(株)ららぽーとのショッピングセンター事業の中核である「TOKYO-BAYららぽーと」には、年間延べ約2,200万人が来館する。そこで同社では、優良顧客獲得のためのツールとして2001年4月、会員向けポイントカード「ららぽいんと」の発行を開始。2002年4月には、ららぽいんとのサービス機能を進化させた会員限定の情報配信サービス「ららなび」をスタートした。
優良顧客獲得のためのツールとしてポイントカードを発行
全国18のショッピングセンター(SC)と6つのアウトレットパークを手掛ける(株)ららぽーと。同社のショッピングセンター事業の中核である「TOKYO-BAYららぽーと」は、敷地面積約17万㎡、テナント数540店舗で、年間延べ約2,200万人を集客する、国内最大規模の商業施設である。
ららぽーとは、「日本初の広域・郊外型SC」と言われ、1981年4月の開業以来、「ららぽーと2」(1988年3月開業)、「ららぽーと3」(2000年4月開業)、「ららぽーとウエスト」(2001年9月開業)、「ららぽーとイースト」(2004年11月開業)と、増床・リニューアルを重ねて規模を拡大してきた。「買う、見る、遊ぶをひとつの場所で」という現在のショッピングセンターのコンセプトはここから始まっており、ファッションから映画までのアミューズメントや、グルメゾーンまで、多彩にゾーニングされたテナントで構成されている。さらに複数のイベントスペースが設けられ、毎週必ず何らかのイベントが催されている。そのほか、昨年度はインテリアやペットなどの大型専門店、テーマパーク「東京パン屋ストリート」を導入した。大型リニューアル以外にも、常に年間1割のペースでテナントの入れ替えを行っているという。
こうした同社の取り組みは、せっかく集客してもテナントにお客様を誘引する仕掛けや対応ができていないとショッピングセンターとしては成り立たないという認識のもと、テナントと一体になってお客様に満足いただける商品・サービス・情報を提供することに注力している表れと言えるだろう。
しかし、近年、生活者の価値観や消費志向が多様化すると同時に、同業態間に限らず、異業態との競合も激化。従来の広告やチラシといったマス展開のみに依存していたのではビジネスの活性化には限界が生じることから、優良顧客をいかに獲得し、維持するかが重要なポイントになってきている。
そこで同社では、優良顧客とのコミュニケーション・ツールとして、2001年4月から会員向けポイントカード「ららぽいんと」を発行。現在、「ららぽいんと」会員は、同ショッピングセンターだけで、約57万人に達しており、大宮や広島などの施設を合わせると約89万人を数える。
会員限定の情報配信サービスをスタート お客様個々にパーソナル・メッセージを配信
「TOKYO-BAYららぽーと」では、2002年4月から、ららぽいんとのサービス機能を進化させた会員限定の情報配信サービス「ららなび」をスタートした。これは、ららぽーと館内に設置されているキオスク端末「なびスコープ」に、ららぽいんとカードを入れるだけで“あなただけ”に向けた情報やクーポンが手に入る仕組み。つまり、お客様にお気に入りの店やレディース・ファッション、小物といった気になる項目を登録していただくと、お客様一人ひとりにカスタマイズされた最新のパーソナル・メッセージを配信する。また、「ららなびWebサービス登録」をすれば、お客様のパソコンでも「なびスコープ」と同じ情報が見られる。さらに、eメールアドレスを登録すると、パソコンや携帯電話にお客様一人ひとりにお得な情報を配信するというものだ。
ポイントカードというと、ポイントの付与だけに目がいきディスカウントの一形態になってしまうケースが多いが、同社マーケティング部長の前田兼生氏は、「年代や性別、どこにお住まいなのか、購買行動など、マーケット調査を行うよりも、生の消費動向を見ることができる。さらに、お客様一人ひとりの購買行動を分析し、品揃えや店作りも含めて“ららぽーとにお越しいただければ、お気に入りの商品・サービスが受けられます”という情報を発信できます」と語る。
同社では、メッセージの配信媒体や配信内容を各テナントで作成することができる環境を整備。ららなび用の情報配信ツールをインストールしたパソコン (PC)を希望するテナントにレンタルしている。レンタルPCの利用率は当初テナントの10%程度だったが、現在では300近くのテナントで活用されているという。顧客情報は各種属性・嗜好・購買実績によってカテゴリー分けされており、テナントはレンタルPCから同社のCRMサーバにアクセスし、例えば、優良顧客、新規客と見込客などの条件で顧客を抽出したり、配信対象を分析・検討できる。そして、各テナントが作成したメッセージを同社で加工し、週1回の割合でお客様一人ひとりに配信している。
「ららなび」運用開始時は30%台だったポイントカードでの売上構成比が、現在では約60%に達しているのは、お客様にとって価値あるカードになってきている証明。一方、テナントの中には優良顧客の2ケタ増や、売り上げの5~10%アップにつなげているところもあるという。
来館客は、キオスク端末「なびスコープ」にポイントカードを入れ、自分だけの最新の情報を見てから買い物などに向かう
お客様の“ココロをくすぐる”ような仕掛けづくりも検討課題に
ららぽーとでは、購買頻度が高く、eメールアドレスを登録しているカード会員のことを“A会員”と呼んでおり、そのお客様に対して、インターネットを活用したサービスを提供している。パスワードを発行し、その会員だけが閲覧できるWebサイトを用意しているほか、eメールも送信。同社マーケティング部CRM課長の一色信二氏は、「A会員のお客様に対しては、ある一定の情報をお客様の嗜好に応じてeメールでお知らせしています」と説明する。例えば、バーゲン開催期間の先行告知や、バーゲン開催期間中に行われるテナントごとのサービスの案内などを行う。現在、A会員は、カード会員の約14%を占める。
また、1プログラム年度内の購買金額の合計が30万円を超えたお客様を、「スターメンバー」として登録、その証しとして星型のシールが贈られ、カードに貼ることができるほか、さまざまな特典を用意している。例えば、お買上合計金額に対し、100円当たり1ポイントの「スペシャルポイント」を翌年度開始時にプレゼント。さらに、DMをカスタマーサービスセンターに提示すると、「TOHOシネマズ入場割引券」「ららぽーとの湯 常盤殿入浴券」「ナチュラルボディー リラックス券」などの中から、いずれかひとつをプレゼント。また、会員情報誌『LaLaport Press』(会員限定お得なクーポン券付き)の送付といった具合だ。ただ、「お客様に魅力を感じていただける仕掛けを適正な経費の中でいかにご提供できるか」(前田氏)と言うように、スターメンバーに対する魅力付けという点では検討の余地があるという。今後は、ポイントを多く付与するだけではなく、スターメンバー限定のラウンジや施設などを設けて、お客様の“ココロをくすぐる”ようなサービスが欠かせなくなると見ている。
現在、ポイントカード会員の25%が優良顧客と見ているが、これをさらに10ポイント以上アップすることを目指している。そこで同社では、ポイントカード会員をただ増やすばかりではなく、優良顧客の比率をアップするため、これまで以上にOne to Oneマーケティングを推進していく意向だ。