外国人の住環境改善を目指し家賃保証サービスを提供

(株)グローバルトラストネットワークス

住宅賃貸の世界では、外国人は高齢者、フリーターとともに三大弱者と言われており、希望する住居を借りられずに不便を強いられているケースも少なくない。このような状況の改善を目指して、(株)グローバルトラストネットワークスが展開している事業が、外国人専門の家賃保証サービス「TRUST NET21」だ。同社では家主が安心して外国人を入居させるための完全サポート・サービスの提供を通じ、外国人の住居に関する不便の解消を図っている。

家主が安心して外国人を入居させるための完全サポート・サービスを提供

 日本社会では近年、グローバル化が進展する中で、外国人居住者が増加傾向にある。また、出生率の低下により、少子化、人口減少が進むことが避けられない状況の中、外国人労働者の積極的受け入れに関する論議も高まっている。しかし、外国人にとって日本は住みやすい国とは言い難い。事実上、国際共通語となっている英語が十分に通じない場所が多く、また、日本独特の慣習も多いからだ。しかし、それ以上に外国人の円滑な生活を妨げているのが、住居の問題である。
 住宅賃貸の世界では、外国人は高齢者、フリーターとともに三大弱者と言われている。言語の問題で十分なコミュニケーションが図れないことや、生活慣習の違いからトラブルが生じる可能性があることなどを理由に、外国人には物件を貸さないという家主が多いのだ。また、敷金・礼金や保証人が必要であることなど、住宅賃貸における日本独特の商慣習も、外国人が住居を借りる際の大きな障害となっている。このような要因から、一部のエグゼクティブ層を除けば、バスもトイレも共同のゲストハウスでの居住を余儀なくされるなど、住居に関して不便を強いられる外国人は多い。
 こうした状況の改善を目指して、(株)グローバルトラストネットワークスが展開している事業が、外国人専門の家賃保証サービス「TRUST NET21」だ。
 「TRUST NET21」は、外国人に住居を賃貸する家主に対して滞納賃料48カ月までを保証し、家主の賃貸収入の確保に関する不安を解消することが事業の根幹となっているが、単に金銭面での保証を行うだけでは、家主の外国人入居に関する不安は払拭されない。そこで、英語、韓国語、中国語など多言語に対応するスタッフが、入居契約時の審査の代行や、入居時のさまざまなレクチャー、さらに入居後のトラブル相談サービスを実施するなど、家主が安心して外国人を入居させるための完全サポート・サービスを行っている。
 サービスを提供するグローバルトラストネットワークスは、IT関連ビジネスやファッションビジネス、日本企業の海外進出コンサルティングなどさまざまな事業を手掛けてきた後藤裕幸氏により、2006年7月に設立された企業である。同氏が経営していた海外進出コンサルティング会社の韓国人社員が、自国ではエリートと言われる存在であったにもかかわらず、なかなか住居を借りることができなかったことなどから、外国人が日本で住居を借りることの大変さを知り、それを解消することが、外国人を助けるとともにビジネスとしても成り立つと考え、外国人を対象とする住宅賃貸の円滑化を促進する事業をスタートした。現在では「TRUST NET21」のほか、外国人専門の不動産賃貸仲介事業、外国人社員専門の社宅管理事業などを展開。日本における外国人の住環境改善のための総合的サービスを提供している。

現在約500人の外国人がサービスを利用

 「TRUST NET21」においては、利用料金は入居者が負担するかたちで、初回保証委託手数料が月額賃料の50%、年間保証委託料が1万円で、保証金は原則不要である。2006年9月の事業開始以来、サービスの利用者は順調に拡大しており、現時点での利用者数は約500人。国籍の内訳としては韓国が最も多く約4割、次いで中国・台湾が約3割を占めており、そのほか、東南アジア、欧米などとなっている。職業については日本企業に勤務する会社員が中心であるが、学生寮などで生活していた留学生が一人暮らしを希望し、民間のアパートに転居するというケースも少なくないそうだ。
 サービスの提供に当たっては、日本の不動産賃貸に関する徹底した説明を行い、パスポート、ビザ、外国人登録証などの必要書類を確認するとともに、十分な審査を行っている。審査においては、単に経済的に家賃を継続して払えるかではなく、むしろ日本の社会に適応できるかという点を重視しているとのこと。その結果、家賃保証を依頼された場合の承認率は、80~90%。さらに契約者の家賃の滞納率は0.5%前後で、想定していた率を大幅に下回っており、深刻なトラブルが発生するケースは少ない。ちなみに、並行して行っている物件仲介では、問い合わせ者が最終的に成約・入居に至る比率は20%前後に達している。対象となる物件のエリアは、今のところ首都圏が中心。今後、不動産取引の慣習の違いなどの問題が解決されれば、関西圏や名古屋などにも展開していく意向だ。
 前述のように日本国内の外国人居住者は年々増加しており、新たに住居を借りようとする外国人も確実に増加傾向にあるが、不動産賃貸という大きなマーケットからすると、そのマーケット・サイズは極めて小さい。従って、ニーズがある人にいかに的確にサービスの内容を伝えるかが、事業展開における大きなテーマとなった。
 同社がまず目を付けたのが、外国人が集まるコミュニティだ。例えば中国、韓国などからの留学生が構成する留学生会や、留学生間の交流・親睦を目的とするコミュニティ・サイトなどで告知を実施。そのほか、外国人向けの新聞、雑誌、フリーペーパーなどへの広告出稿や外国人のローカル採用を行っている企業への営業活動、中国語、韓国語の検索エンジンを対象とするSEO対策なども実施し、サービスの認知向上を図った。また、2008年5月からはサービスの既利用者からの口コミを促進するために、被紹介者がサービスを利用した際に紹介者に5,000円の商品券を進呈する紹介キャンペーンも実施している。スタートから間もないにもかかわらず、最近では新規利用者の10~15%が紹介によるものとなっており、販促コスト削減につながっていることから、今後、さらなる拡大のためにキャンペーンの認知促進を図っていく方針である。

利用者のニーズに合わせたサービス提供を志向

 同社がサービスを展開する上で最も留意しているのは、利用者のニーズに合わせたサービスを提供することだ。外国人向けのサービスでは、日本市場のルールに外国人を当てはめるというケースも多いが、特に住宅賃貸においては日本市場のルールは独特であり、外国人にはわかりづらい部分も多い。また、居住期間が短いなど、外国人居住者特有の事情も存在する。さらに外国人の感覚からすると家賃の相場自体が高いため、複数人で部屋をシェアしたいというニーズも多い。そこで同社では、①礼金をなくし、敷金を下げる代わりに賃料を上げるなどして、外国人が理解しやすい賃貸形態を設定する、②基本的な家具・家電付きとする、③2人での入居を認めるなど、外国人が入居しやすい物件とすることを家主に提案している。これにより入居率が向上し、また、物件当たりの賃料もアップできるなど、家主にとってもメリットがあることから、家主側の理解も徐々に進んでいるようだ。
 同社では不動産仲介・斡旋大手のアパマングループと提携、2008年7月から同グループの取り扱い物件に対するサービス提供を本格化する。この取り組みなどを通じて、外国人の住宅賃貸市場におけるシェアを拡大し、ニッチマーケットにおけるリーディング・カンパニーとしての地位を確立していく意向である。

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5カ国語対応も可能なスタッフたち。肩身の狭い思いを強いられている在日外国人の住環境を温かくサポートしている


月刊『アイ・エム・プレス』2008年8月号の記事