美と健康を扱う企業イメージ浸透に向け顧客接点の最前線として活躍

ファンケル(株)

無添加化粧品の通信販売からスタートした(株)ファンケル。現在同社では、化粧品とサプリメントを2大事業として推進。同社の受注センターはアウトソーシングされているが、それ以外の相談・問い合わせ窓口はインハウスで行われている。今回は、インハウスにフォーカスして取材を行った。

多くの顧客の要望を受けてサプリメントと薬の飲み合わせ窓口開設

 (株)ファンケルは、1980年に無添加化粧品の通信販売からスタートして以来、健康食品事業、発芽玄米事業、青汁事業と次々に事業を拡大。また1995年からは直営店の展開に着手、一部商品に関しては流通を介した卸も手掛けている。
 同社のコールセンターとなる相談・問い合わせ窓口には、「美容相談室」「フード相談室」「お問い合わせ窓口」などがある。
 「通信販売というチャネルで事業を推進していく上で、コールセンターはお客様との唯一の接点ですから、“最前線”という位置付けになります」と説明するのは、同社広報部広報グループマネジャーの松下秀人氏。各相談・問い合わせ窓口が、ファンケル・ブランドの重要な顧客接点となっているのだ。
 同社では、健康食品事業(サプリメント)を化粧品事業に次ぐ、第二の柱として推進しているが、今期新たに「学術部サプリメントと薬の飲み合わせ(SDI)窓口」を開設した。これまではお客様からの問い合わせに対して、飲み合わせの良し悪しを調べてから回答していたため、対応に時間がかかっていた。そこで多くのお客様からの強い要望に応えるかたちで、専門の窓口を設けたというわけだ。すでに同社のサプリメント約100種類と、一般薬を含む医薬品約3万2,000種類の飲み合わせについて、検索できるシステムを開発。このデータに基づいて、医師や薬剤師、臨床検査技士、管理栄養士など総勢13名の医療従事者、コメディカル・スタッフがお客様の質問に答え、飲み合わせに関する留意点の説明を行っている。医師から処方された薬と自社のサプリメントの飲み合わせが悪いことが判明すれば、お客様の健康を第一にサプリメントの摂取中止を促すこともある。また、世界中から薬に関する文献を取り寄せ、常にデータベースの更新を行っていることは言うまでもない。
 このように、お客様の声が新しい窓口開設に結び付くのは、同社が常に「お客様にいかにご満足いただくか」(広報部広報グループ マネジャー 松下氏)ということを意識していればこそと言えるだろう。

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ファンケルが手掛ける商品の一部

各相談・問い合わせ窓口は専門スキルを身に付けたスタッフが対応

 ファンケルは、 化粧品などについては 「美容相談室」、サプリメントや発芽玄米、青汁などの健康食品については「フード相談室」が、お客様への対応を行っている。そして、各相談室のオペレータは、それぞれ専属で窓口を担当。「商品知識もさることながら、化粧品であれば美容や肌に関する情報や教育・訓練を専門的に受けなければいけません」(松下氏)。つまり、各オペレータは専門知識を身に付けることで、同社のブランド価値を維持・向上することに努めているのだ。
 また、お客様からの質問が専門的になってきている昨今、フード相談室には管理栄養士を置くなど、各分野の有資格者を積極的に起用している。
 こうした顧客接点の最前線に立つ同社のオペレータは、パートとグループ内の派遣会社からの派遣スタッフで構成されているという。同社にとって重要な位置を担っているスタッフだけに、相談・問い合わせ窓口が所属するカスタマー・リレーション本部内には「キャリア支援室」が設けられており、オペレータのキャリアアップをサポートしている。さらに、本社の経営戦略本部の人事部にある「ファンケル・アカデミー・スクール」という、創業から現在に至るまでの会社のすべてを学ぶ部署と連動しながら、オペレータの研修がプログラム化されている。
 このようにオペレータへの教育に注力するのは、同社のブランド戦略が、お客様対応の質・レベルを常に上げていくことができるかどうかにかかっていると判断しているからだ。
 研修終了後も、各窓口で対応しているスタッフのオペレーションをトレーナーやマネジャーなどが適時モニタリングし、コミュニケーションを図ることで、オペレータの質向上・モチベーションアップに結びつけている。また、オペレータ各自の自己研鑽・スキルアップにつながるように、(財)日本電信電話ユーザ協会などの社外で開催される電話応対コンテストへの参加を奨励。 「スタッフの中には成績優秀者も数名おります。そういうスタッフが身近にいますと、周りにいる人たちの目標にもなります」(松下氏)と、コンテストへの参加が本人のみならず、周囲のオペレータのモチベーション・アップにもつながることを指摘する。

主力事業の化粧品とサプリメントを「内外美容理論の提唱」と銘打ち、社会への浸透図る

 同社は、化粧品からサプリメント、発芽玄米、青汁へと事業を拡大していることで、「女性にとっては化粧品会社、男性にとっては健康食品会社」(松下氏)というように、人によって企業イメージがマチマチである。
 そこで同社では、化粧品とサプリメントの2事業が会社の柱であることを全国的に浸透させるため、独自の情報発信やサービス・商品の提供ができるように「内外美容」をベースとしたブランド・イメージ戦略を開始した。「化粧品は肌の外側から、栄養補助食品であるサプリメントで身体の内側から美容をサポートしますという考え方を提唱させていただいています」と松下氏は説明する。
 現在同社は、昨年11月に発表した「中期3カ年経営計画」において、“美”と“健康”をテーマに掲げており、こうしたコンセプトのもとで新商品や新事業の開発を検討している。
 同社にとって相談・問い合わせ窓口は、事業を推進する上での最前線である。「そのインフラを最大限に活用しないと、お客様の満足度の向上を図れない」(松下氏)というように、その位置付けは大きい。
 今後、相談・問い合わせ窓口の役割は「内外美容」という言葉を広めるべく、ファンケル・ブランドの価値向上に寄与することができるかが大きなカギとなってくるだろう。

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化粧品と健康食品の情報誌を通して、利用者に向けて美と健康を提案


月刊『アイ・エム・プレス』2004年11月号の記事