4カ国語対応のコールセンターが店頭でのコミュニケーションもサポート

(株)NTTドコモ

携帯電話事業大手の(株)NTTドコモでは、1999年から「ドコモ インフォメーションセンター」において外国語センターを運営。現在では30名・23席体制で、外国人のお客さまからの各種お問い合わせに、英語、ポルトガル語、中国語、スペイン語の4カ国語で対応している。

「ドコモ インフォメーションセンター」内に4カ国語に対応する外国語センターを設置

 携帯電話事業大手の(株)NTTドコモでは1999年、総合お問い合わせ窓口として機能するコールセンター「ドコモ インフォメーションセンター」内に外国語センターを設置し、以降、同センターを拠点とした外国人対応を行っている。
 同センター設置の目的は、言うまでもなく日本語だけでは十分なコミュニケーションが取れない外国人のお客さま(見込客および契約者)への対応の充実化である。同社のお客さまは当然のことながら日本人が大半を占め、外国人の割合は一部に限られるが、外国語センターが設立された1999年には「iモード」サービスの提供が開始され、同社の携帯電話契約者が急増したこともあり、外国人からの問い合わせの絶対数も無視できない規模に拡大しつつあった。そこで外国語センターを設置し、当初は英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語の4カ国語に対応するセンターとして、11名・8席体制で、平日(月~金曜日)9時~ 17時までサービスを提供していた。
 その後、翌2000年にはサービス提供時間を日本語対応と同様の年中無休・9時~ 20時に拡大。また、2002年にはサッカーの日韓ワールドカップ開催に伴い、韓国語での対応も開始した。ただし韓国語対応については、韓国人のお客さまは英語で十分なコミュニケーションが取れる場合が多いこと、実際に韓国語での問い合わせも少なかったことから2013年9月に中止しており、現在ではスタート当初と同じ、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語の4カ国語対応に戻している。
 センターの規模については、実際のコール数の推移に応じて段階的に拡大してきており、現在では30名・23席体制で運営している。スタッフは派遣社員が中心で、日本語、英語、およびポルトガル語、スペイン語、中国語のいずれかの3カ国語以上を使える、いわゆるマルチリンガルを優先的に採用している。ちなみに、国籍は韓国、中国、台湾、ブラジル、ペルー、パラグアイなどさまざまであるが、センター内の“公用語”は日本語であり、業務上のコミュニケーションは日本語で行われているとのことだ。
 なお、「ドコモ インフォメーションセンター」は同社内に設置されているが、業務運営はグループ企業のドコモ・サポート(株)に委託するインソーシングの形態が採られており、外国語センターについても、実際の運営はドコモ・サポートが担当している。

ドコモショップを経由した問い合わせが6割

 外国語センターに寄せられる問い合わせの内容では、新規契約に関するものが多い。
 特に海外ではプリペイド式の携帯電話サービスが普及している国も多いことから、「プリペイド式のサービスはありますか」といった問い合わせも多いとのことであるが、同社ではこのようなサービスは提供していないため、プリペイド式以外での新規契約を希望するかどうかを伺い、希望する場合には契約方法を説明するという流れになる。
 外国人のお客さまが同社の携帯電話サービスを契約する場合には、住民基本台帳カードや在留カード、外国人登録証明書の提示が必要となり、さらにこれらの有効期限、在留期限まで3カ月未満の場合には、月々の通話料の支払方法を契約者本人名義でのクレジットカード決済に限定している。
 新規契約に関する問い合わせに対してはこれらをすべて、しかも正確に伝える必要があることから、1通話当たりの応対時間は、日本人のお客さまに対する日本語での同様のやり取りと比較して数倍に及ぶ。
 なお、これらの問い合わせについては、同社のWebサイトやカタログなどで告知している外国語センターの電話番号を見て、外国人が直接コールしてくるケースもあるが、全体の6割程度が、全国のドコモショップ店頭からのものとなっている。
 全国に2,400店舗以上を展開するドコモショップの中には、例えば米軍基地がある地域や、いわゆる「○○人街」が形成されているような同一国籍・言語の外国人が多く居住する地域の店舗で、外国語で対応するスタッフを配置しているケースも見られる。しかし、それ以外の店舗では、来店数が限られる外国人のお客さまに対応する体制を整えておくことは経営効率上も難しく、外国語に堪能なスタッフが配置されているケースは少ない。そこで同社では、ドコモショップに外国人が来店し、日本語でのコミュニケーションが難しい場合、外国語センターを積極的に活用することを推奨しているのだ。 
 このようなケースでは、コミュニケーションが外国人のお客さまと外国語センターのスタッフ、ドコモショップのスタッフの3者間で行われることになるため、応対時間がさらに長くなることもある。しかしながら、お客さま満足の向上と効率性の実現の双方のバランスを考え、同社では今後もこの体制で対応を行っていく方針だ。
 なお、新規契約関連以外に、既契約者からの機器操作などに関する問い合わせもあるが、これらについては、近年、スマートフォン(スマホ)の比率が高まったことにより、1件当たりの応対時間が短縮している。従来型のいわゆる“ガラケー”では、端末の操作メニューが日本語表記のみの端末もあり、「メニューの上から○番目をクリックしてください」といった説明のしかたをしていたのに対して、スマホでは多言語に対応しているものも多いため、情報を共有しやすく、円滑な対応が図られているとのことである。

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英語版カタログで、外国語センターの電話番号と対応言語を告知

ニーズの拡大に伴う体制の充実化を検討

 外国語センターのスタッフの研修内容については、基本的には日本語対応スタッフと同様であるが、前述のようにドコモショップのスタッフを交えた3者間コミュニケーションの機会が多いことから、3者でのロールプレイングを行うことなどで、対応スキルの向上を図っている。
 そのほか、「ファミリー割引」などのサービス名には直訳できないものも多く、また、内容についても詳細な適用条件が設けられていることから、外国人に正確に理解してもらうことが難しい。そこで、このような単語については、あらかじめ説明用の文章を用意しておくとともに、スーパーバイザーによるモニタリングなどを通じて、説明もれやお客さまの間違った解釈などの解消に努めている。
 今後は2020年の東京オリンピック/パラリンピックの開催決定などを契機に、外国語対応のニーズが拡大すると予想されるが、それに対応した体制の充実化など具体的な対応については、これから検討していきたいとしている。
 例えば、同社が提供している翻訳サービス、「はなして翻訳」では、すでに英語・中国語・韓国語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語・インドネシア語の10カ国語に対応(英語・中国語・韓国語以外は対面利用のみ)していることから、このようなサービスのさらなる進化も含め、外国人のお客さまに快適と感じていただける対応を実現していきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2014年3月号の記事