自社カードによる「お得意さま」育成とTポイントを活用した新規顧客獲得に取り組む

(株)ファミリーマート

(株)ファミリーマートでは、「ファミマTカード」の会員情報とPOSデータを連携させた「ロイヤルカスタマー優遇システム」により、「お得意さま」との関係を強化。また、4,229万人の会員を抱えるTポイントの基盤を活用して、新規顧客の獲得を図っている。

Tポイントアライアンスに加盟し汎用性の高いサービスを展開

 (株)ファミリーマートは現在、国内に9,160店、海外に1万2,419店、計2万1,579店を展開(2012年10月末現在)。お弁当やスイーツ、飲料などの商品はもちろん、物販以外にも銀行ATMや公共料金などの収納代行、マルチメディア端末「Famiポート」を利用したチケット発券といった各種サービスを提供している。
 会員サービスにも力を入れ、2002年に「ユピカード」、2004年に「ファミマカード」を発行。自社の会員基盤を中心に、ポイントや割引、クレジットカード機能を活用したサービスを展開してきたが、より汎用性の高いサービスを行うことを目的に2007年11月からはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)(CCC)と提携し、Tポイントサービスが受けられる「ファミマTカード」を発行している。
 CCCのTポイントは、2012年10月末現在、日本の人口の3割に当たる4,229万人の会員数を誇る。これは直近1年間にTカードを利用したアクティブな会員で、かつ複数枚保持している会員を名寄せして1人としてカウントした数で、累計発行枚数ではすでに1億3,000万枚を超えている。また、Tポイント提携企業は91社、4万9,734店と、幅広い業種・業態で利用できるのが特徴だ。
 現在、「ファミマTカード」の会員数は約472万人で、そのうちクレジット機能付きが約212万人。18歳以上は基本的にクレジット機能付きカードへの入会が必要だ。
 ファミリーマートでの利用では、カードをレジで提示するだけで、Tポイントが100円につき1ポイント貯まるほか、「今お得」のショーカードの付いた商品を会員限定特別価格で購入することができる。さらに、毎週火・土曜日は「カードの日」としてショッピングポイントが2倍、毎月20日は「おとなの日」として50歳以上を対象にショッピングポイントが2倍などのサービスを実施。蓄積したポイントは1ポイント=1円としてファミリーマートやTポイント提携店舗で利用が可能だ。

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現在、約472 万人の会員を擁する「ファミマTカード」

「購入頻度」と「購入金額」による独自のFM分析を実施

 同社は2009年10月から、「ロイヤルカスタマー優遇システム」を活用したCRMを本格的に展開してきた。「誰が」「いつ」「何を」「何個」購入したのかというカード会員データベースを構築。これを基に、カード会員の「購入頻度(F)」と「購入金額(M)」をベースにした独自のFM分析を実施し、顧客グループを「お得意さま」「ミドル」「ライト」「休眠」に分類し、きめ細かなCRM施策を実施している。
 同社は小売業のため、CRMの目的は大きく2つ。顧客のニーズを満たす品揃えの実現と、来店促進だ。後者は主に、CCCのシステムとファミリーマートのPOSレジを連動させて、ポイント付与率を変更したり、レシートにクーポン(Fクーポン)を印字したりする方法による。
 特に力を入れているのは、「お得意さま」やその予備軍への販売促進策の強化だ。
 例えば誕生月を迎えた優良顧客に、ファミリーマートのレジにて100円の割引クーポンを先着5万人に配布しているが、その利用率は5割強に上る。ほかにも、割引やポイントを中心とした販促活動を継続的に実施してきた結果として、「お得意さま」の来店回数や頻度が着実に高まると同時に、離反率は低下傾向にある。同社の事業においては“2割の顧客が8割の売り上げを占める”という「パレートの法則」がほぼ当てはまっているといい、「お得意さま」の育成・維持は重要な課題。割引以外のインセンティブも開発しながら、今後もこの施策は継続していく。
 一方、TSUTAYAやカメラのキタムラなど他社の店舗のPOSレジから商品の割引クーポンや無料引換券を発券してもらう方法で、新規顧客の来店促進も図っている。
 また同社は、Tポイントアライアンスをひとつのマーケットととらえ、他社店舗のレジでクーポンを発券してもらう方法で、ファミリーマートを利用していない潜在顧客の誘引にも力を入れる。集客効果はクーポンのインセンティブに大きく左右されるため、同社では配布したクーポンの利用率そのものよりも、その後の継続利用率を重視している。平均して、クーポンをきっかけに購入に至った人のうち3 ~ 4割は継続して利用するといい、費用対効果はおおむね良好であると同社では評価している。
 同社が特に今、「フォーカスターゲット」と呼び、顧客化を図っているのが50歳以上の人々。Tポイントは提携企業の拡大により40代、50代、60代の入会者が増えているため、新規会員のうちファミリーマートを利用していない人に対して、毎月のように割引クーポンを配布しているという。
 ターゲット別、目的別に、このようなプロモーションは週に何本も同時に走っており、年間では優に100を超える。

CCCの「DB Watch」で会員の属性データを詳細に把握

 会員データを分析する仕組みとして、同社では、「ファミマTカード」のデータに加え、CCCの情報をクロスさせた新しいマーケティング・ツール「DBWatch」を活用している。例えばコンビニエンスストアの場合、顧客の性別・年代など属性データのレジ入力は、アルバイトスタッフの感覚に任せるしかなく、正確なデータを取得するのは難しい。そこでCCCが保有しているTポイントの会員属性データと同社のPOSデータを合体させることにより、偽りのない顧客の属性を、個人を特定しないデータで簡易に閲覧できるようになった。
 また、従来のPOSデータでは、「何が」「いつ」「何個」売れたかのデータは取れても、「誰が」購入したかはわからなかったため、その顧客がその商品を初めて買ったのか、気に入って繰り返し買っているのかを知ることは難しかった。しかし「DB Watch」の利用によって、その商品がトライアルで買われているのか、リピートされているのかが把握できるようになったため、本当に人気のある商品はどれなのかが容易に特定できるようになった。また、年代別の人気商品も明確になったため、「大人のおやつ」など、特定の年齢層をターゲットとする商品開発に大いに役立っているという。さらに新商品についてのアンケートなども、購買客をピックアップして、正確性とスピード感をもって実施することが可能になった。
 One to Oneのコミュニケーションの実現のためには、正確な顧客データが必要。CCCが保有するデータは定期的に更新されており、この規模のものとしては国内で最も優秀なデータベースと同社は評価している。将来的にはそれぞれの会員の特徴をプロットして、優良顧客の共通因子を割り出し、販促を打っていくことも考えているという。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年1月号の記事