会員数は倍々ゲームで拡大 製品力と既存顧客のケアがカギ

(株)ドクターシーラボ

会員数、売り上げともに大きく飛躍するドクターシーラボ。年間15万円以上を買い上げる優良顧客は過去1年間に購入実績のある会員の15%弱を占める。同社は、いかに優良顧客を獲得しているのだろうか。

年間15万円以上を購入する優良顧客が12~13%

 ドークターシーラボは、皮膚科医で現取締役会長の城野親徳氏が開発した「アクアコラーゲンゲル(万能保湿ゲル)」を中心に、専門医が開発するメディカルコスメの通信販売を、1999年に開始した。当初は、同商品を含む6アイテムのみの販売だったが、現在ではスキンケア商品のみならず、ボディケア商品・メイクアップ商品・美容機器・サプリメントなどを幅広く販売している。
 2000年1月期に売上高3億3,700万円を記録した後、年を重ねるごとに売り上げを伸ばし、2003年1月期には80億6,000万円を売り上げた。これとともに会員数も順調に増加し、2002年12月に70万名を突破。2003年8月には120万名と倍々ゲームを続けている。会員の中心は女性。中でも、30~35歳が主要層で、以下、35~40歳、25~30歳と続く。同社では、「幼児から高齢者まで、どなたにでも安心してお使いいただけることを商品開発のコンセプトとしており、発売当時には顧客ターゲットを特に定めてはいなかった」(専務取締役 藤田裕司氏)が、化粧品に対するこだわりが強く、金銭的に余裕のある層が主要顧客となっているという。
 それでは、同社の優良顧客とは、どのような顧客なのだろうか。
 他社に浮気することなく同社製品を日常的に使用する「年間5回以上購入し、年間購入額が15万円以上の顧客」がロイヤルカスタマーと定義されている。これをさらに上回る額を購入する顧客は、スキンケアだけでなく幅広い商品を購入している、もしくは友人にプレゼントしていると考えられ、優良顧客の中でも最も同社に対するロイヤルティが高い層と考えられるだろう。
 藤田氏によると、会員120万人の中で、過去1年間に購入実績を持つ会員は40万人。優良顧客はこのうちの12~13%に上る。

既存顧客を優良顧客に引き上げるバラエティーに富んだプログラム

 同社では、優良顧客にのみ特別なDMを送付したり、アウトバウンド・コールを行うなどの施策は試みられていない。しかし、既存顧客とのコミュニケーションはさまざまなかたちで促進されており、これが一般顧客を優良顧客に引き上げる要因ともなっている。それでは、それらの施策を順を追って紹介しよう。
 まず挙げられるのは、会員情報誌「Ci:Lover(シーラバー)」だ。年に4回発行、フルカラーのA4版40ページ程度で、120万名の会員に対し送付する。構成は、著名人と城野氏の対談や、季節の話題を盛り込んだ特集、詳しい商品説明などだ。
 顧客の誕生月には、お祝いのメッセージを書いた手紙と、ポプリや香り袋などのプレゼントを送付すると同時に必ず特別に安く購入できるセット商品を案内し、注文を促す。商品そのものの値引きは行わず、その代わりに、いくつかの商品をまとめて購入すると割安になるセット価格を打ち出したり、同封された申込用紙を使用するとミラーやポーチをプレゼントするなどして、購入の動機付けとしている。レスポンス率は明らかにされていないが、藤田氏は「10%は超える」と話す。
 このほか、2001年にはリピートを促すためにポイント制を導入。1,000円の購入に対し1ポイントを付与し、好みの商品と交換できるようにした。
 交換品は毎年入れ替えを行い、毎年春に会員情報誌とともに送付する専用カタログ「シーポイントカタログ」(A4版・フルカラー・15ページ程度)に掲載し、案内する。交換品の種類は豊富で、100ポイントから500ポイントまでの5段階の中から選択できる。商品券も用意しているが、誕生月のキャンペーンと同様、ポイントを商品と交換することはできない。「ブランディングの面からも、現時点の商品割引はかなりリスキー」(藤田氏)であるためだ。
 さらに、会員5万名を集めるPC用のメルマガ「きれいになろう!美肌クラブ」と、会員7,000名のiモード用のメルマガがある。前者は月に1~2回送付し、コンテンツ面では速報性と、情報の新鮮さを重視している。

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全会員に送付する会員誌「Ci:Lover」と、毎年春に送付するポイントに応じたプレゼントを案内する「シーポイントカタログ」(写真左)/商品カタログでは品質の高さをシンプルに伝える努力がなされている(写真右)

1年半で20店以上を展開 好調を極める店舗売上

 このほか、同社が顧客とのコミュニケ-ションに役立てているのが、2001年に名古屋名鉄百貨店内に1号店がオープンした直営店「シーショップ」である。これまでに百貨店内を含む26店を展開。百貨店内の店舗スペースは平均4.5坪と小さめだが、坪単価は、百貨店に20店以上入店している化粧品メーカーの中でも、上位5位程度にランクインするほどという。
 売り上げを向上させる決め手のひとつは、厳しいトレーニングを受けたカウンセラーの存在だろう。同社の製品は、①界面活性剤を使っていない、②水分+油分の従来のスキンケアとは異なるケアを目指す、などの特徴があるが、それがどのような利点をもたらすかを一般の消費者が理解するには、かなりの説明を要する。このため、フェイス・トゥ・フェイスでカウンセリングを行いながら商品の良さを顧客に伝える店舗の存在は、既存顧客の理解を促し継続的な使用につなげるまたとないチャンスとなるのだ。こうした点を重視して、店舗で接客に当たるカウンセラーにはすべて社員を登用。 OJTも含め約3カ月の研修期間を経て初めて、正式にカウンセリングを行えるという入念な教育を実施している。
 さらに、顧客一人ひとりのカルテを作成し、2度目以降の顧客に対しては、「前回はこうだったが、その後いかがですか」と声がけできる体制を整えた。完全な担当者制ではないまでも、できるだけ同じ担当者が対応するように配慮している。

今後はセグメント別会報誌を

 藤田氏は同社が成長を続け、安定的に優良顧客を確保している要因のひとつとして、商品力を挙げている。皮膚科医が患者のための医薬品として開発し、患者の口コミで多くの購入希望があったことから通販事業の展開を始めた同社設立の経緯が、製品の質の高さを物語っていると言えるだろう。
 それでは、今後の課題は何か。ひとつは、これまで全会員に同様に送付していた会員誌をセグメント化して作り分けることだ。また、商品そのものも若年層、高齢層などのターゲット別に作り分ける必要があると藤田氏は語る。さらに、利便性、価格、情報をキーワードに、新たな戦略を構築していく考えという。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年9月号の記事