多くのファンを惹きつける摩訶不思議な仮想都市Curio City(キュリオシティ)

三井物産(株)

CD-ROM の季刊誌を出版

 「Curio City」は 1995 年秋、三井物産(株)の新規事業としてスタートした CD-ROM の定期刊行物。季刊で発行し、今年 4 月 30 日発売号で「VOL.7」を数える。

CURIO CITY雑誌 CURIO CITY雑誌

ハードカバーに収められ、“雑誌”としてコンビニや書店に並べられる「Curio City」

 A4 判の冊子には「Curio City」のガイド、各企業の広告などを掲載、表紙裏に CD-ROM をセットして、定価1,500円で全国約7,000店のセブン-イレブンと、書店、パソコンショップで販売。発行部数は毎号 12 万部。CD-ROM は Windows、Macintosh のいずれにも対応する。
 「Curio City」には毎号、アンケートハガキが付いており、氏名、住所、年齢のほか、過去に購入した号や、利用の感想などを聞いているが、これによると何号か続けて購入している読者が多く、バックナンバーをすべて持っている人も珍しくない。満足度の 4 段階評価では大半が「大満足」または「満足」の回答。固定的なファン層が「Curio City」を支えていることがわかる。
 ユーザーの男女比は約 7:3。年齢は 30 ~ 34 歳が 23%で最も多く、20 ~ 24 歳と 25 ~ 29 歳がともに 19%、35 ~ 39 歳が 13%と続いている。地域 では東京が 21%、神奈川が 11%、埼玉が 7%、千葉が 6%と首都圏が 4位までを占め、次いで大阪が 6%、兵庫が 5%、愛知が 4%、北海道が 3%の順に多い。パソコン歴では「2 年未満」が 45%、「2 ~ 4 年」が 21%、「5 ~ 9 年」が 17%、「10 ~ 14 年」が 10%、「15 年以上」が5%と、パソコン歴が長くなるほどその割合が低い。
 ストーリーはユーザーがキュリオシティに引っ越すところからはじまる。新居となるアパートの入口にはネームプレートがかかり、ニュース番組は現実の日付を告げている。街の中心にあるコロシアムを取り囲むように店や民家が並び、気の向くままに散歩をしているうちに、ユーザーはさまざまな情報、思わぬアクシデントに出会うことになるのだ。

“広告”も愉快に楽しく

 一級建築士の資格を持つスタッフが設計した建築物、“キュロちゃん”や“Q 星人”などの個性的なキャラクター、ユーザーを巻きこむ怪しいストーリー展開と、見る人を飽きさせない魅力を詰めこんだ「Curio City」を、同社では「“タイトル”と呼ばれる CD-ROM の名作にもひけをとらない“作品”」(情報通信事業部 マルチメディアチーム 藤原弦義氏)と胸を張る。
 “タイトル”が単行本とすれば「Curio City」は雑誌。雑誌には当然、広告がある。毎号約 15 社が、店舗、ショールーム、看板を設けるなどの方法で情報発信を行っているが、これを単なる広告に終わらせず、「広告的要素を含めつつ面白く仕上げる」(藤原氏)のが同社の腕の見せ所だ。
 その一例として、「Curio City」の通貨である“キュリオーネ”を使って、ユーザーが商品やサービスの疑似体験ができる仕掛け作りを挙げることができる。たとえば保険に入っておくとシティ内で事故に合った時に保険金がおりたり、銀行で 1 日 5%の利息がつくキュリオーネ預金を利用できるといった具合だ。
 「Curio City」には「VOL.3」からインターネット接続機能をプラス。現在、ほとんどの参加企業が「Curio City」と自社のホームページとのリンクを張っている。「CD-ROM でしか表現できないことと、インターネットでしかできないことを組み合わせて効果的に情報の受発信を行うことが可能になったと好評を得ている」(藤原氏)という。
 号を重ねるほどに確実にファンを獲得してきた「Curio City」が、どんな役割を担うメディアとして成長、定着していくのか。今後がますます楽しみである。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事