量から質への転換

(株)ファミリーマート

質への転換

 「500店舗閉鎖」の記事が新聞紙上を騒がせ、何かと話題になっている(株)ファミリーマート(以下ファミリーマート)。各マスコミが報じるように、かなり厳しい選択であったようにも思えるが、その思惑はポジティブなものであるという。
 ファミリーマートは2月26日に、総店舗数の約1割に当たる500店舗程度を、1年間で閉鎖するという経営改善計画を発表した。これに対して多くの読者は単純に500店舗を閉店すると思われるかも知れないが、そうではない。同社では店舗の質の向上を目指した「ビルド&スクラップ」を実施しており、その「スクラップ」の部分として、今までも年間約200店舗規模の閉店は実行してきた。今年度は、本格的な梃入れを行うためにその規模を大きくするというわけだ。また、これにともない「ビルド」の部分である、新規出店の計画も都市部を中心に進められており、そのための開発要員(同社では新規の出店を開発と呼ぶ)も増強され、体制も強化していくということだ。同社ではこれを、量から質への転換ととらえている。
 その具体的な内容は、環境の変化にともなった時代への対応だという。たとえば、同社の加盟店とのフランチャイズ契約は10年だが、開店当時は立地条件がよかったとしても、現在では交通事情や競合店の出現により営業に不利な店舗も存在するわけで、そういった店舗をもっと有利な場所や、駐車場のスペースが確保できる場所に移転したりすることも、「ビルド」に含まれる。タバコ、酒といったいわゆる「免許品」の免許の取得も質の向上の一環であり、これまで以上に積極的に取り組んでいく意向である。さらに店舗レベルでの質の強化という部分では、徹底した従業員教育やPOSシステムへの投資による、より精度の高い売り場づくりを目指している。

ファミマドットコム

「famima.com」トップページ(http://www.famima.com/)

独自のECフランチャイズ・システム

 昨今、コンビニが「地域社会の拠点」としての機能をもつことが、社会的に求められつつある。ファミリーマートでも、顧客にとっての便利さを日々追求しており、採算ラインに乗るのかをよく検討した上で、前向きに対応していく考えである。
 同社の店頭端末である「Famiポート」は、昨年10月にまず都内の店舗に10台導入され、バグやその他の障害、多様化するサービスに対応できるのかという実験が行われた。2001年3月中には、都内と中京地区を中心に1,500台を設置、一定の研修期間をおいてからさらに拡充していく予定である。現状では、音楽のダウン・ロードやデジタル・プリント、ブロマイド印刷といったサービスが主流であるが、「がずペイント」という車に関する情報の提供は無料で行われている。今後は、同社がこれまでも端末「ファミネット」を介して独占的に扱ってきた“ぴあチケット”の「Famiポート」への集約化や、JTBの旅行チケットの取り扱いを手掛けていく予定だ。「Famiポート」にはこれから実用化されるであろう、さまざまなメディアに対応する数々の端子が装備されており、今後予定されているサービスへの対応は万端である。
 同社ではEビジネスを同社が提唱する「スーパーCVS」の一環として位置付けている。その柱の部分として、インターネット・ショッピング、店頭端末、ATMなどがある。
 インターネット・ショッピングサイト「ファミマ・ドット・コム」については、ECフランチャイズ・システムを推進する方向。これは、他企業が本部でサイトを作って、加盟店はその収納代行や商品受け渡し代行としてしか機能しないのに対し、加盟店ごとに独自のホームページを開設し、本部がそれを支援するシステムだ。加盟店の自立をうながし、ビジネスの発展に寄与すると同時に、顧客に対しても、よりきめの細かいOne to Oneでのサービスが提供できるという期待がある。商品購入には「ファミマ・クラブ」会員(無料会員)に登録する必要があるが、買い物金額に応じてポイントが付与される、ポイント制度も導入しており、蓄積したポイントを、リアルのコンビニでも使えるなど、リアルとバーチャルの融合を目指している。
 またインターネット・ショッピングをさらに広げるという意味で、「ファミマ・ドット・コム」で扱っている、CD、DVDやぴあのチケットなど約3万点を携帯電話から申し込めるiモード向けのサービス「ファミマi」を2月5日から開始した。支払いに関しては、店頭払いとクレジット・カードでの決済があるが、6割は店頭払いだという。さらに、「ファミマ・ドット・コム」で扱う商品の紹介を目的とした、店頭にはない約500アイテムの商品を掲載した無料の小冊子「ふぁみコレぴあ」をチケットぴあとの提携で発行しており、同社のインターネット・ショッピングへのナビゲーション機能という意味で大変重要な役割を担っている。

高齢者向けの日用品宅配サービス

 同社は(株)ハンディネットワークインターナショナル(以下HNI)と提携し、高齢者向けの日用品宅配サービス事業に参入することを2月14日に発表した。これは、HNIが医療法人グループであるMS法人(医療以外のサービスを行う部門)と連携して全国展開する高齢者向け在宅配食システムのプラットフォームと前述の同社の「ファミマ・ドット・コム」を組み合わせることにより、配食事業の付加価値サービスとして日用品宅配を行うものである。宅配の媒体には赤帽車を使用する。具体的な手順は、
・既存配食顧客に向けカタログ、簡単な申込書を届け、配食サービス時に赤帽配送員が申込用紙を回収してMS法人に持ち込む。
・MS法人は、「ファミマ・ドット・コム」のサービスセンターに同申込書をFAXで送信する。
・「ファミマ・ドット・コム」は注文を受けてから数日以内に商品をMS法人の倉庫に届け、それを赤帽配送員が、配食ルートに乗せて個人宅への商品配送を行うというものである。

異業種との競合

 低コストの主食を提供する異業種との競合は、同社にとっても脅威である。また100円ショップの出現や、長時間営業のスーパー、ドラッグストアも無視できる存在ではない。そこで同社では、店舗で扱っているハンバーガーを、平日半額セールを行っているハンバーガー・チェーンとは逆に、土日に半額で販売したり、オリジナルの雑貨を置いたり、コンビニの肝と言われる中食に関してもオリジナルな商品の開発を強化することで、差別化を計っていきたい考えである。また同社の特色であるデザート・コーナーのますますの充実や、オリジナル弁当のシリーズ「とびっきりごはん」のさらなるアピールもこれからはかなり重要になる。また、以前に期間限定で展開した大塚食品と提携した「ボンカレーパン」に代表される、メーカーとのタイアップなども同社を特徴づける有効な手段として、今後ますます盛んになっていくであろう。

p−ファミマ

約500アイテムを掲載した「ふぁみコレぴあ」


月刊『アイ・エム・プレス』2001年4月号の記事