独自の電子マネー「nanaco」の活用でビジネスを推進

(株)セブン&アイHLDGS.

(株)セブン&アイHLDGS.では、独自の電子マネーnanacoを運用。多様化する利用客の要望にこたえ、さまざまな場所での使用を可能としてきた。2009年6月末現在の発行数は856万件、そのうち“おサイフケータイ”を利用する「nanacoモバイル」は127万件、月間利用回数は3,300万件に達している。

日本最大・世界屈指の巨大総合流通グループ誕生

 コンビニエンスストア(以下、コンビニ)のセブン‐イレブンやGMSのイトーヨーカドー、ファミリーレストランのデニーズなど、生活者になじみ深いブランドを展開している事業会社(グループ)各社の、企画・管理・運営に携っている純粋持株会社が(株)セブン&アイHLDGS.である。
 同社は、急速に変化している経済・社会情勢の中、グループ企業価値の最大化とコーポレートガバナンスの強化を目指して、(株)イトーヨーカ堂、(株)セブン‐イレブン・ジャパン、(株)デニーズジャパン、3社の株式移転により2005年9月に設立された。その後2006年には、(株)西武百貨店や(株)そごうを傘下に収める(株)ミレニアムリテイリングを完全子会社化し、現在ではコンビニ・GMS・百貨店という既存業態の枠を超えた、日本最大、世界屈指の巨大総合流通グループとなっている。
 ちなみに社名の「セブン」は、① コンビニ、② 総合スーパー、③ 百貨店、④ 食品スーパー、⑤ フードサービス、⑥ 金融サービス、⑦ IT/サービス、の7つの主要な事業領域を、「アイ」は、innovation(革新)の「i(アイ)」と「愛」を表している。
 同社では、合理化の名の下にモノの作り手や売り手の都合を優先させたこれまでのスタイルを捨て、新たなビジネスモデルとしてモノの作り手・売り手がお客さまのご都合におこたえする「新・総合生活産業」を掲げ、付加価値を生み出す流通サービスグループを目指している。

流通企業初の電子マネー「nanaco(ナナコ)」の成長

 2007年4月、同社は流通企業としては初となる電子マネー「nanaco(ナナコ)」のサービスを開始した。当初、利用可能な店舗は、東京都のセブン‐イレブン約1,500店のみであったが、そうした中でも順調に発行件数を伸ばし続け、開始から29日目には100万件に至り、2009年6月末現在では約856万件に達している。そのうち“おサイフケータイ”を使用するnanacoモバイルは約127万件。同社ではnanacoの推進を図るため、利用できる店舗の拡充を行ってきたが、同時点における利用可能店舗数は2万7,271店と、2年余りで20倍近くに増加し、月間利用回数は約3,300万件を誇る。取扱店舗の内訳は同社グループが運営するセブン‐イレブンが1万2,349店、デニーズ(ファミール)が559店、イトーヨーカドーの食品売り場が173店となっており、そのほか、(株)ジェーシービー(JCB)との提携によってもたらされたグループ以外のnanaco加盟店が1万4,190店を数えている。
 nanacoはお客さまに多様な決済手段とお得感のあるサービスを提供したいとの思いから、同社のシステム部門・企画部門・販売促進部門と、グループ会社の(株)アイワイ・カード・サービスの連携により開発された。すでに先発の電子マネーサービスは存在したが、例えばポイントキャンペーンなどの企画を独自に打つことができないなど、お客さまサービスの観点から見ると十分ではないとの考えから、独自ブランドにこだわったとのことである。また、必要以上に個人情報を集めない、などこれまでに培ってきたグループのノウハウが十分に生かされているのもnanacoの大きな特徴である。
 nanacoには、カード型のnanacoカードとおサイフケータイを用いるnanacoモバイルの2種類があり、カード型は発行手数料が300円(税込み)掛かる点を除けば、機能やサービス内容はほぼ共通のものとなっている。nanacoを使用した決済100円につき1ポイントを付与するのが基本的なサービスとなるが、一定期間内に対象商品を購入すると10~200のボーナスポイントを付与したり、グループ会社である(株)セブン銀行での各種取引では最大500ポイントを付与するなど、知らないうちにポイントがたまる仕組みが好評を博している。また、JCBをはじめとした提携先各社とのポイント交換も行っている。ポイントの有効期限は、当年4月から翌年3月までに付与されたものは、翌々年の3月末までとなるが、随時店頭やモバイル画面上で1ポイント=1円で電子マネーに交換できるので、失効という事態はあまり生じていないようである。

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レジのリーダーにかざすだけ小銭いらずの優れもの/nanakoモバイルのアプリダウンロード画面(左下)

nanaco導入がビジネスを底上げ

 同社がnanacoを導入して以後、利用客の属性と購入単価に変化が見られるようになった。グループ内で最も利用回数が多いセブン‐イレブンでは、全体での利用客属性は男女比が7:3であったが、nanaco会員では6:4になっている。また、1回当たりの購入金額は現金の利用に比べ1割ほど上回る。同社ではこれを、さまざまなポイントカード・サービスに慣れている女性が、店頭でボーナスポイントの付いた商品などを目にすると、キャッシュレスの気軽さも手伝って、ついもう1品購入しがちであるからではないかと推定。顧客満足度と企業利益の双方を上げるツールとして、十分機能していると認識している。
 また今年7月からは、nanaco会員向けの新たなサービスとして、電子マネーでは唯一となるインターネット・クーポンサービスを導入した。仕組みはとてもシンプルなもので、① モバイルやPCから会員番号とメールアドレスを登録しておく、② 新たなクーポンが発行されるたびに案内メールが届く、③ メールからリンクされたサイトで対象商品を確認してクーポンを取得する、④ 決められた期日までに登録済みのnanacoで決済する、⑤ 後日ポイントが付与される、というもの。特にモバイル会員は、いつも購入している定番商品や、気になっているほかの商品などのクーポンを店頭に居ながらにして入手、その場で購入できるので、より一層便利さやお得感を感じることができる。クーポンの発行は月4回で、1回に発行されるアイテムは5品を計画している。また、クーポンの有効期限は最大2週間なので、運が良ければ10品のクーポンを同時に使用することも可能である。
 同社ではこれからも、グループ内外を問わず利用できる店舗を増やすとともに、ポイント交換可能な提携先の拡充など、会員サービスの充実に努めていく意向である。

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新たに始まったインターネット・クーポンサービス


月刊『アイ・エム・プレス』2009年9月号の記事