独自性の高い個性的なショッピングモールを目指す

(株)47CLUB

全国の地方新聞社が集まり、地域の良質で信頼できる商品を厳選して紹介するインターネット上のショッピングモール「47CLUB」(よんななクラブ)。WebサイトではSaaS型のレコメンドソリューションを導入し、Webパーソナライゼーションに取り組んでいるが、運営会社である(株)47CLUBでは、まだまだその成果に満足していない。今後、より個性的なショッピングモールづくりを行う中で、パーソナライズについてもさらに強化し、会員一人ひとりに明らかに異なるトップページが表示されるような状況を目指していく。

地域の良質で信頼できる商品を厳選して紹介するショッピングモール

 2007年4月に開設された「47CLUB」(よんななクラブ)は全国の地方新聞社が集まり、地域の良質で信頼できる商品を厳選して紹介するインターネット上のショッピングモールだ。正式名称は「47 CLUB」。「47」は日本の都道府県数47に由来しており、全体として各地域を代表する商品が集まるサイトであることを表現している。なお、現在の運営は地方新聞社46社の任意組合であるデジタルビジネスコンソーシアム、および(株)電通、(株)サイバー・コミュニケーションズの出資により2008年7月1日に設立された(株)47CLUBにより行われている。
 2008年9月現在、「47 CLUB」への参加店舗数は約600社。いずれも全国の地方新聞社がそのネットワークを活かして開拓した、その地域の厳選した逸品を取り扱う店舗だ。
 商品ジャンルとしては、飲料などの食品が中心。そのほか、家具や食器、文具、美容・健康用品、衣料品、趣味用品など、幅広い商品が取り扱われており、アイテム数は8,000商品以上を数える。オンラインショップでは比較的高単価で粗利が高い商品でないと成功が難しいと言われている中、良質で地域ならではの個性ある商品であれば、低単価・低粗利であっても取り扱っている点が特徴だ。その意味では、インターネットに取り組む意欲がありながら、これまで実践することが難しかった地方の中小規模の商店を応援するショッピングモールであるといえる。
 会員登録には特に加入条件などは設定しておらず、属性情報などを入力すれば誰でも会員になることができる。現状では、地方紙の紙面での告知により同サイトを認知する人が多いことの影響か、類似の他サイトと比較すると40~50代の男性層の比率が高く、男女比はおおよそ6:4となっている。ちなみに、地方紙での告知以外の同サイトの認知経路は、各地方新聞社のWebサイトやフリーペーパーなどのサブ媒体、取材を受けた外部のマス媒体、アフィリエイト・プログラムなど。なお、会員に対してはメールマガジンを同社から週1回、各地方新聞社から週2回配信。コミュニケーションを深めるとともに、Webサイトへの訪問を促し、リピートオーダーにつなげている。
 インターネット上のショッピングモールでは、一般に絶対的な商品数に基づく網羅性や低価格性などが差別化ポイントとなっている。しかし、「47 CLUB」はこのような傾向とは一線を画している。さまざまな分野で東京一極集中が進み、「良いものは東京に集まる」という認識が一般化する中、「地方ならではの逸品がまだまだ数多く存在する」と考え、あくまでも地方新聞社ならではの情報網によって発掘した、それぞれの地元ならではの個性的な商品の魅力やストーリー性で差別化を図っているのだ。

SaaS型のレコメンドソリューションを導入

 「47CLUB」のWebサイトでは、(株)ホットリンクが提供するSaaS型のレコメンドソリューション「レコナイズ」を導入。各ページに、ユーザーのアクセス履歴や購入履歴などに合わせてきめ細かく対応するアルゴリズムを組み込んでいる。中でも画期的なのは、ログインしていないユーザーにもパーソナライズされたマイページを提供するというレコメンド施策であり、これにより、ユーザーは目的とする、あるいはそれに近しい商品に簡単にたどり着けるようになっている。
 具体的にはトップページに「あなたが最近チェックした商品」を表示。さらにマイページには過去のアクセス履歴や購入履歴などから導き出した「お客様にオススメの商品」も表示している。
 そのほか、ショッピングカートページでは、購入商品と関連性の高い商品をレコメンドすることにより、「ついで買い」を喚起。また、贈答先を登録できる機能も備えている。
 このようなかたちでWebパーソナライゼーションに取り組んでいる同社であるが、その成果にはまだまだ満足していない。現状では、全閲覧者に共通の商品カテゴリーごとの「人気商品」を加えた、すべてのレコメンドを経由した注文が全体の3~5%にとどまっているからだ。
 同社では、前述のとおり同サイトの差別化ポイントは、それぞれの地元ならではの個性的な商品の魅力やストーリー性にあると認識している。従って、サイトに訪れたユーザーがサイト側からのおすすめや提案によって商品を購入するという購買行動を喚起させることが理想となる。その中でレコメンド経由の注文の現状には、大いに不満を感じており、その改善が大きなテーマとなっている。

47CLUB

地方ならではの逸品を全国各地から8,000商品以上、取りそろえる47CLUBのWebサイト

ビジネス規模の拡大に応じて徐々に理想のWebサイト実現を図る

 同社では、レコメンド経由の注文が少ないことの原因について、「見せ方の工夫が不足している」と認識。現在、2009年春をめどにリニューアルに取り組んでいる。
 リニューアルが目指すところは、大手ショッピングモールなどとは一線を画す個性的なショッピングモールだ。
 具体的には、大手ショッピングモールが追求する検索性などの使い勝手よりも、掲載店舗・商品の魅力がすぐに伝わる「見せ方」にこだわっていく。特に同社や各地方新聞社、さらに同サイトの趣旨に賛同する著名人などの推奨の理由やポイントを最大限伝えることに注力していく意向である。
 その中で、もちろんパーソナライズについてもさらに強化し、最終的には、会員一人ひとりに明らかに異なるトップページが表示されるような状況を目指しているが、その実現のためには相当のコストが必要となる。2008年度の売り上げは、前年同月比150~200%という状況が続いており、比較的好調と言えるが、ビジネスの規模はまだまだ成長途上にある。従って、ビジネス規模の拡大に応じて段階的に投資を行い、さらにユーザーの意見なども聞きながら、徐々に理想とするWebサイトの実現を図っていく考えだ。同時に現状では一律配信しているメールマガジンについても、パーソナライズすることで、Webサイトとの連携をさらに強化していく方針である。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年11月号の記事