暮らしに役立つ「安全・安心」情報を継続的に発信

セコム(株)

セコム(株)では2011年3月、Webサイト内に家庭向け安全・安心総合情報サイト「セコム安心マガジン」を開設。防犯・防災に関する啓蒙を通じて社会的責任を果たすとともに、日常的・継続的な情報発信により、「防犯・防災と言えばセコム」というイメージを一層強化することを目指している。

防犯・防災に関する啓蒙を目的とする家庭向け安全・安心総合情報サイトを運営

 1962(昭和37)年に日本で初めての警備保障会社として創業。現在ではセキュリティを中心に、防災、メディカル、保険、地理情報サービス、情報系事業などを展開し、「社会システム産業」を標榜するセコム(株)。同社では2011年3月、Webサイト内に家庭向け安全・安心総合情報サイト「セコム安心マガジン」を開設した。
 同社では、「セコム・ホームセキュリティ」や「セコム・ホームサービス」など、実際の商品・サービスで「安全・安心」を提供する一方で、2000年代半ばから、子どもや女性、シニア層などの防犯・防災に関連する情報の発信に着手。「子を持つ親の安全委員会」「働く女性の安全委員会」「シニアの安全を考える委員会」など、社員によるさまざまな委員会を設け、セミナーの開催や防犯・防災対策書籍の刊行などと並行して、関連ブログの運営などインターネットを通じた情報発信も手掛けてきた。
 「セコム安心マガジン」は、こうした活動の延長線上で、各委員会が発信するコンテンツの統合・拡充を図ったもの。“安全・安心”の提供をビジネスとする企業として、防犯・防災に関する啓蒙を通じて社会的責任を果たすとともに、日常的・継続的な情報発信を通じて生活者の親近感を醸成することを目指している。これにより「防犯・防災と言えばセコム」というイメージを一層強化し、困った時に同社を一番に想起してもらえるようになることを期待しているのだ。また、同社のWebサイトにおいてはアクセス数の伸びが鈍化しつつあったことから、新たなコンテンツを追加することで再活性化を図る狙いもあった。
 「セコム安心マガジン」を構成するコンテンツは、①月~金曜日の毎日、「安全・安心」にかかわるテーマを取り上げ、独自の視点から情報を発信する安全コラム『月~金フラッシュニュース』、②「シニアの安全を考える委員会」が同社のイメージキャラクターを務める長嶋茂雄氏のインタビュー記事や、シニアのための防犯・防災情報、健康情報、海外での犯罪情報など幅広い情報を紹介する『おとなの安心倶楽部』、③「子を持つ親の安全委員会」が子どもに関する防犯・防災対策情報を発信する『子どもの防犯ブログ』、④「働く女性の安全委員会」が女性ならではの視点と防犯のプロの立場で、主に20~30代の働く女性のライフスタイルから犯罪の実情を分析し、女性の「安全・安心」をサポートする『あんしんライフnavi』、さらには、⑤「安全・安心」にこだわった食の情報を紹介する『こだわりの美食』、⑥役立つ生活術を届ける『暮らしのあんしん百科』など。いずれも同社スタッフが中心となって執筆したオリジナリティに富んだ内容となっている。

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豊富なコンテンツを揃えた「セコム安心マガジン」のトップページ(左)と、同社の「子を持つ親の安全委員会」が監修した絵本(右)

開設後半年でアクセス数が1.5倍に

 「セコム安心マガジン」の第一の目的は防犯・防災に関する啓蒙であり、各コンテンツに関連する同社商品の案内サイトへのリンクなどは設定しているものの、現状では、できる限り販促色を排除するように心掛けているという。つまり、収益モデルとは一線を画した社会貢献のためのWebサイトという位置付けであり、その運営においては、多大なコストを投じて活性化を図るのではなく、同社社員の自発的な活動を通じた“手づくり感”を前面に打ち出す方針が採られている。このような方針の下、サイトへの集客においても、例えばシニア向け商品を訴求する新聞広告の中で『おとなの安心倶楽部』を紹介するなど、追加コストが掛からない取り組みは行っているものの、サイトの告知のみを目的とするマス広告の出稿などは行っておらず、基本的にはSEO対策が中心となっている。
 なお、同社ではSEO対策のベースは「当たり前のことを当たり前に継続する」ことだと考えており、例えばキーワードを整理するといった施策を恒常的に実施。また、更新を頻繁に行うことも有効な対策になると認識しており、平日は毎日、新たな記事をアップしている『月~金フラッシュニュース』を中心に、平日は毎日、何らかの更新がある“動的”なサイトづくりを心掛けている。さらに記事内容については、「安全・安心」に特化した、独自性が高くニュースバリューのあるものを心掛けており、必要に応じてプレスリリースの発信なども行うことで、パブリシティ効果を狙っている。実際にYahoo! JAPANやGoogleなどで「セコム安心マガジン」の掲載記事がニュースとして取り上げられ、それをきっかけにアクセス数が増加するケースも少なくないとのことだ。
 そのほか、2011年1月に運用を開始し、防犯・防災などに関連するニュースを1日7~8回の頻度で発信しているTwitterや、2011年3月末で50万世帯に近い契約数を誇る「セコム・ホームセキュリティ」の契約世帯に年4回送付している情報誌、合計で月間4~5回、1回当たり10万通強の配信を行っている2種類のメールマガジンなどでの告知などを進めてきた結果、2011年3月末時点に設定した「2011年度末(2012年3月)までにアクセス数を1.5倍に」という目標は、すでに2011年9月時点で達成されている。そこで目標を「2倍」に上方修正し、施策の継続・強化を図っていきたい考えだ。

ニーズに応じて柔軟にコンテンツを追加・拡充

 同社が「セコム安心マガジン」運営の効果を測定する指標として重視しているのが、ユーザーのアクセス状況。具体的にはPV数とユニークユーザー数の推移である。前述の通り、これまでのところアクセス数は順調に拡大しており、一定の運営効果が発揮されていると認識しているが、今後もさらなる拡大を図っていく方針である。
 その実現のための課題として挙げられているのが、コンテンツのさらなる拡充である。例えば、現在のコンテンツのうち、『子どもの防犯ブログ』や『あんしんライフnavi』については、「セコム安心マガジン」の開設以前から単独で運営してきた経緯があるため、バックナンバーを含めて豊富な情報量があるが、一方では必ずしも情報量が多くないコンテンツもある。これらについて、例えば同社の研究機関であるセコムIS研究所などの協力を得て拡充を図るとともに、ニーズに応じて新規のコンテンツを追加することで、サイトの充実化を図っていく意向だ。
 また、前述のTwitterに加えて、2011年11月にはFacebookページの開設を予定していることから、これらソーシャルメディアとの連携強化も課題として挙げられている。具体的には、相互に紹介する機会を増やすことなどで相乗効果の発揮を図っていく方針である。
 「セコム安心マガジン」は当面、これまで通り、防犯・防災に関する啓蒙を図ることを第一義としていくが、将来的には販売促進への貢献という部分も強化していきたい考え。今までは一定の集客を獲得し、メディアとして確立させることに注力してきたが、今後はここでできること、やるべきことを整理し、マーケティング装置としても進化させていきたい考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年11月号の記事