多彩なメニューで会員の主体的な活動をサポート

(株)ニコン イメージング ジャパン

日本の写真文化への貢献を目指して設立されたニコン製品の愛用者の組織「ニッコールクラブ」は、今年で60 周年を迎えた。著名な写真家を顧問に据え、多彩なサービス・メニューで会員の主体的な活動をサポートし、熱心なファンの育成につなげている。

日本の写真文化への貢献を目指して

 第二次世界大戦が終結し、日本人の生活が豊かになろうとしていた昭和27(1952)年9月、現在の(株)ニコンの前身である日本光学工業(株)が開発したカメラ用交換レンズ「ニッコール」の名声は世界中で評判を呼んでいた。ニッコールクラブは、そうした多数のニコン製品愛用者からの、親睦機関を設けてほしいという要望に応えて発足された。新聞・雑誌関係者をはじめ、日本を代表する写真家、彫家、映画俳優、実業家、大学教授などが発起人となり、マーケティング戦略からはやや離れ、純粋にわが国の写真文化への貢献を目指してのスタートだった。
 同クラブにはプロ、アマの区別なく入会することができ、5人の著名写真家が顧問として会員の指導に当たる。会員数は非公開であるが、会員ナンバーを参照してみると、これまでの登録数は延べ22万4,000人に上っている。会員になるには、製造番号が記載されているカメラ・レンズなどニコン製品を購入し、会員登録をすることが必要だ。入会促進は主に、一眼レフカメラや一部の高性能レンズなどの製品パッケージに入会案内を封入して行っているが、近年はインターネットなど、写真を楽しむ環境が大きく変化していることから、今後はカメラ初心者やファミリー向けのコンパクトカメラにも案内を封入することを検討するという。入会申込は、この入会案内に付いている申込書、または同クラブのWebサイトから受け付けており、申込者には会員証と会員バッジが送付される。
 会員は入会金および年会費を支払い、毎年4月に更新となる。入会金は525円、年会費は正会員が5,250円、後述する会報誌、アニュアルレポート『ニッコール年鑑』の送付を受けないWeb会員は2,100円だ。
 同クラブは会員の年齢層が高いのが特徴で、60代後半が最も多く、90代の会員もいる。性別では男性が圧倒的に多いが、最近では熱心な女性会員が増えているといい、技術の上達も早く、後述するフォトコテストの入賞者にも女性が目立つようになってきた。また、若年層の割合も上昇傾向にあるという。格調高く親しみやすさに欠けるといった印象を持たれがちな同クラブであるが、クオリティの高さを維持しつつ、新たな会員を獲得していきたいと考えている。

多彩な特典を用意

 会員には多彩な特典が提供される。
 まず年4回、開催される同クラブ主催の会員向けフォトコンテストへの参加。これには毎回、数千点に上る応募があり、約100点の入賞作品が選ばれる。また、このフォトコンテストの入賞作品を掲載したフルカラー、100ページ以上に及ぶ会報誌を年4回、発行し、会員に送付している。
 フォトコンテストについては、会員以外も応募できる「ニッコールフォトコンテスト」を年1回実施。これは国内外で開催されている同様のコンテストと比較しても、応募総数も4万点以上と非常に多く、作品レベルも高い。このコンテストに入賞することを目標にしている写真愛好家は数多い。こちらの入賞作品はアニュアルレポート『ニッコール年鑑』としてハードカバーの出版物にまとめられ、会員に届けられる。
 会員限定の撮影会やゼミ講演会などのフォトイベントも、全国各地で毎月のように開催されており、例えば関東では1,000名以上、関西ではおよそ500名の参加者を集める。日帰りから1週間程度の日程で行われる国内外の撮影ツアーも人気で、常連の参加者が多い。これらのイベントは、会員同士、あるいは指導に当たるプロ写真家やスタッフと会員との貴重な交流の場であり、クチコミ発生の起点ともなっているという。
 また会員は、新宿と大阪にあるニコンサロンBisにおいて、1週間の写真展を無料で開催することができる。ただしこれには、ニッコールクラブ顧問のプロ写真家による厳しい審査を通ることが必要だ。
 そのほか、修理割引や、別部門が担当している講座「ニコンカレッジ」の受講料割引などの特典もある。
 加えて、入会1 ~ 2年目の会員は、別途有料で、日本写真家協会(JPS)所属等のプロ写真家による添削指導を受けることもできる。現在、対象会員の2割ほどがこれを利用しているが、利用者の満足度は非常に高いという。同クラブは3年継続すると、それ以降の定着率が高くなることから、添削指導はファンを固定化させる上でも重要なものと位置付けられている。
 さらに同クラブにはそれぞれの地域に根付いた支部があり、現在、韓国や台湾を含む約115の支部が活動中だ。同クラブは支部の希望に応じて、顧問を派遣して指導に当たるなどのサポートを行う。各支部の連絡先は会報誌に一覧を掲載するなどして案内しているが、現在、全会員のおよそ1割が支部に属しているという。メンバーが20名以上揃えば支部の申請ができるが、同クラブでは新しい支部の立ち上げを積極的に支援。活動を休止する支部もあるが、新たに誕生する支部もあり、ここ数年、支部数は、ほぼ一定しているとのことだ。

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「新しい写真の世界」をテーマに福岡で開催された、九州ブロックのゼミ講演会の模様

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関東ブロックで実施されたモデル撮影会の様子

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海外撮影ツアーで訪れた、南フランス・ゴルド村での撮影の様子

長いファンを大切にしながら新しい層にもアプローチ

 同クラブは60周年を迎えた今年、創立当初からメンバーである創立会員に対して永年継続表彰を行う。この方々を含め、同社には長年の根強いファンが多いが、一方、時代の移り変わりとともにフイルムカメラからデジタルカメラにシフトしたことなどに伴って、かつて熱心に活動していた会員が離れていくケースも見られるという。しかし、映像のデジタル化といった技術革新に合わせて変化しなければ、企業として生き残ってはいけないのである。
 新しい時代に対応して、同クラブではWebサイトに会員専用ページを設けて会報の内容などを閲覧できるようにしたり、企業ブログで新製品情報を紹介したりしている。また、老舗フォトコンテストとしては珍しく、今年からフォトコンテスト全部門へのWeb応募を可能にした。これは、初心者のフォトコンテスト参加を促進し、若い会員を増やすための施策でもある。また、初心者を取り込む施策としては、前述の「ニコンカレッジ」などと連携して、カメラの使い方などの学習環境の提供にも力を入れており、ニコン製品愛用者への顧客満足度のアップにもつながっているようだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年7月号の記事