通信ネットワーク最前線(第24回) 

(株)オークローンマーケティング

独自の“パワーブランディング”のコンセプトに基づき、テレビショッピングを展開する(株)オークローンマーケティング。そのインバウンド業務と今後の展望について話を聞いた。

“パワーブランディング”に基づいたマーケティング戦略を推進

 1993年に設立された(株)オークローンマーケティングは、日本のダイレクトマーケティング業界ではじめて“パワーブランディング”の概念に基づいたマーケティングを実践。自らテレビショッピングの番組企画、商品供給、受注から発送までのフルフィルメントを手がけるほか、会員向けカタログ通販、および他の通販会社や問屋、量販店への並行輸入品の卸を行い、現在急速に売り上げを伸ばしている。
 “パワーブランディング”とは、現在ではほとんどの家庭に普及したテレビを通じて繰り返し訴求することで、商品そのもののブランド・イメージを高めると同時に受注を促進し、カタログによる通信販売や店舗などほかの流通チャネルでの購買行動を促すこと。つまり、さまざまな販売チャネルをミックスすることで相乗効果をもたらし、商品の売り上げを伸ばしていくことを意味している。同社のヒット商品、スーパーシミ抜きディディセブン、アブシェイパーをご存じの方は多いはずだ。
 輸入専門商社として設立された同社では、テレビショッピング会社への卸を行っていたが、設立の翌年、カナダの通信販売会社、インターウッドマーケティング社と日本総代理店契約を結び、在日外国人向けの生活雑貨や健康器具、カーアクセサリーなどを扱うテレビショッピングをスタート。当初はその受注業務をテレマーケティング・エージェンシーに委託していたが、自社内で受付業務を行う必然性を感じ、1994年、インハウス化に踏み切った。これが、テレビショッピング向け商品の選定から受注、商品の発送までを自社で手がけるようになったきっかけである。
 同社では、コールセンターを開設するに当たり、イギリスからコールセンター・マネジメントに長けた優秀な人材をヘッドハンティングした。また、1カ月に1度、ニューヨークからコンサルタントを招いて研修を行い、テレマーケティングの先進国であるアメリカやイギリスのノウハウを取り入れ、質の高いコールセンターの構築に取り組んでいる。
 続いて同社では、1997年10月より、同社のテレビショッピングで商品を購入したお客様を対象に、「オークローンクラブ」の名称で会員制のカタログ通販を開始。テレビショッピングの受注時にオペレーターが「オークローンクラブ」の紹介をするという方法で会員を募っている。一度同社のテレビショッピングを利用したお客様であれば、年会費3,000円で誰でも会員になれ、会員特別価格で商品を購入することができる。現在、会員数は約4万人を上回っている。

年4回発行予定のカタログ「オークローンクラブ WOWカタログ」。テレビショッピングで紹介している商品をゆっくりじっくりカタログで吟味できる

年4回発行予定のカタログ「オークローンクラブ WOWカタログ」。テレビショッピングで紹介している商品をゆっくりじっくりカタログで吟味できる

オペレーター教育を強化

 同社では地上波、CATVなどの放送局各局と契約を結び、全国展開によるテレビショッピングに取り組んでいる。スポットと番組を合わせた同社のテレビショッピングの放映回数は全国で最も多いと言われており、365日・24時間、日本全国のどこかで同社のテレビショッピングが放映されている。
 これらテレビショッピングの受注業務は、1998年2月に新たに設立したテレマーケティングセンターと本社の2カ所で担っており、フリーダイヤルで受け付けている。受付時間帯は、年中無休・24時間。応対に当たるのは、徹底した教育を受けた150名のオペレーター。テレマーケティングの大きな特徴は、非対面により声だけでコミュニケーションが行われること。同社ではオペレーターの能力を重要視し、オペレーターの育成に熱心に取り組んでいる。同社の理想とするオペレーターは、柔軟性と共感性を兼ね備えていること。そして、欧米のオペレーターがそうであるように、単なるご用聞きにとどまらず、セールスプロモーターとしての役割を果たせることである。そのための社内研修は頻繁に行われており、また、日々のOJTによってオペレーションスキルを培っている。
 同社では、テレビショッピングの放映スケジュールや時間帯に合わせてシフトを組み、常時30~70名のオペレーターを配置している。オペレーターの男女比率は女性が7~8割、男性が2~3割だという。

研修は教育を徹底するために、少人数で行われる(左)テレマーケティングセンターでのオペレーション風景(右) 研修は教育を徹底するために、少人数で行われる(左)テレマーケティングセンターでのオペレーション風景(右)

研修は教育を徹底するために、少人数で行われる(左) テレマーケティングセンターでのオペレーション風景(右)

ナンバー・ディスプレイ、フリーダイヤルの付加サービスを効果的に活用

 同社では、着信課金サービスの導入に当たり、NTT、新電電各社のサービスを比較・検討した結果、一般に広く浸透しているという理由からNTTのフリーダイヤルに決定した。
 同社が利用しているフリーダイヤル番号は66種類。ひとつは会員制カタログ通販「オークローンクラブ」の会員専用番号。残りの65種類は、テレビショッピングの効果測定を行うために各放送局ごと、さらに同じ放送局でもスポットか番組かによって設定している番号である。
 同社では、これほど多くのフリーダイヤル番号による受け付けを、コールセンターシステムのCTI化を図り、ナンバー・ディスプレイと、フリーダイヤルの付加サービスを連動させることで、効果的かつ効率的に実現すると同時に、きめ細かい効果測定まで行っている。
 同社が利用しているフリーダイヤルの付加サービスは、異なるフリーダイヤル番号間での「広域代表サービス」「フリーダイヤル番号通知サービス」「カスタマーコントロール」の3つ。
 異なるフリーダイヤル番号間での「広域代表サービス」とは、全回線お話中にお客様からかかってきたコールを、あらかじめ指定した異なるフリーダイヤル番号の受付先へつなぐサービス。「フリーダイヤル番号通知サービス」とは、お客様がダイヤルしたフリーダイヤル番号を着信側に表示するサービスで、INSネットでのみ利用可能。「カスタマーコントロール」とはパソコン端末、またはプッシュホン端末を用いて導入企業側で受付先・受付時間の設定や変更を行うことができるサービス。パソコン端末から、コール数などの利用状況を把握することもできる。
 具体的な利用方法を紹介しよう。まず、同社が導入しているフリーダイヤルの回線数は、各放送局ごと、かつ、スポットと番組の別に設定された65種類のフリーダイヤル番号がそれぞれ1回線、計65回線と、テレマーケティングセンターが1番号、115回線。この65種類のフリーダイヤル番号を、第1受付、テレマーケティングセンターのフリーダイヤル番号を第2受付とする。そして、フリーダイヤルの付加サービスのひとつである「カスタマーコントロール」の回線数変更機能で第1受付での受付回線数を0とし、異なるフリーダイヤル番号間での「広域代表サービス」ですべてのコールを第2受付で受け付けるよう設定しておけば、お客様からのコールは、第1受付を経由し、第2受付であるテレマーケティングセンターに着信するというわけだ(図表1)。こうすることで、トータルな回線数は異なるものの、65種類のフリーダイヤル番号を115回線ずつ用意した場合と同様の機能を最低限のランニングコストで実現することが可能となった。
 また、着信と同時に、発信電話番号情報をもとに顧客データベースを自動検索、ヒットした顧客情報を瞬時にオペレーター端末にポップアップさせる仕組みになっており、オペレーターはオペレーションをしながら、注文内容などを入力するだけでいい。一方で、発信電話番号情報とあわせてお客様がダイヤルしたフリーダイヤル番号も表示されるため、お客様ひとりひとりにわざわざ「どこのテレビショッピングをご覧になりましたか?」などと尋ねる必要がなくなった。
 このCTI化が同社にもたらしたメリットは2つ。ひとつ目は、お客様に尋ねる項目を省けるため、その代わりに「オークローンクラブ」の紹介をするなどといったクロスセリングができること。2つ目は、方言や1と8などの数字の聞き間違いを防止できること。これにより、業務の効率が確実にアップしたという。
 同社に寄せられる1日のコール数は、テレマーケティングセンターだけで平均1,000~1,200件。多い時は2,000件にもおよぶという。そのうち、約8割がテレビショッピングの受注で、残りの2割が問い合わせとなっている。

【図表1】フリーダイヤルの付加サービスを活用した受付フロー
【図表2】CTIシステム構成(全体)
【図表3】テレマーケティングセンター コンピュータシステム

アウトソーシング・サービスへの取り組み

 同社では、業務の効率化を図るために構築したCTIシステムをさらに有効活用するために、クライアントのオペレーションを代行するアウトソーシング・サービス事業への取り組みを積極的に行っていく意向だ。しかし、この2月に開設したばかりのテレマーケティングセンターは、すでにキャパシティが限界に達しているため、コールセンターの増設、もしくは、広いスペースへの移転を検討中とのこと。
 また、テレビショッピングの放映の合間に、アウトバウンド・コールを行い、テレビショッピングがはじまるとインバウンド・コールに切り替えるという、コール・ブレンディングを実践していくという。現在のシステムでは、オペレーターの稼働状況を監視するところまでにとどまっているが、今年度内には各放送局の放送スケジュールに合わせてコンピュータが自動的に発信・解除をコントロールできるよう、システムの改良に取り組んでいる。コール・ブレンディングを実現させるために必要なことはもうひとつある。それは、決められたオペレーション業務だけでなく、すべてのオペレーション業務をこなせるオペレーターの育成だ。同社では、現在3~4名のトレーナーを数名増員し、これまで以上に社内研修を強化していくという。
 設立当時から時代を先取りし、“パワーブランディング”の概念を日本においていち早く取り入れ、急成長を成し遂げた同社。今後も時代を読み、常に一歩先を行く会社であり続けたいと同社では考えている。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年9月号の記事