電話での対応の効率化とCSの向上の実現を図る

キヤノン販売(株)

CSの向上を目指すレスポンスセンター

 1968年の設立。キヤノン全製品および輸入商品の販売を手掛けるキヤノン販売(株)。売上高は2000年現在で連結子会社を合わせて7,949億1,700万円。2001年度の予想売上高は8,400億円に上る。単独では、やはり2000年現在で7,222億7,700万円。2001年度の予想売上高は7,600億円だ。
 キヤノン販売において、顧客満足(CS)の向上を目指す目的で機能しているのが、レスポンスセンターである。同センターでは「レスポンスセンター・システム(RC2000)」を導入しており、オペレータは、このシステム上のQ&Aデータベースを活用することで、顧客からの問い合わせに対して、迅速かつ的確な対応をすることができる。
 また1994年には「キヤノンFAXサービス」とNIFTY SERVEに「キヤノン・ステーション」を開設したり、1996年に同社のホームページ上にFAQや「簡単操作ガイド」の掲載を開始するなど、顧客との多様なインタラクティブ・コミュニケーションを実現している。
 さらに1998年7月には、レスポンスセンターに「キヤノンお客様サポートネット〈ナビダイヤル〉」を導入。全国にほぼ均一のサービスを提供することが可能となった。
 2001年2月16日には、昨今のインターネット・ユーザーの増加にともないウェブ・コールセンターを立ち上げ、年中無休で、顧客の疑問に対して自己解決できる環境の提供をインターネット上で実現している。また同社には、顧客からの電話による相談受付窓口として、グループ会社である日本レスポンスサービス(株)があり、総件数の95%に対応している。

教育スパンの長さが課題

 レスポンスセンターに従事する要員は全体でおよそ240名。レスポンスセンターに30〜40人、日本レスポンスサービスに約200人という内訳だ。回線は約200回線で対応。
 レスポンスセンターの業務は、簡単な顧客からの問い合わせに答えることだけではなく、キヤノン製品を購入予定、あるいは購入済の顧客からの、製品についての込み入った質問に答えることをはじめ、修理の相談等々、非常に広範囲に渡るものであるという。またキヤノン製品のジャンルや数が極端に多いことも手伝って、オペレータにはかなり、オールマイティな知識が要求されているのが現状だ。これにより、オペレータの教育スパンが長くなってしまっていることが、同社の現在の課題。同センターでは、新人の研修にはおよそ2カ月を費やしており、また新製品が発表されるごとに、随時研修が行われている。

営業のサポート機関を設置

 同センターでは、営業への支援活動として、前出のRC2000を介した見込客の紹介や、同センターからキヤノン製品カタログを送付した顧客に関する情報等をアナウンスしている。しかし、こうした活動がどの程度、キヤノン製品の販売実績に寄与しているかは、現段階ではなかなか見えておらず、それをいかに見通しの良いものにするかが、今後の課題であるという。
 また同センター内には、営業職員のサポート機関である、ネットワーク・プリンティング・コールセンターが設けられている。これはネットワーク・システムに関する、営業に向けたヘルプデスクであり、常時約10名が稼動している。
 商談などの際に顧客から受ける、複雑なネットワーク・システムに関しての質問や相談(どういった機器、ソフト、ネットワークが必要であるか等)に、営業職員が明解に応えることは、難しい場合も多い。このような時に営業職員に的確なアドバイスを与えることで、CSの向上を図るのが同センターの役割だ。

毎月情報をフィードバック

 レスポンス・センターで行われた顧客とのコミュニケーションの中で得られた意見・要望は前出のRC2000に蓄積されるが、それらの情報はキヤノン(株)に導入されている、品質管理・分析ツール「CATS」に向けて、基本的に毎日送信されている。キヤノン(株)では、それらの情報を、各商品の開発・製造・品質保証や営業・技術などの関連部門にフィードバックし、よりユーザー・フレンドリーな商品の開発とサービスの提供に役立てている(図表4)。

08-2 図表4

 このような情報をもとに改善された製品の具体例は、残念ながら公表されていないが、製品に付属しているマニュアルの使い勝手の改善や、現在、ほとんどの製品に付属している、A3サイズの「簡単スタート・ガイド」などは、同センターに寄せられた声から実現したものだ。
 また前述のような、同社が行っているマルチメディアによるコミュニケーションも、顧客の声を反映させたものであるし、現在行われている修理の多彩な形態(訪問、持ち込み、宅配等)も、もともとは法人向けのサービスであったものを、顧客の要望を受け入れる形で、コンシューマー向けにも実施を開始した。また東京と秋田の2カ所にある、前出の日本レスポンスサービスのうち、秋田本社は、顧客の「対応時間を延長してほしい」という要望から設立されたものである(東京本社の対応時間が、平日9:00〜12:00/13:00〜17:00《土日・祝日は休み》であるのに対して、秋田本社は、平日9:00〜12:00/13:00〜18:00/19:00〜21:00、土日・祝日《年始1月1日〜3日は休み》10:00〜12:00/13:00〜17:00)。
 レスポンスセンターでは、対応の効果・効率を測る指標を、現在特には定めていない。というのは、同社の基本的な考え方が、電話を頂いた顧客の問題点を、その時点で解決することに最重点を置くものだからである。この考えにより、電話放棄率については、常時15%以下を目標としているものの、それ以外は特別な目標は設定していない。電話での顧客対応の充実と、インターネット等での窓口の拡張に注力してきたのがこれまでの主な方向と言える。
 しかし、同センターでは、電話での対応の効率化とCSの向上という、ともすれば相反するテーマを追求していく必要性を十分に感じている。そして、それらを実現するための、何らかのツールや、方法論の必要性も強く認識しており、現在それらに関する調査を行っている段階だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年8月号の記事