「企業と顧客は “仲間”」人間的な関係が売り上げに直結

(株)プロ・アクティブ

企業と顧客でコミュニティを形成し、商品はそのコミュニティに乗って流れていくだけ。(株)プロ・アクティブの企業理念は独特だが、その発想は新鮮で顧客の強い共感を生んでいる。

購入から3週間で3回のアプローチ

 「モノを売るのではなく、心や親しみやすさ、そして人間関係を売っていきたい」。(株)プロ・アクティブは、代表取締役の山口哲史氏が唱えるこのような経営理念のもと、中高年の“痛い”“辛い”の改善から“スッキリ”“元気に”“若々しく”をサポートする健康関連商品を販売している。吉祥寺に店舗を持つほか、インターネット(URL:http://www.pro-active.co.jp/)および紙ベースのカタログで通信販売を行い、2002年7月期にはグループ連結で年商15億円を記録。前年の10億円から飛躍的な成長を遂げている。総売上に占める通販の割合はB to B、B to C合わせて60~70%といったところ。今回は、B to Cの通販に焦点を当てて話を伺った。
 現在、同社の通信販売を利用している顧客は7万~8万人。うち、1年以上取り引きが継続しているアクティブな顧客は2万5,000人に上る。売上構成はインターネット10%、カタログ90%で、40代~50代の女性が圧倒的多数を占める。それでは、「顧客を恋人ととらえる」(山口氏)ことから始まった、同社の顧客との関係作りに関する施策を紹介しよう。

1.サンキューレター、フォローレター、プレゼント
 注文が入るとまず、商品とともにサンキューレターを届ける。次いで注文から1週間~10日後に、「使い心地はどうですか?」「何か分からないことはありませんか?」と尋ねるフォローレターを送る。往復はがきを用いることで、顧客が気軽にコメントや質問を書いて返信できるようにした。さらに注文から約3週間後に、プレゼントを送付。内容は時として異なるが、現在は「アフリカつばき茶」のサンプルと、同商品の詳細を説明する資料、そして「幸せの黄色いハンカチ」を1セットにして送っている。商品の包みに「あなた様との出会いの記念に」と書いたシールが貼られているほか、外封筒にはスタッフの写真と感謝のメッセージが印刷されている。
 往復はがきで寄せられたメッセージはすべてバインダーにとじて保管し、社内で回覧する。

プロアクティブプレゼント

購入から3週間後に送られるプレゼント一式例

2.ラブレター代わりにニュースレターを発送
 ニュースレターは毎月1回、アクティブな顧客2万5,000人に発送している。「顧客を大切に思っている」「気遣っている」といった気持ちが伝わるよう、山口氏自ら連載ページを持ち、同社の考え方や「人生にはこういうことが大切ですよね」といったメッセージを綴る。同社に届いた顧客の写真やコメントだけでなく、同社スタッフの写真や言葉も掲載。文字通り、「顔の見える双方向の関係」の構築に力を入れる。
 ニュースレターではセールストークは展開せず、商品案内は別刷りで同封する。これら同封物は内容によって色やサイズを変えてあり、顧客が「これは商品紹介」などと識別しやすいように工夫を凝らした。

3.休眠顧客には特別プロモーション
 年に2回、夏と冬に行うキャンペーン時に、1~2年の間、購入が途絶えている休眠顧客を含めてDMを送付している。同社は商品の割引を通常は行わない。しかしキャンペーン期間は一定額を購入すると金券が付く特典を設け、一般の顧客の受注促進だけでなく休眠顧客の掘り起こしを狙う。最初に購入したときのサンキューメールをはじめとする手厚いケアで強いインパクトを与えていること、そして「今しか割引価格で購入できない」との心理的効果が奏効し、休眠顧客からのレスポンス率は5%程度とかなり高い。

4.特別な日に特別な心遣いと特典を用意
 このほか、顧客の誕生月と結婚記念日の月には、お祝いのレターとプレゼントを送付し、普段は行わない割引を提供。割引率は前者が10%、後者が5%だ。

課題は新規顧客の獲得

 顧客との関係作りを進めるためには、まずは同社の存在を知ってもらうこと、一度購入してもらうことが必要だ。この新規顧客の獲得が、現在の課題となっている。これまで、同社はマスコミで採り上げられることで認知度を高めてきた。まず健康誌が大々的に特集を組むなどしたことで、健康志向の中高年層に圧倒的に支持されるようになった。さらに2000年には、日本テレビ放送の「おもいっきりテレビ」で同社が扱うチタン製品が紹介され、認知度アップにつながった。
 既存顧客に友人を紹介してもらいサンプルを届ける仕組みもある。被紹介者には、セールス色を前面に出さない程度に商品の案内を行い、約30%の固定化に成功しているという。昨年は、全国紙に全面広告を打つなどして新規顧客を獲得。その後のリレーションシップ構築により大きく売り上げを伸ばした。最近では、「アフリカつばき茶」や「うまさ革命」といった健康茶や健康調味料など、女性に喜ばれる新商品がマスコミに採り上げられてムーブメントを起こしており、新しい顧客の獲得につながっている。

“思いを売る” これが21世紀型ビジネスモデル

 以上はすべて、顧客を恋人に見立て、いかにアプローチすれば顧客に「振り向いて」もらえるかを検討した結果、生まれてきたサービスだ。山口氏は、「良い関係を築くには“まめさ”と、“手間”が必要。コストもかかるし、エネルギーも使う。しかし、使ったエネルギーは必ず売り上げとなって返ってくる。また、顧客に長く支持してもらえれば顧客生涯価値も上がる」と説明する。
 こうした取り組みは同社とのやりとりを“日常的な行為”ととらえる、熱烈なファンを生み出してきた。通常送付するDMのレスポンス率は25%前後、新商品の単品DMでも10~15%に上る。この数字が、山口氏の指摘の正当性を証明していると言っても過言ではないだろう。ここまで丁寧な仕組みを築いていなかった4年前、顧客の流出率は50%だった。しかし現在は、次々と健康関連商品が発売される中でも、流出率は17%にとどまっている。なお、同社では1年間購入のなかった顧客を「流出」と定義付けている。
 山口氏はさらに、次のように語る。
 「現代社会で失われたコミュニティを顧客と私どもの間で創出していきたい。私どもには幸せにつながるものを伝えたいという強い思いがあり、顧客=人間はそうした思いに反応し、共鳴してくれている。こうした顧客との関係性こそ、企業が生き残るための生命線と言えるのではないだろうか」。
 顧客が商品とともに企業の理念を購入。喜び、感動を分かち合う“仲間”と化す。これこそ、21世紀型のビジネスモデルと言えるかもしれない。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年3月号の記事