CS(顧客満足) NO.1を目指す 「コンパックカスタマーセンター」

コンパック (株) 

集中型カスタマーセンターで一貫したサポートを提供

 コンパック(株)では、今から7年前の1990年9月に日本法人を設立、パソコンの日本での出荷開始と同時にカスタマーサポートセンターを開設した。開設当初からフリーダイヤルを導入し、顧客への電話による問い合わせ受け付けに当たってきた。3年前からは6本のフリーダイヤルでカスタマーサポートに当たっている。その内訳はシステム製品、デスクトップ製品、ノート製品などプロダクトラインにかかわらず、ハードウェア全般の操作方法や技術的な質問に応える「カスタマーセンター」(0120-101589=とってもいいねコンパック)、個人ユーザー向けパソコン、プレサリオ・シリーズ専用の「プレサリオサポートセンター」、ダイヤルQ2による「ダイヤルQ2テクニカルサポート」、製品にインストールされているソフトウェアのパックアップ・メディアの注文窓口である「オーダーセンター」、修理サービスを受け付ける「クーリエセンター」と「Windows95」に関するサポートを専門に行う窓口「ソフトウェアサポートセンター」である。いずれの窓口も会員制はとっておらず、顧客、見込客にかかわらず誰でも利用することができる。

カスタマーセンターのフリダイヤル番号が記載されているコンパック(株)の製品カタログ カスタマーセンターのフリダイヤル番号が記載されているコンパック(株)の製品カタログ カスタマーセンターのフリダイヤル番号が記載されているコンパック(株)の製品カタログ

カスタマーセンターのフリダイヤル番号が記載されているコンパック(株)の製品カタログ

 「ダイヤルQ2テクニカルサポート」を除くすべての窓口はフリーダイヤル。電話の受付時聞は平日の午前9時から正午までと、午後1時から5時まで。さらに「ダイヤルQ2テクニカルサポート」に限っては、土・日・祝日も受け付けを行っている。問い合わせ受付窓口の電話番号は、雑誌などに出稿する商品広告、ホームページ、マニュアルで告知している。
 「オーダー」「クーリエ」以外の電話は、コンパック本社に置かれたカスタマーサービス本部カスタマーセンターで一括して受けている。カスタマーセンターを1カ所に集中させているのは、一貫したサポートを提供するため。製品情報にしても顧客情報にしても、どんなに先進的なシステムを構築しようとも、やはりスピードと正確さの両面で肉声でのコミュニケーションに優るものはない。開設当時、3~4名だった専任スタッフも、今では約80名。創立当初からカスタマーサポートに携わってきた野田敏樹氏(カスタマーサービス本部 カスタマーセンター部長)は「拡張、拡張の歴史でしたね」とこれまでを振り返る。スタッフは受付内容ごとに、カタログ・ユーザー登録、ノートブック、デスクトップ、サーバー、ワークステーション、ネットワーク機器、トレーニング、バックアップディスケットと、プレサリオ、Windows95、ダイヤルQ2の11のチームに分かれ、シフトを組んで対応に当たっている。スタッフ数は、各チームの平均コール数に応じて配分されている。これらのチームが密に連携して、スピーディ、かつ確実なサポートを実現しているのである。

「プレサリオ」導入にともなうサポート層の変化

 同社のカスタマーセンターにかかってくる電話は、広告出稿状況によっても異なるが、1日に1,000件~ 1,500件といったところ。
 同社では、ビジネス・ユーザーかパーソナル・ユーザーかによって窓口を分けることはしていない。しかも、顧客はもちろんのこと、見込客からの購入前相談も同一窓口で受け付けているため、どの窓口でも問い合わせ内容は多岐にわたっている。大まかに言ってビジネス・ユースの多い製品ほど購入前相談が多く、平均通話時間は短い。パーソナル・ユースが多い製品ではまったく逆の傾向が現れる。デスクトップでは80~90%、サーバーではほぼ100%近くが企業ユーザー。この2つの問い合わせのうち50~60%が購入見込客からのものである。一方、ノートブックは企業ユーザーと個人ユーザーが約半数ずつの割合。「プレサリオ」では個人ユーザーが9割を占める。したがって、こちらはほとんどが購入後の操作方法などについての相談だ。その具体的な内容は、デスクトップではNTなどのネットワーク関連やハードウェア増設に関するもの、サーバーではシステム構成やオプションについての問い合わせが多い。またノートブックでは企業ユーザーからはネットワーク管理に関する問い合わせが多く、個人ユーザーではインターネット接続に対する問い合わせが中心になる。
 電話の対応時聞は、デスクトップ、サーバーで4分、ノートブックで6分、プレサリオで8分程度だ。ただし、初心者は、だいたい10~ 20分かかるのが普通。個人ユーザーが多くを占める「プレサリオ」、ノートブックにはかなりの長時間におよぶ電話も少なくない。
 同社設立当初は、取扱商品のほとんどが企業向けであったため、サポートセンターにかかってくる電話も、パソコンに詳しい“パワーユーザー”からのものばかりであった。だが、“コンシューマ製品”(家庭向け、個人向け)である「プレサリオ」の市場への投入以後、個人ユーザー、その中でも初心者の割合が増え、サポート層が大きく変化している。

全方位をカバーするサポート体制を目指して

 ダイレクトに販売まで行うパソコンメーカーとは異なり、同社の「カスタマーセンター」は単なる技術サポート以上の意味を持っている。「私どもはディーラーを通して間接的に製品を販売しているため、カスタマーセンターはエンドユーザーとの唯一の接点。そういった観点から、カスタマーセンターに寄せられる声の重要度は高い」(野田氏)。
 それだけに、電話対応スタッフの教育体制にも力が入る。新人スタッフはまず、1カ月の研修プログラムをこなす。その内容は、コンパック製品の詳細な知識、会社の基本理念や方針などだ。その後、各チームごとに分かれてチームリーダーの下でモニタリング等を行い、徐々に現場に慣れながら実務に入る。「コンピュータに詳しいというだけでは不十分。電話を通して、お客様が本当に知りたいことを伝えられるようになることが必要です」(サービス&サポート本部コンパック・ケアセンター 主任 堀内ひろ子氏)という言葉からも、同社が顧客との電話でのやり取りから微妙なニュアンスを汲み取ることを主眼とした研修に力を入れている様がうかがえる。初期研修以外にも、折に触れ、電話対応が終了する午後6時以降に希望者を対象に自己啓発セミナーを開催している。また、新製品の発売に際しては、その1カ月前に必ず全員参加の研修を実施してしいる。
 電話を受け付けたオペレーターの判断で、カスタマーセンターに寄せられた問い合わせのうち、重要と思われるものは、データとして蓄積していく。トラブルはもちろん、コールバックや資料送付等の事後処理を必要とする顧客情報はすべて入力される。さらにこうして蓄積されたデータを、チームリーダーがチェック。頻繁に寄せられる問い合わせには対処方法のガイドラインを作成し、研修などの場を通じてスタッフ全員に徹底している。その他販売店に対しても同様の情報を提供。顧客対応の一助として活用されている。
 また、同社では、さらなるクオリティ・アップのために、外部に委託してカスタマーセンタ一利用者への調査を実施している。スキル面では“まずまず”だが、電話のつながりやすさという面では“まだまだ”というのか調査結果への認識だ。唯一、フリーダイヤルではない「ダイヤルQ2テクニカルサポート」は、現在のところ話し中はなく、確実につながる窓口であり、現在1日に数十件程度の電話が受け付けられている。こちらにかけてくるユーザーは、たいてい問題を整理してから電話してくるので、オペレーターも答えやすく、応対時間も短い。利用者の評判が良いため、今年の10月からは日・祝日の電話受付も開始した。今後は、自社製品であるハードはあくまでも無償サポート、他社製のソフトはQ2による有償サポートに集約していきたいとしている。
 同社のカスタマーサポート窓口には、ほかにも、保守契約を結んだ法人会員専用の24時間対応電話窓口、FAXでカタログ請求や、製品スペック、価格表、販売店リスト等の情報が24時間取り出せる「Compaq FAX station」、パソコン通信NIFTY Serveのフォーラムで、24時間、公開質問を受け付けている「NIFTY Serve LAN Vendor Station A」などがある。また、インターネットのホームページでも、数多く寄せられる質問への回答を公開している。アクセス件数は、FAXが月2万~3万件、インターネットが月12万件、NIFTY Serveが月7,000件ほどである。NIFTY Serveのフォーラムは、リアルタイムで寄せられる質問に対して一般公開のかたちで同社が回答する形式。一度に多くの人の目に触れるため、“1対n”の相談に応じる効果がでていると同社は考えている。
 同社は、世界市場ではN0.1(データクエスト・ジャパン調べ)、日本市場においては3.4%のシェアを占める(IDCJapan調べ)コンピュータ・メーカー。「“コンピュータ・カンパニー”としてコンピュータを全方位的にカバーできる体制を整え、CS(顧客満足)N0.1を目指したい」(野田氏)と、今後も積極的にカスタマーサポートの充実を図っていく構えである。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年12月号の記事