター機能が分散していたため、業務改善による生産性向上や人材育成による応対品質の向上には限界があった。そこで、2004年7月、東京の西新宿に3つのセンターを戦略的に統合。約150ブースを有するコールセンターを新設した。

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 同センターは、IPネットワークを構築し、杉並事務センターにあるマシンルームにシステム機器を集中させた。その結果、西新宿のコールセンターには、PBX、サーバーなどを設置する必要がなくなった。また、電話回線やIPネットワークを杉並と西新宿間で二重化しており、万一の場合でも回線を確保することが可能となった。システム機器に関してもバックアップ策を講じており、万全を期している。
 さらに、今回の統合により、センターの受発信可能コール数が飛躍的に拡大。100万件の受発信が可能になった。

コールセンターの特性を踏まえてオフィス環境を整備

 同行がコールセンターの統合に当たって留意した点は、コールセンターの特性を踏まえたオフィス環境の整備である。
 まず、考慮したのは立地。同行が望む人材を大勢集めるには、アクセスの良さが不可欠である。JRのほかに私鉄と地下鉄が乗り入れている新宿は交通の便が良く、東京はもちろん埼玉や千葉からの通勤も容易だ。次に、建物については、マネジメントの観点からワンフロアでセンターを完結できること、またスタッフにとって快適空間であるべきとの考えから空調設備が整っていること、新しくきれいな建物であることなどを条件としたという。
 また、何より優先したのは個人情報をはじめとするさまざまなデータが集まるコールセンターに求められる高いセキュリティである。同行では、入退館カードを全スタッフに携帯させることで、入退館の管理をシステム化。これと同時に、階層別に入出時間を制限している。さらに、一人ひとりにロッカーを設け、バッグなどの私物はブースに持ち込めないようにしているほか、センター内に4台の防犯カメラも設置している。
 もうひとつコールセンターの特性として挙げられるのが、ストレス・マネジメントである。センター長の意向により、オペレータが少しでもストレスを軽減できるようにと、フロアの一番景色の良い場所にリフレッシュルームを設けた。リフレッシュルームは明るく見晴らしが良いだけでなく、観葉植物や飲料のベンダーマシンも置かれており、申し分ない環境だ。あらゆる面で配慮の行き届いたコールセンターは、訪れる他部署の社員たちに「ここで働きたい」と言わせるほどである。

研修ルーム- リフレッシュルーム-

研修ルーム(写真左)/リフレッシュルーム(写真右)

センター統合を機にコールセンター・システムを拡充

 ではここで、具体的な受付体制について見てみよう。
 席数は137ブース。内訳はオペレータ席が118、スーパーバイザー席が12、マネージャー席が5、それ以外にセンター長席、本部長席がある。このほかに個人金融営業リモートチームのブースがある。
 スタッフ数は、オペレータが82名、スーパーバイザー以上を勤める行員が29 名となっている。コールセンターによっては、マルチスキルのオペレータを育成するケースと、逆にスキルを専門特化させるケースがある。同行では双方の利点を活かして、テレホンバンキング、フリーダイヤル、コレクションの業務別にオペレータをグループ分けし、各業務内でマルチスキルオペレータを育成している。
 受付窓口には、前述の通りNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを採用。キャンペーン、テレホンバンキング、ローン、セミナー受付など用件別に異なる番号を設けることで適切なオペレータにつなぎ、迅速かつ的確な応対に努めてきたが、今後はコールの振り分け先を集約する意向。現在、キャンペーンで使用している0120-82-1189とテレホンバンキングの0120-81-8689をメインにし、ほかの番号のコールをこの2番号に振り分ける計画だ。
 受付時間帯は、8時から22時までだが、用件によって受付時間や休日は異なる。時間外は、IVRでのみ対応している。
 続いて、コールセンターシステムに目を向けると、IP-PBX、CTI、IVR、独自に開発したコールセンターシステムなどで運用を行っている。
 加えて、今回のセンター統合を機に、ボイスロギングシステムをリニューアルした。同システムはオペレータ別、通話時間別、業務内容別など細かく音声を抽出することができる。また、特殊な録音方法を採用していることから、音声がクリアだという。

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研修カリキュラムを設けて各業務のクオリティ向上に努める

 オフィス環境の整備やコールセンター・システムの拡充により、同行ではさらなる生産性と品質の向上に注力していることがうかがえる。だが、生産性と品質の向上へ向けた取り組みはこれだけでは十分でない。同行では、各種インフラを揃えると同時により一層、安定したプロセスを提供しようと、オペレータへのトレーニングも恒常的に実施している。
 具体的には、業務内容別に研修カリキュラムを用意しており、いずれも基本研修と応用研修の2つが用意されている。
 テレホンバンキングの研修を例に挙げると、基本研修は、①電話応対における基本的なマナーや知識を習得する基礎研修、②業務実施に必要な基礎知識を習得する専門研修、③それぞれの対応業務に関する知識と実践スキルを習得する業務研修、④ロールプレイングを中心とした応対レベルの確認を行う実務研修で構成されており、これらを30日間で学ぶ。その後、応用研修として、OJTのほかに、リアルタイムでのモニタリングに基づくフォローアップ研修を行い、スキルの向上とコミュニケーションスキルの均一化を図っていく仕組みだ。
 ちなみに、口座開設前の顧客を対象としたフリーダイヤルでの業務の研修期間は約1週間。コレクションのアウトバウンド業務では、3〜4日と短期間で終了する。
 研修は、リフレッシュルームの隣にある研修ルームで実施。この研修ルームは、受付状況に応じてオペレーションブースにもなるよう設計されている。

さらなる改善への取り組み

 今回のセンター統合で、さまざまな改善を実現した同行だが、今後もさらに進んだセンター運営を実現するために、次の5つの目標を掲げている。
 ひとつ目は、コールセンターシステムの再構築。現在使用しているものは旧行時代に導入したものであるため、より一層フレキシブルな受付体制を実現するために、再構築を検討しているのだ。
 2つ目が、オペレータのスキルレベルの均一化である。前述の基本研修と応用研修の終了後も定期的にチェックすることで、一定レベルを保っていきたいとしている。
 3つ目が、コール数の増減への対応。これまでは、キャンペーン時に予想以上のコール数が寄せられ、取りきれないことがあったが、過去のデータや経験を基にコール数を予測し、迅速に必要な受付体制を整えられるようにしていく考えだ。
 そして4つ目が、品質と効率の数値化。MIS(Management Information System)を利用し、 現在実施している平均応答時間や放棄率などの各種指標による管理を維持・向上していく構えだ。
  最後に挙げているのがPMS(Process Management System)の実践だ。例えば放棄呼が多ければすぐに受付体制を拡充するなど、リアルタイムで品質とプロセスをコントロールし、生産性向上につなげたいとしている。

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一目で全体の様子が見渡せるワンフロアのセンター


月刊『アイ・エム・プレス』2004年9月号の記事