コンタクトセンター最前線(第122回):予約センターとお客さまの声係でお客さまの利便性とCSの向上を推進

ニッポンレンタカーサービス(株)

レンタカーやリース事業の老舗として知られるニッポンレンタカーサービス(株)。同社では、40年以上にわたり、常にお客さまの利便性とCSの向上を追求してきた。現在では、予約センターで取り逃しのない迅速な対応を推進する一方、VOCを収集・活用する専用窓口を設け、お客さまのニーズに応えるための取り組みに力を注いでいる。

早くからコンタクトセンターの受付体制を整備

 1969年3月の設立以来、「買うより借りよう!」というコンセプトのもと、国内22社、海外1社のフランチャイジーを通じてレンタカーやカーリース事業に取り組んでいるニッポンレンタカーサービス(株)。同社では、レンタカーの車両品質・店舗品質・接客品質を3大品質とうたい、これらを向上するための日々の取り組みはもとより、予約から出発・帰着・精算に至る処理時間のスピードアップ、24時間営業店の積極展開を通じ、お客さまの利便性向上に努めてきた。特に顧客サービス面では、会員組織「NO.1CLUB」を運営し、同クラブのメンバー管理システムと連動して業界に先駆けてパソコンや携帯電話によるオンライン予約サービスを実現。さらに、より利用しやすい料金体系の整備やカーナビ・ETC搭載車、禁煙車の導入、福祉車両のレンタルや法人向けのWeb情報提供サービスなど、次々と新サービスの導入を図っている。こうした取り組みの結果、「NO.1CLUB」の会員数は順調に増加。2011年11月末現在で約500万人に達している。
 同社では、レンタカーサービスや顧客サービスの面での取り組みだけでなく、この双方を支えるコンタクトセンターにおいてもかねてより体制を整備、応対品質の向上などに積極的に取り組んできた。会社設立から7カ月後の1969年10月に開設された予約センターでは、1982〜1983年にレンタカー業界で初めてACD機能付きのPBXを導入。いち早くオペレータへのコールの振り分けを平等に行う体制を整えた。その後、2001年には契約法人の福利厚生として提供している「ワンデイクーポン」の利用者用に着信課金サービスを導入。2003年には「NO.1CLUB」会員と旅行代理店に、2006年には一般顧客にまで対象を拡大した。さらに、2006年にはNTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル・インテリジェントサービスを導入し、用件に応じたルーティング機能をネットワーク上で実現。業務内容別に適切なオペレータ・グループに着信することで、迅速な応対を可能にする体制を整えた。
 また、予約センター開設と同時に予約センター業務の一環として、予約やレンタカーサービスに関する意見・要望・苦情を受け付け始めた。その後、1985年9月に組織を独立させ組織名は変遷するが、現在はNO.1サービス推進部CS推進課内の「お客さまの声係」に引き継がれている。

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ニッポンレンタカーサービスのWebサイト。今日では予約の7割が 自社およびアフィリエイターのWebサイトから寄せられている

フランチャイジーへの送客を担う予約センター

 予約センターは1拠点で、東京本社内に設けられている。主目的は各フランチャイジーへの送客で、業務としては電話応対のほかにバックヤード業務も担当。具体的には、電話での予約受付および予約に関する問い合わせ対応のほか、「NO.1CLUB」会員を対象としたカスタマーデスク、インターネット予約のオプションサービスへの回答、アフィリエイトからのインターネット予約処理と多岐にわたる(図表1)。

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 レンタカーサービスは年中無休で提供していることから、予約センターもこれと同様に年中無休だ。受付時間帯は、平日が8時から20時まで、土日・祝日が9時から18時まで、年末年始は9時から17時までとなっている。在籍オペレータ数は44名で、雇用形態は派遣社員。5シフト制を採っており、常時約15名で対応している。オペレータは2グループに分かれており、それぞれをスーパーバイザー役のリーダーがとりまとめてモニタリングやコール状況の把握などを行っている。そして、全体を統括するのが所長だ。
 コンタクトセンターシステムは、大規模なものは導入しておらず、前述の通りフリーダイヤル・インテリジェントサービスを利用している。これは、NTTコミュニケーションズのネットワーク上でCTI機能を提供するサービス。ニッポンレンタカーサービスでは、そのオプション機能のひとつであるルーティング機能の入力指示ルーティングを利用して、お客さまがプッシュしたボタン信号により、あらかじめ指定された着信先へ接続している(図表2)。受け付けた予約は、予約システムに入力。一方、問い合わせについては履歴の蓄積はしていない。

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繁忙期は春と夏。年間33万8,000件のコールに対応

 予約センターの告知媒体には、Webサイト、料金表などを活用している。受付コール数は年間33万8,000件。3月と7、8月が繁忙期となっており、3月は1カ月当たり3万3,000件、7、8月は1カ月当り3万8,000 〜4万件に対応している。
 予約センターへのコールは売り上げに直結する。そのため、同センターではコールの取り逃しを最小限にとどめることに留意。放棄率の目標値は5%以内に設定しており、年間、月間、週、日の単位で詳細なコール予測を行うことで、この目標値を実現している。
 また、もうひとつの留意点として、オペレータが感謝の気持ちを持って対応することを挙げている。
 同社では毎年、春の繁忙期に備えてオペレータの採用と教育を実施。採用においては、土日勤務およびシフト勤務が可能なことと、接客経験があることを条件としている。採用後は、2カ月にわたって導入研修が行われる。まず、はじめの1カ月間で事業の概要と商品知識を中心に学ぶ。そして、次の1カ月間で業務知識や端末の操作について学んだ後、「NO. 1CLUB」会員と一般のお客さまの予約受付から業務をスタート。OJTを続けながらひとつずつ業務内容を増やしていくことで、確実なスキルアップを実践し、約1カ月のOJTの期間を経て、晴れて独り立ちとなる。3カ月の研修期間は長めだが、同社では研修中の離脱防止、および確実なスキルアップと長期間にわたる勤務を実現するために必要な期間であるとしている。

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予約センターの受付風景。オペレータは、同社のコーポレートカラーである赤い制服を着用している

意見・要望・苦情はお客さまの立場になって対応

 お客さまの声係は、前述の通りNO.1サービス推進部CS推進課内に開設されており、予約やレンタカーサービスに関する意見・要望・苦情を受け付けている。対応に当たるのは、同課の2名の社員で、受付チャネルには、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスと、eメール、ハガキを活用。フリーダイヤルの受付時間帯は、月曜から金曜日の10時から17時までで、土日・祝日は休業となっている。一方、eメールは自社Webサイトから受け付け、ハガキは全国の営業店を通じて直接、お客さまに配付している。
 意見・要望・苦情については、お客さまの声係で一手に対応するが、返金などフランチャイジーでの対応が必要な案件に関しては、当該のフランチャイジーに引き継いでいる(図表3)。

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 受け付けに当たって留意している点は、お客さまの立場に立つことと、丁寧に対応すること。中でも、クレームは対応いかんでお客さまの離反にもつながれば、ファンになってもらえることもある。そのため、お客さまの声係では、謝るべきことに対しては気持ちを込めて謝罪することが大切であると考えている。

お客さまの声は財産

 お客さまの声係に寄せられる意見・要望・苦情(以下、VOC)の件数は、年間1万8,500件ほど。このうち、電話が約300件、eメールが約1,200件、ハガキが1万7,000件で、こちらも予約受付と同様にeメールでの申し出が増加傾向にある。
 寄せられたVOCは、サービスの改善に役立てられている。これまでの改善事例としては、法人客に送付する請求書の封筒を変更したことが挙げられる。旧封筒は、宛名の窓がビニールであったため、捨てる際に分別しにくいという声が寄せられたことから、リサイクル可能な半透明のグラフィン紙窓の封筒に切り替えたのだ。
 同社ではVOCを貴重な財産ととらえている。近年、安価なレンタカーが台頭しており、同社をはじめとする既存のレンタカー各社においては、より高品質なサービスを提供することによりサービスの差別化を図っていくことが不可欠となっているのだ。こうした中、同社ではこれまで以上にVOCに耳を傾け、それに応えていくことによりお客さまの利便性を高め、CSを向上していきたいとしている。

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各営業店を通じてお客さまに配付されるハガキ。車両、店舗、従業員、そして会社への意見、要望を自由に記入できるようになっている

インターネットの利用が増えてもコンタクトセンターは不可欠

 現状の課題として、予約センターでは高いスキルをもった良質なオペレータの育成と、運営コストの削減を挙げている。また現在、問い合わせについては応対履歴を残していないことから、将来的にはボイスロギングシステムを導入するなどシステム改修を行い、テキストと音声の両方ですべての応対履歴を蓄積していくことも検討しているという。
 一方、お客さまの声係では、タバコの臭いについてなど、多く寄せられている苦情への早期対応を挙げている。
 前述の通り、昨今では予約においても、また意見、要望、苦情の申し出においてもインターネット利用の比率が高まっており、特に予約では全体の約7割にまで達している。2011年3月にスマートフォンへの最適化を実施したこともあり、こうした傾向は今後も続く見込みである。こうした中、電話で受け付ける予約数は減少することが予測されるが、予約受付手段が多様化しても“コンタクトセンターはなくてはならない顧客接点”であるというのが同社の見方。例えば、インターネット予約が増えることで、今後はインターネット予約の操作方法に関する問い合わせが増加するなど、コンタクトセンターに寄せられる問い合わせの内容が徐々に変化していくものと見ている。同社では、時代に合わせて2つのコンタクトセンターを進化させていくことで、3大品質にさらに磨きをかけ、競争優位性を築いていきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2012年1月号の記事