旅の窓口と楽天トラベルのサイト統合に伴いグループ企業との相乗効果を図る

楽天トラベル(株)

宿泊予約サイトの草分け的存在の「旅の窓口」は、ビジネスホテルを中心に通常の宿泊料金より2~4割程度安く提供することで、ビジネスマンの出張需要に応えるブランドとして定着してきた。2004年9月、楽天トラベルとのサイト統合を機に、レジャー部門の強化を目指す。

会員数405万人 国内最大の宿泊予約サイト

 「旅の窓口」の前身である「ホテルの窓口」がスタートしたのは、1996年1月のこと。運営を手掛けていたのは、日立造船情報システム(株)内にあった日立造船(株)のネットワーク関連のインフラを構築していた部門であった。すでに米国ではインターネットを活用したさまざまなサービスが始まっていたことから、日立造船情報システムでは、いくつかのアイデアの中からインターネット上で宿の予約ができる事業を立ち上げることにした。当初は登録宿泊施設数は100軒ほどで、最初の1カ月の予約件数はたった13件だったという。
 その後、1999年7月には、旅の総合サイト「旅の窓口」にリニューアル。2000年2月に、日立造船情報システムの100%出資子会社マイトリップ・ネット(株)として分離・独立することになる。
 一方、2001年3月に楽天(株)が「楽天トラベル」サイトをオープン。2002年8月には楽天からトラベル事業が分社化して、楽天トラベル(株)が誕生した。
 2003年9月、楽天がマイトリップ・ネットの株式を100%取得し、傘下に入れる。2004年8月に、楽天トラベルとマイトリップ・ネットが合併し、社名を楽天トラベルとした。翌9月に、楽天トラベルと旅の窓口のサービスを統合し、新しい「楽天トラベル」がスタートを切ったのである。
 これにより、ホテルや旅館などの予約からツアー予約や航空券・レンタカー予約、観光情報も満載した、日本最大の宿泊予約サイトである「楽天トラベル」が誕生。「ホテルの窓口」からわずか8年で、会員数は405万人(2004年8月)。登録ホテル数は、国内で約1万4,000軒以上、海外で約1万1,000軒以上に達している。

部屋数を確保し利用客の信頼を築く

 「旅の窓口」が宿泊予約受付数を伸ばすきっかけとなったのは、2000年2月にマイトリップ・ネットとして日立造船情報システムから独立したときである。独立を契機に広告宣伝を展開し、知名度をアップさせたことで、2000年11月に約10万件の予約受付数だったものが、2001年11月には18万件に増え、2004年10月時点では133万件に達するほどだ。
 同社がお客様から支持を受けているのは、登録ホテル数の多さばかりではない。部屋の数を確保できたことも大きな要因となっている。同社執行役員マーケティング部部長の谷岳氏は、「たくさん登録されていると期待してサイトに訪れていただきながら、部屋がないのが一番悪いパターンなんです。ここで二度と訪れるものかと思われてしまっては、初めての方を呼び込むよりも難しくなってしまいます」と説明する。そこで同社では、サイト上で部屋の空室情報を知らせる場合、10部屋以上空いているときは「○」で表示し、10部屋を切ったときは「数字」で表すようにしている。これにより、宿泊先を探す利用客は空室情報を確認しながら安心して予約することができるというわけだ。
 このほか、サイトに掲載した特集で人気の高かった「禁煙ルーム検索」「駅から検索」「プレミアム(高級ホテル・旅館)」などといった検索機能をサイト上に常設。さまざまな顧客ニーズに応えることを目指している。
 また会員の中でも、メールマガジン「楽天トラベルニュース」の講読会員には、四季折々の特集やお得な宿情報などが載った、メルマガを週2回配信している。
 こうした既存会員へのサービスはもちろんのこと、新規会員獲得のためのキャンペーンも欠かさない。例えば、楽天のプロ野球参入が決定したことに併せ、サイト上で「プロ野球参入記念 トラベル東北エリア特集」と銘打って、県営宮城球場での公式戦初戦観戦チケットや宿泊券などが当たるプレゼント・キャンペーンを11月30日まで展開。サイトへの集客を図るとともに、プレゼントへの応募条件を楽天の会員登録済みに限定することで、確実に新規会員獲得につなげている。

マーケットの大きいレジャー関連を強化

 「楽天トラベル」を利用するには、楽天の会員登録が必要になる。登録料・年会費・利用料は無料だ。国内予約金額100円につき楽天スーパーポイント最低1ポイントが付与される。また、日本最大級のインターネットショッピングモール「楽天市場」で、同じ楽天会員として買い物ができるメリットもある。
 同サイトのトップページビューは、1日平均20万件に上り、少ないときでも14万件は下らない。そのうち、宿泊予約につながるケースは20~30%だ。
 現在、同サイトの会員の内訳で一番多いのは、30代男性で全体の25%を占めており、利用率も高い。次いで40代男性、20代男性、女性の順になっているという。利用目的はビジネスがほとんどと見ている。一方、会員のうち50歳以上の女性は全体の2%、男性は10%ほどで利用率も低くなるが、50歳以上の女性の利用単価は平均(約7,000円)を上回る9,000円以上という数字が出ている。「30代の男性は利用単価は低いのですが、出張利用が多い。そのうえ、家族旅行で利用するケースも多いので利用率が高いわけです。だからと言って、30代の男性や利用単価の高い50歳以上の女性にターゲットを絞るようなことはしません。ただ、マーケットとしてはレジャーが大きいので、そこに注力してメニューを増やしています」(谷氏)
 そこで同社では、週2回配信しているメルマガを、1通はビジネス編、もう1通はレジャー関連に特化した旅行編に分けて講読会員に送っている。ビジネス利用の会員が旅行編のメールマガジンを読むことで、レジャー利用の訴求効果を狙っているという。
 旅行業界の市場規模は約6兆円と見られており、そのうち約9,000億円がeビジネス市場になると言われている。同社の2003年度取扱高は約683億円で、このうちの約7%を占める。前年度比で約40%と、大きく躍進している。
 「まだまだ宿泊予約サイトの利便性に気付いていない方も多いので、そういう方々を取り込む仕組みを作っていきたい」(谷氏)。「旅の窓口」と「楽天トラベル」のサービス統合に伴い、今後は検索サイトのインフォシークなど楽天グループ企業との相乗効果を追求していく意向だ。
 ビジネスユースに定評のあった旅の窓口に、レジャーに定評のあった楽天トラベルの機能を加えることで、ビジネスとレジャーの双方で充実したサービスを提供するサイトになっていくことだろう。

楽天

「楽天トラベル」ホームページ。四季折々の特集などや検索機能が豊富だ


月刊『アイ・エム・プレス』2004年12月号の記事