通信販売を展開する(株)ディノス・セシールでは、コールセンター「ディノスハートコールセンター」運営の基本となるクレドに“おもてなしの心”を明示。その徹底を図るとともに、具体的な行動に落とし込むさまざまな取り組みを展開し、“おもてなし”のレベル向上に努めている。
“おもてなし”の心を前面に打ち出したクレドを制定
2013年7月1日、(株)ディノス、(株)セシール、(株)フジ・ダイレクト・マーケティングの合併により、新たなスタートを切った(株)ディノス・セシール。カタログ通販・テレビショッピング・インターネット通販などの通信販売事業を中心に展開する同社では、顧客との重要なコンタクト・ポイントであるコールセンターにおいて、“おもてなしの心”に基づく対応を実践している。
通信販売、その中でも放送中・直後に受注コールが集中するテレビショッピングを手掛ける企業においては、効率性を求め、コールセンター業務をアウトソーシングしているケースも多い。その中で同社のディノス事業においては、フジテレビの「リビング4」「リビング11」という番組で、日本初のテレビショッピングを展開したことが出発点だったという経緯を持ちながら、コールセンター業務については、一貫してインハウス運営を維持してきた。これは「通信販売においてコールセンターは、利益をもたらしてくれる唯一の存在であるお客さまと直接触れ合える貴重な場である」という考えによるものであり、自社運営の「ディノスハートコールセンター」を通じて得られたお客さまの生の声を、商品の開発・改善をはじめとするビジネスのさまざまな場面に生かしていくことで、事業のブラッシュアップを図ってきた。
そして、その対応においては、長らく「あなたの声に笑顔を乗せて」というスローガンの下、ホスピタリティの強化に努めてきた。その姿勢は多くのお客さまの共感を呼び、ファン獲得に寄与してきたが、このスローガンの中の“あなた”はコミュニケーターを指しており、その意味で内部的な努力目標であるとも言える。そこで同社では2009年4月1日、「私たちは、おもてなしの心でお客様に感謝し、お待たせをしない最高のサービスを心がけます」というクレド(企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言)を制定。お客さまに向けた行動指針とも言えるこのクレドを、コミュニケーターをはじめとするコールセンターの全スタッフに徹底し、実践することを通じて、コールセンターにおける“おもてなし”の強化を図っている。
商品カテゴリーごとの4つの専門チームがお客さまの立場に立った対応を実践
ディノスハートコールセンターでは毎朝、クレドを社員・コミュニケーターが唱和するところから業務をスタートする。また、クレドをセンター内の数カ所に大きく掲示するほか、クレドを印刷した名刺サイズのカードを全社員・コミュニケーターに配布し、いつでも確認できる状況を整えるなど、常にクレドの精神に基づく対応を推進。それを具体的な行動に反映させるために、さまざまな取り組みを行っている。
例えば、近年ではインターネットの普及などにより、生活者の情報収集力が飛躍的に向上し、それに伴って、商品購入検討時における生活者の情報ニーズもより専門性を高めている。また、商品の多様化によって、生活者が自分に適した商品を探し出すのが難しくなっていることから、単に商品の説明を行うだけでなく、潜在的なニーズを汲み取り、そのニーズに最も適した商品を提案するコンシェルジュ的な対応も求められるようになっている。
そこで同社では、問い合わせ対応について、商品カテゴリーごとに、キッチン雑貨、家庭用品、インテリア・ファブリックなどを担当する「インテリア・家庭用品ナビ」、大型家具・収納用品などを担当する「家具・収納ナビ」、美容健康商品を担当する「d-BEAUTYサポートライン」、ファッションを担当する「ファッションコンシェルジュ」という4つの専門チームを設置。商品企画担当部門が各チームのコミュニケーターを対象とした商品説明会を定期的に行って、商品に関連する細かい知識を伝えるほか、実際に販売前の商品を使ってみて、使用方法などを確認することによって、よりお客さまの立場に立った対応につなげている。また、期間限定で2点以上かつ20万円以上のお買い物をされるお客さまに対応する「お引越し・まとめ買いキャンペーン」などでも専門チームを設置。引っ越し時に役立つ各種商品情報の提供などを行うことで、お客さま満足度の向上を図っている。
さらに、同社の購入額ランク別の割引制度「ディノスステップアッププラン」の上位会員である「ダイヤモンド会員」「プラチナ会員」や自社クレジットカードであるディノスカードの会員については、“VIP”として専門の対応チームを用意。対応レベル別に5等級を最高とするコミュニケーターの等級の中で、4等級以上のコミュニケーターを充てることで、優良顧客にふさわしい対応を実施している。
また、コミュニケーターの対応をサポートする情報システムについても充実化を図っている。例えば、コミュニケーターがログインすると「ディノスコミュニケーターニュース」というコンテンツが立ち上がり、お客さまとのコミュニケーションに必要な情報が確実に伝わるようにしているほか、FAQを常時更新することなどで最新の情報を共有。さらに、必要に応じて、Webベースで取引先とも情報交換ができるようになっている。
クレドを大きく掲げたディノス・セシールの「ディノスハートコールセンター」(上)。現物を見ながら問い合わせに対応できるよう、センターには商品サンプルを備えている(右)
センターに集まるVOC の社内発信を通じて全社レベルでの“おもてなし”の改善に寄与
もちろん、“おもてなしの心”体現のベースとなるコミュニケーション力の強化にも余念はない。
例えば、コミュニケーターの採用においては、面接前の電話応対時から最終面接に至るまで、一貫してコミュニケーション能力を中心とした判定を実施。採用後の初期研修においても、端末操作など実務的な内容以上に、クレドを中心としたお客さま対応の基本姿勢といった部分に多くの時間を割いている。また、実際の業務に就いてからもQC部門のトレーニング担当者が随時モニタリングを実施。一次対応、二次対応など、それぞれの場面での「良い対応」「悪い対応」をピックアップし、それらを教材とした実践的な教育を行うことで、コミュニケーション力の底上げを図っている。
さらに通信販売という業態上、コールセンター単体では“おもてなし”度の向上に限界があるという考えから、コールセンターに集まるVOCを社内に積極的に配信。商品企画から物流に至る、事業全般に活用する体制をリードすることで、全社レベルでの“おもてなし”の改善にも寄与している。
これらの取り組みの効果測定については、商品に同梱する明細書にサービス品質を5段階で評価・採点するアンケートを掲載し、PC、携帯電話・スマートフォンから回答できるようにして、その結果を継続的に検証している。このほか、コールセンターに集まるお客さまからの「ありがとう」の声をセンター内で共有することで、モチベーションの向上につなげている。
今後は、現状、ワンストップ対応を基本とする中で生産性がなかなか向上しないという課題があることから、お客さま満足度向上と生産性向上の両立を目指し、一般的な一次対応からより専門的な二次対応へのスムーズな引き継ぎ体制を構築していく方針。その実現のためにも、お客さまの“真の”ニーズを汲み取り、正確に伝達するコミュニケーターの傾聴力・表現力の向上に努めていく意向である。