新CRMシステムときめ細やかなオフィス作りでお客様とコミュニケータの満足を創出

アスクル(株)

「お客様のために進化する」という企業理念をコールセンターにうまく反映させているアスクル。現在同社では、新CRMシステムをベースに、コールセンターで働くスタッフの満足度を高めてお客様満足度の向上につなげる、そんなエクセレントなコールセンターを目指す挑戦が続いている。

新CRMシステムをバックボーンとするCRMの新しい拠点づくりを推進

 1993年3月より、オフィス用品の通信販売を開始したアスクル。同社の企業理念は、「お客様のために進化する」。この理念をコールセンターに反映させるために、同社では1997年にCRMシステムを導入。さらには、お客様の声の象徴とも言えるお問い合わせセンターを中心に配した独創的なオフィスを構築するため、本社オフィスを東京・辰巳に移転。常にB to B通販における先進的な取り組みを行ってきた。そんな同社が、このたび12億8,000万円を投じてCRMシステムを刷新。2006年1月、東京・新宿に開設した「アスクル コンシェルジェデスク」への新システム導入を皮切りに、「辰巳お問い合わせセンター」など他拠点での稼動を開始した。
 同社ではビジネス開始以来、新規営業開拓・代金回収業務を担うエージェント(販売代理店)、サプライヤー、配送パートナー、などアスクルサービスを支えるパートナー企業全体を「大アスクル」ととらえ、アスクルとパートナー企業を結ぶ情報基盤「eプラットフォーム」を構築(図表1)。パートナー企業との情報共有による円滑なコミュニケーションを強みに、お客様のニーズを反映した豊富な品揃えとスピーディーな配送により順調に業績を伸ばしてきた。近年は、事務用品やOA/PC用品といった従来のオフィス生活用品の提供にとどまらず、オフィスのプランニングサービス、飲食店や医療・介護施設向けなど、特定業種を対象としたデリバリーサービスも展開している。

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 こうした事業拡大に伴い、お客様からの問い合わせ内容に、多様化、個別化などの変化が見られるようになってきた。そこで同社は、これら問い合わせの変化に俊敏に対応することがビジネスの優位性獲得につながると考え、都内2カ所にある既設センターの一部を吸収するかたちで、「アスクル コンシェルジェデスク」の開設に踏み切った。
 お客様と対面する機会のない通信販売において、お客様に安心して購入していただけるよう、誠意と信頼性のある問い合わせ応対をすることは、これまでも実践してきたところであるが、「アスクル コンシェルジェデスク」は、新CRMシステムをバックボーンに、同社が追求する新時代のホスピタリティを具現化する将来モデルとして設計。お客様の要望に沿った、高品質な問い合わせ応対サービスの提供を目指している。

フロント機能を高めるために不可欠な強靭なバックヤード

 新CRMシステムは、「PeopleSoft Enterprise CRM」を基盤に、膨大な情報の検索性と閲覧性の向上、ナレッジの効率的な共有によるコミュニケータの業務支援を推進するもの。コミュニケータ用のモニターを2つ用意し、ひとつは情報照会用、もうひとつは情報処理および入力用として機能を分散。これにより、操作性の向上を図り、ストレスの軽減に努めた。
 お問い合わせセンターには、1回の問い合わせで複数の質問が寄せられることが多く、回答に必要な情報へたどり着くにはナレッジベースの深い階層まで掘り下げなければならないケースもしばしば。その結果、お客様の待ち時間が長くなり、コミュニケータは焦りを感じながら応対することもめずらしくなかった。システムを改善し、これを解消することができれば、コミュニケータにゆとりが生まれて、よりお客様に注意や配慮を向けられるようになる。また、今まで以上に迅速で的確な応対が可能となり、生産性も高まる。「サービスの品質と生産性を両立させることは、お客様満足度向上につながるだけでなく、自分たちにとっても働きやすさというメリットをもたらす」(インテグレイテッド・カスタマー・レスポンス執行役員CRM担当 梶川伸一氏)のだ。
 しかし、いくらコールセンターですばらしい応対をしても、ほかで足を引っ張るようなことがあれば台無しになる。また、有効なログを残しても、その後の活用がなければコミュニケータのモチベーションが上がらず、新CRMシステムの真価を発揮することはできない。コールセンターの“幸せ”を実現するには、強靭なバックヤードが不可欠なのだ。同社では、新CRMシステムの導入に先んじて、サプライヤーとのマーケット情報共有システム「シンクロマート」、エージェント営業支援システム「シンクロエージェント」を開発、「eプラットフォーム」を構築することでバックヤードの強化を図ってきた。

コミュニケータはコンシェルジェ

 コールセンターで実現するお客様満足度を考えるとき、システムによる応対支援と並ぶキーファクターとなるのが、従業員満足度である。同社では、コミュニケータのモチベーションを高めるためには、コミュニケータ自身が自分はコンシェルジェであるという自覚を持つことが不可欠と考え、その演出、つまりコールセンターの環境づくりに力を注いだ。
 「アスクル コンシェルジェデスク」のオフィス空間は、本社にある「辰巳お問い合わせセンター」と同様、お客様からの問い合わせを集約する円形の執務スペースを中央に配し、お客様に対して真摯に向き合う姿勢を具現化。オペレーションブースはゆったりサイズで、デスクにはさわやかなホワイトを採用。48階というロケーションを活かして、デスクの向こうに青い空が続いて見える開放的な眺望である。その様は、まさに都会の額縁絵。また、什器の中でも、コミュニケータが長時間座る椅子には最高のものをしつらえた。このほか、モニタリングルームや休憩室にも細心の注意を払ったという。「働く環境を整えることで、コミュニケータの気持を盛り立て、コンシェルジェマインドが醸成されることを期待している」と、梶川氏は語る。
 その期待通り、コミュニケータたちの反応は上々で、大変満足しているという。特に他社のコールセンターでの勤務経験があるスタッフからは、驚きの声が上がったほどだ。
 今回の新CRMシステムの導入は、まだ序章に過ぎない。今秋には、第2ステージに突入し、さらに機能を高め、新CRMシステムを稼動させる計画だ。梶川氏は「導入からわずか1週間で、視認性、操作性の高さを実感した。第2ステージについては詳細を紹介することができないが、さらなる効果が得られるだろう」と、大きな期待を寄せている。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年3月号の記事