(株)オリエントコーポレーションでは2006年12月から、モバイル向け会員制コミュニティーサイト「あそラボ」の運営を開始した。これまでに延べ20万人以上の会員を集め、エンターテインメント性の高いコンテンツを提供。クレジットカードホルダー予備軍である中高生・大学生に同社に対する認知度向上を図っている。今後は同社のマーケティング・CRM戦略全体における装置のひとつとしての側面も強化する方針だ。
エンターテインメント性の高いモバイル向け会員制コミュニティーサイトを運営
業界トップの業績を誇るオートローンやショッピングクレジット、クレジットカードのほか、EC決済ソリューション、ガス料金や不動産賃貸、通信・通話料金の収納、各種保証商品の販売など、さまざまな分野で顧客ニーズを重視したサービスを提供する(株)オリエントコーポレーション(以下、オリコ)。同社では2006年12月から、モバイル向け会員制コミュニティーサイト「あそラボ」の運営を行っている。
「あそラボ」という名称は、「遊びの研究所(Laboratory)」を由来とするもので、「あそラ盆地に住む浅生蘭坊博士が、日々遊びの研究をしている」という設定がなされている。待受画像や写真フレームのダウンロードや、ゲーム、心理テスト、タロット占い、携帯小説など、エンターテインメント性の高いコンテンツを中心に構成される会員制コミュニティーサイトであり、入会時にはモバイルのメールアドレスや生年月日の登録が必要となる。
各種コンテンツについては内容の充実度を重視している。例えば一般的にケータイ小説は素人作家によるものが多く、文章レベルや完成度が低いものも少なくないが、「あそラボ」では女優と作家を兼ねる西山繭子氏などプロの作家を起用。サイト上での掲載を完了した作品は単行本として刊行されるほどだ。
「あそラボ」では「あそラボポイント」というポイント制度を設けており、一部コンテンツの利用にはポイントが必要となるが、ポイントは会員登録時に100ポイントが付与されるほか、アクセスごとに1ポイント、ゲームのクリアや友人紹介などで一定のポイントが進呈される仕組みになっており、利用は基本的に無料だ(別途パケット通信料は必要)。
なお、「あそラボ」の運営はスタッフ3名で行っているが、これらのスタッフは「あそラボ」専任ではなく、同社のWeb関連業務全般を担当している。従って、少ないヒューマンリソースの中でいかに充実したサイトを実現するかが恒常的なテーマとなっている状況である。
クレジットカードホルダー予備軍である中高生・大学生の認知度・好感度向上を目指す
「あそラボ」運営の基本的な目的は、クレジットカードホルダー予備軍である中高生や大学生の同社に対する認知度や好感度を向上すること。「オリコ」という色は出さず、「気が付いたらオリコというブランドに親しみを感じていた」という状態が理想だ。
また、ケータイ小説により若年層の活字離れ防止を図ったり、エンターテインメント性の高いコンテンツに交えてクレジットカードの基本的知識を提供するコンテンツ「カードの教室」により将来的な正しいクレジット利用のための啓蒙を行ったりといった、一種の社会貢献という意味合いもある。単なるエンターテインメントではなく、「遊びながら、学べる」ということを目指しているのである。
さらに最近ではビジネスへの連携も考慮しつつあり、クレジットカード対象年齢に達した会員やその周辺の生活者に同社の公式Webサイト(PC版、モバイル版)への誘導や、サイト上のキャラクターの外部メディアでの展開なども検討している。
延べ会員数は20万人以上に
同サイトは非営利のコミュニティーサイトであり、外部企業の広告なども掲載していないため、新規会員の獲得に関しては、運営開始当初からあまりコストを掛けないことが基本となっている。公式Webサイトでの訴求以外では、ひたすらコンテンツの充実化を図り利用者の満足度を高めることで口コミや紹介を誘発し、運営開始から数カ月後には会員数10万人を突破。現在までの延べ会員数は20万人以上に達している。なお、会員獲得が比較的順調であった要因としては、NTTドコモ、au、ソフトバンクのいわゆる三大キャリアの「カード、クレジットカード」カテゴリにおいてランキング上位に位置付けられ、一時はすべてのキャリアで1位となる「三冠」を達成したことも大きかったようだ。
既存会員の利用促進においても、基本的にはコンテンツの充実化が最大の施策である。特にサイトのフレッシュさを保つために更新頻度を重視しており、例えば占いコンテンツについては毎日、ケータイ小説については毎週月・木曜日に更新しているほか、ゲームコンテンツなども月1回は更新している。そのほか、メールマガジンを毎週木曜日に配信するなどして、利用促進に努めていることにより、同サイトへのアクセスは月間平均40万PVに及んでいる状況だ。
マーケティング・CRM戦略上の装置としての側面も強化
同社では現在、2007年10月に設置した「CRM開発推進部Web・CRM推進チーム」を中心に、以前はチャネル別展開の傾向が強かったマーケティング・CRM戦略について、顧客を軸とするかたちに統合し、顧客対応に関してPDCAサイクルを回していける体制の確立に取り組んでいる。「あそラボ」は前述の通り、クレジットカードホルダー予備軍の認知度や好感度を向上することを主目的とし、エンターテインメント性の高いコンテンツを中心に構成したモバイル向けコミュニティーサイトであるが、今後については基本的なコンセプトは維持しながら、同社のマーケティング・CRM戦略全体における装置のひとつとしての側面も強化していく方針だ。その具体的な方策としては、例えば「あそラボ」上で流通している「あそラボポイント」を、会員やその家族のクレジットカードのポイントに移行する仕組みの構築などを検討している。
クレジットカード業界では、ファーストカード(初めて作ったカード)がメインカードとなる傾向があることなどから、同社としても若年層会員の獲得に注力しており、デザインカードを数多くラインアップしたり、年会費1,950円のゴールドカードを発行したりするなど、さまざまな施策を講じている。一方で、それら若年層が利用するメディアとしてモバイルの位置付けはますます高まっており、例えば同社の公式Webサイトからの入会申込数を見ても、モバイルサイトからの数がPCサイトからの数と同等以上になっている。
このような状況の中で、マーケティング・CRM戦略上の装置として、モバイル向けコミュニティーサイトとして人気・評価が高い「あそラボ」の有効活用を図ることは当然の帰結とも言えるが、ビジネス色を前面に出してしまえば、人気や評価の源泉となっている「あそラボ」の基本的性格を変えてしまうことにもなりかねない。同社ではこのような認識から今後、「あそラボ」とビジネスへの連動性強化を慎重に進めていく意向だ。今後、同社が「あそラボ」について、いかにエンターテインメント性を維持しつつ、ビジネスへの本格的な活用を実現できるか、大いに注目されるところである。
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