新商品のサンプリング企画を「Yahoo! JAPAN」で告知し新規顧客獲得に成果

(株)ダイエー

(株)ダイエーは、新規顧客の獲得や売り場の活性化を狙い、ソフトバンクグループが提供するソリューションを活用。店頭で実施するキャンペーンを、ポータルサイトの「Yahoo!JAPAN」で広く告知し、ネットからの応募者に、抽選で全国の店舗で使えるクーポンをプレゼントしている。

2010年の「たまチケ」をきっかけに電子クーポン発行サービスを開始

 スマートフォンの爆発的な普及などによりインターネットのインフラ化が急速に進んでいることを背景に、生活者の情報収集手段や購買行動が変化していることに対応して、(株)ダイエーは、新たな販売促進手段として、O2Oの取り組みを強化している。
 同社は2010年、福岡県内の複数の民間企業が、福岡県および福岡市の支援を得て、経済産業省からの事業委託として取り組む「ITとサービスの融合による新市場創出促進事業」の一環で実施した実験検証「福岡eタウンプロジェクト たまチケ」(以下、たまチケ)に参加し、Webチャネルから店舗への送客を図るO2Oの本格的な取り組みを開始させた。
 たまチケは、電子チケット/クーポンを利用することによる経済への波及効果や、顧客の回遊行動を調査・解析し、地域活性化の取り組みに寄与するモデルを構築することを目的とした実験検証。同社は、たまチケ登録会員がネットメディアを通じて獲得した「商品プレゼント」などの電子クーポンを、店内で発行・使用してもらうというサービスを試験的に実施した結果、提供したクーポンのうち半分程度が、登録会員によって店頭で実際に発行・使用され、新規顧客の獲得にも一定の成果を収めたという。

「Yahoo! JAPAN」のトップ画面はじめ多様な広告スペースを活用

 この実験検証で、クーポン発行のシステムなどサービス運用を担当していたのが、ソフトバンクギフト(株)。これをきっかけにダイエーとソフトバンクグループとの電子クーポン分野における関係が深まり、翌2011年からはポータルサイトの「Yahoo! JAPAN」でユーザーに提供されているO2O型のキャンペーン企画「プレモノ」に、ダイエーも参加することになった。
 プレモノは、メーカーなどが実施する複数のキャンペーン情報を独自コンテンツ上で告知して、応募を受け付ける。キャンペーンは、製菓や清涼飲料など幅広いジャンルの商品が対象。Yahoo! JAPANの会員であれば、数問で構成される簡単なアンケートに回答することで、誰でも応募できる。応募者の中から抽選で当選者を決定し、インセンティブを進呈。インセンティブはキャンペーンごとに設定され、対象商品を無償提供するサンプリング形式のほか、商品の割引クーポンを提供したり、共通ポイントカードのポイントを付与したりするパターンもある。
 そして、このプレモノを発展させたソフトバンクテレコム(株)の新サービスが、「ウルトラ集客」である。月間500億回以上の延べPVを誇るポータルサイトのYahoo! JAPANを“メディアジャック”できるサービスで、特定コンテンツにおけるキャンペーンの限定的な告知にとどまらず、Yahoo! JAPANのトップ画面をはじめとする多様な広告スペースを活用し、大規模にキャンペーンを告知できるのが特徴だ。
 ダイエーでは、このウルトラ集客を利用して、昨年12月には清涼飲料水の新商品で、今年2月にはアルコール飲料で、キャンペーンに参画。3月下旬からは、需要期を前にリニューアル発売されたばかりの江崎グリコ(株)のアイスクリーム「パリッテ」のキャンペーンに参画している。

4 万人に「パリッテ」の無料クーポンを提供

 パリッテは、“パリパリチョコ”と“ふんわりバニラ”がミルフィーユのように折り重なったソフトクリームで、キャッチコピーで「パリふわ」と表現する独特の食感がセールスポイント。メーカー側も販売に力を入れる期待の商品である。
 アイスクリームのような要冷凍の食品は発送コストがかさむため、当選者に商品を発送する従来型のサンプリング企画の実施は難しかったが、今回は当選者が店舗で商品を受け取るウルトラ集客のスキームを使用することで、これを無理なく実現。ダイエーとしても、話題性のある商品の集客効果に期待を寄せている。まず、3月21日から3週間を「応募期間」として設定。4万人に商品の無料クーポンを提供する企画だが、応募数は受け付け開始後、数日で4万人を突破。期間中に10万人を上回るものと予想されている。
 今回のようにインセンティブがクーポンの場合は、当選者にはeメールによって、当選した旨の通知と同時に、固有の当選番号と、その番号に対応したバーコードの画像を送付。クーポンを使える店舗は応募画面で告知しており、今回は、パリッテを扱う約120店舗。当選者は4月15日から2週間の「引き取り期間」中に最寄りの店舗を訪れ、クーポンを発券し、商品と交換する仕組みだ。店頭に設置された専用のクーポン発券端末に、携帯画面に表示されたバーコード画像を読み取らせたり、当選番号を入力したりすることで、紙のクーポンをプリントアウト。後は、この紙のクーポンと商品をレジに持って行ばよい。

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店頭に設置された端末から、クーポンを出力/3 月下旬からのキャンペーン商品、江崎グリコの「パリッテ」(右上)

今後も継続的に実施してノウハウを蓄積 効果的な手法の開発を目指す

 過去2回のウルトラ集客を活用したキャンペーンでは、当選者が実際に店舗を訪れてクーポンを使った割合は、いずれも3割台に達した。
 キャンペーンの効果検証に使えるデータとしては、システム運用のソフトバンクテレコム側からキャンペーン応募やクーポン発行時のデータが得られる。詳細な効果検証はこれからだが、ダイエー側では、新規顧客をはじめとする来店促進や売り場の活性化に一定の効果があると見ており、一方のメーカー側では新商品の認知向上や競合製品からのブランド・スイッチの効果を期待している。
 ただし、こうしたサービスの実施には、現場(店舗)の協力が不可欠。ダイエーではこれまで、店舗に専用のクーポン発券端末を設置し、それぞれの店舗で当選者に対応するためのマニュアルや業務フローを整備してきた。各キャンペーンの実施に当たっては、応募受付の2週間前に実施店舗の店長に通知した上で、1週間前には現場の各管理者に周知。店舗では、対象商品の仕入れや陳列、レジでのオペレーションなどに支障がないように準備する。そのため、現場の負担は小さくはないが、社内の期待は大きい。毎回のキャンペーンは、対象商品を取り扱わない店舗では実施しないが、そうした店舗の店長から、「うちでも商品を扱って、キャンペーンに参加したい」との要望が寄せられたケースもある。
 ダイエーでは今後も、ウルトラ集客を利用したキャンペーンに継続して参画する方針。商品の無料クーポンを利用した当選者を対象に、同一商品の割引クーポンを配布することで、商品リピートを促進するという構想もある。実施データの検証結果を踏まえてキャンペーン展開のノウハウを確立すると同時に、集客効果に関する分析精度も上げていきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年5月号の記事