Webに顧客DBをフル活用 「NET総合照会」がスタート

第一生命保険相互会社

生保大手の第一生命保険相互会社は、「生涯設計の完成」を掲げた「100周年ビジョン」の下、生保業界初のポイントサービスを優良顧客向けに導入。最近では、提携先商品を含む商品ラインアップの充実や、Web上で保険の契約内容を閲覧できる情報サービス、「NET総合照会」をスタートさせ、これを顧客の維持につなげている。

情報サービスで解約を防ぐ

 契約者1,000万名弱を抱える業界2位の大手保険会社・第一生命保険相互会社(支社108、支部等1,893)は、今年9月に創立100周年を迎える。1997年に就任した代表取締役社長・森田富治郎氏は同年、「健全性の維持・向上」「経営品質の向上」「生涯設計の完成」を中核とする「第一生命100周年ビジョン」を策定。長期間利用してもらうことで初めて収益が生まれる保険商品の特性を見据え、顧客と生涯付き合える商品設計、およびサービスの提供を明確に事業戦略として打ち出した。徹底した顧客志向に対する評価は高く、2001年には(財)社会経済生産性本部が認定する「日本経営品質賞」を、金融・保険業界では初めて受賞している。
 それでは、「生涯設計の完成」を形作る具体的なサービス内容を紹介しよう。

<NET総合照会>
 同社は2001年10月から、正確で、豊富な情報に基づいた顧客対応を目指し、顧客データベースを稼動させた。これにより、支部・支社・本社・コールセンターなど、さまざまな顧客接点において、取引内容や顧客からの申し出内容、さらには顧客宛て通知の発信履歴などを総合的に把握することが可能になった。
 また、顧客データベースを活かしたWeb上のサービス「NET総合照会」を同年11月からスタート。「第一生命カード」「第一生命サービスパスポート」を持つ顧客(約430万人)を対象に、提携先商品を含む契約内容の確認や資産管理を行うサービスを提供している。契約者に分かりやすいよう、「備える」「貯める」「殖やす」などの項目を設け、保険内容を目的別に確認できるようにした。
 同社は2000年8月に安田火災と、同9月にアメリカンファミリー生命保険会社(AFLAC)と、相次いで業務提携に合意。第一生命の営業職員・代理店を通した提携先商品の販売をスタートさせた。NET総合照会にもこうした動きを反映させ、自社商品にとどまらない情報サービスを提供している。提携先商品をもカバーするこうしたサービスは業界初であり、ビジネスモデル特許を申請中だ。
 営業開発部部長・生駒尚樹氏によると、現在の経営課題は「解約をいかに防ぐか」にある。同社調査によると、顧客が解約に至る最大の理由は「契約内容がよく分からないこと」だと言う。2000年度に行った調査では、契約内容を理解している顧客ほど、満足度が高いとの結果が出た(図表1)。こうしたことからも、契約者が保険内容を正しく認知・理解できるような仕組み作りは急務。中でも時間と場所を選ばず気軽にアクセスできるインターネットを最大限に活かした情報サービスの提供は、顧客満足度の上昇と解約防止に大きく貢献するものと見られている。

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 インターネットを用いたサービスとしては、このほか、仮想店舗「ライフデザインサイバーショップ(保険設計書作成サービス)」を開設している。これは誰もが無料で利用できる保険設計相談サービスで、プランナーにeメールで回答してもらえるというもの。2001年5月からは「FPコンサルティング」を増設、フィナンシャルプランナー(FP)によるコンサルティング業務も開始した。同社は早い時期からFPの増員に尽力。その陣容は現在、1,000名を数えるまでに成長した。

<ドリームキングダム>
 また同社では、2000年4月に生保業界では初めて、優良顧客向けのポイントサービス、「ドリームキングダム」をスタートした。
 ドリームポイントは、契約加入後1年ごとに付与される「つづけるポイント」、加入保険金額100万円ごとに加算される「まとめるポイント」、そして知人・友人の紹介や投資信託の残高などに応じた「ひろがるポイント」から構成され、「長く」「多く」契約している優良顧客が、ポイント数に応じてさまざまなサービスを受けられるようにしたもの(図表2)。合計500ポイントを超えた顧客にのみ「ドリームキングダム」利用権が与えられ、ガイドブックと、ポイントの還元方法を記した「キングダムパスポート」が送付される。ポイントは半年ごとに更新されるため、契約内容が変わらなければ半年ごとに前回と同数のポイントが与えられる。

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 サービス内容は、「得する」、「もらえる」、「役立つ」の3分野から構成される。 常に目新しさを演出できるように、ポイントが加算される半年ごとにサービス内容もリニューアルしている。また、当初は自社商品のみのポイント加算だったが、他社との業務提携の動きを受けて、提携先商品にもポイントを加算するシステムに変更された。

プッシュ型営業からの転換期

 現在の営業職員数は4万5,000名。顧客250名に対して1名の割合だ。契約者を年に何度も訪問するのは事実上不可能である上、住所変更等の手続きは年数百万件に及ぶ。また、「残念ながら、お客様の3分の1には担当の営業職員がいない状況」(生駒氏)という。そこで、同社では、アフターサービス専属の職員を900名登用したほか、営業職員を支援する「コミュニケーションデスク」を一般向けコールセンターとは別に開設した。同デスクは1998年に東京でスタート。その後、大阪にも開設され、2000年度末現在、全300席となっている(図表3)。

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 アウトバウンドにより担当者のいない契約者を重点的にケアするほか、担当者がいる場合にも年に1回を目標にコンタクト。そのコール数は年700万件に達する。同部課長・榎並重人氏によると、事前にコミュニケーションデスクで見込客との関係を作っておくと、取引に至る確率が上昇する。これまでのところ同デスクに対する評価は高いという。
 このほか、結婚、出産などの人生の転機を何らかの方法で会社側に連絡してくれた顧客には、営業職員が顧客宅を訪問してプレゼントを贈るなどの工夫を凝らす。ライフサイクルの節目を自ら認識してもらうことで、契約内容や保険に対する関心と理解を深めてもらう試みだ。
 「生保の1世帯当たり掛け金は月平均5万円程度。損保もあわせると保険料は月額7万~8万円になると見られる」(生駒氏)。このため、同社では「保険」という総合的な視点を重視。契約内容ごとに管理していたデータを顧客ごとに統合した次のステップとして、世帯単位でのコンサルティングを目指す。関係を長く維持すればするほど顧客満足度が上昇する、真のリレーションシップ構築を推進する。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年6月号の記事