ブックオフグループのEC事業部門として、書籍やCDなどの通販・買い取りサイトを運営しているブックオフオンライン(株)。利便性の高いサイトづくりに努めてきた同社では、お客さま視点のサイトづくりを推進するべくVOCの収集を強化。Twitter上のアクティブサポートを通じて要望を把握し、それをサイトの改善に役立てている。
ソーシャルメディアやアンケートによるVOC収集をスタート
2007年8月より、ブックオフグループのEC事業部門として、書籍やCDなどの通販・買い取りサイト「ブックオフオンライン」を運営しているブックオフオンライン(株)。同社が取り扱う書籍、コミック、CD、DVD、ゲームは120万点に及ぶ。
サイトでは、希望の商品の入荷や値下げを知らせる「お知らせメール」のほか、コミックなどを全巻揃えて購入できる「オトナ買い」、お気に入りのコミックの最新刊が発売された時に届く「デマチメール」といった数々の会員サービスを提供することで、利便性の向上に努めてきた。さらに、2011年2月にはPC版と同じサービスがどこでも手軽に利用できるモバイルサイトをオープン。こうした数々の取り組みが人々に支持され、会員数は右肩上がりに伸長、2011年4月には120万人に達した。業績は2010年3月期より黒字に転換し、2011年3月には2期連続の黒字となった。
サイトの利便性向上に注力し、順調に事業を成長させている同社であるが、会員・非会員(以下、お客さま)との接点はカスタマーセンターのみで、十分に意見や要望をヒアリングする環境を用意できていなかった。そこで、2009年3月にスタッフブログをスタート。続いて、無記名で意見や要望を伝えることができる「ブックオフオンラインに関するアンケート」ページを開設。さらに2009年にはTwitterのアカウントを取得し、2010年4月よりTwitter上でのアクティブサポートを本格的に開始して、お客さまの声(以下、VOC)の積極的な収集に乗り出した。
2,200坪の倉庫には常時120万点の商品がある
アクティブサポートをメインにTwitterを活用
Twitterの運営・管理を担うのはマーケティング部で、1名の社員が従来業務と兼務するかたちで行っている。ブックオフオンラインに関するツイートの収集には、Twitterの検索機能を利用。1日に集まるツイート数は10~20件で、このうちアクティブサポートが必要と目されるものは約半数にとどまっている。対応時間は定めておらず、担当者の裁量で行っているのが現状だ。
対応方法については、Twitterの制限文字数140文字以内で説明できる内容については、返信のかたちで対応。文字数が足りない場合は、詳細な情報が記載されているサイトへ誘導。購入者・販売者の個人情報確認が必要な問い合わせはカスタマーセンターに誘導するというように、内容に応じて対応のしかたを変えている。例えば、探している本がブックオフオンラインにも書店にもないというツイートには、「入荷お知らせメール」への登録をお勧めし、届いた本が雨で濡れていたというツイートには、カスタマーセンターかTwitterのダイレクトメッセージに連絡して交換または返金の手続きをとってもらうよう案内している。また、お褒めの言葉を発見した場合には、お礼のメッセージを伝えるとともに、サイトの使い勝手などについてヒアリングしている。
このように、アクティブサポートをメインにTwitterを活用している同社では、積極的なツイートは行っておらず、ブログの更新情報を、アユダンテ(株)の企業向けTwitterクライアント「つぶやきデスク®」を利用して自動的に配信する程度となっている。
なお、ブログの書き手は部門の異なる10名ほどのスタッフで、週に2回、更新している。ブログの内容は、キャンペーンのお知らせやサービスに関する情報のほか、最近では東日本大震災の被災者支援に関するものなどがある。
bookoffonlineのホームページ
Twitterの公式アカウント
アクティブサポートにおける2つの留意点
2011年9月1日現在のフォロワー数は4,000人弱。このうち、サポートを通してコミュニケーションをとったフォロワーのみをフォローしており、すべてのフォロワーにフォロー返しをすることは行っていない。
アクティブサポートにおいて留意している点は2つ。
ひとつは、言葉遣いだ。話しかけやすい環境づくりのために、かしこまった表現は避け、読みやすさを考慮しつつひらがなを多く用いている。
もうひとつは、できないことの伝え方だ。例えば、著作権問題をクリアしなければ実現できない要望や、大きな費用が発生する事柄など、決裁権を持たない社員には約束できかねることも少なくない。しかし、VOCを収集することを目的にTwitterを活用しているにもかかわらず、寄せられた要望やアイデアに「できません」と回答しているだけでは、いずれこうした声は寄せられなくなってしまう。そこで、絵文字や記号を使いながら、アイデアへの賛同の気持ちや、前向きに努力していくことをソフトに伝えるようにしているという。
お客さまの声を身近に感じスタッフの意識にも変化が現れる
Twitter上でのアクティブサポートの開始からもうすぐ1年半が経過する。同社では、収集したVOCからお客さまの要望を把握することができるようになったとしてTwitterの活用を評価。これらは、サイトの改善などに役立てられているという。
このほか、アルバイトを含む社内のスタッフの意識に変化が見られるようになったことも効果のひとつだ。同社では週1回、各部門の部門長やリーダーを対象に、Twitterのフォロワー数やツイート数、ツイートの内容などをeメールで配信している。この情報共有により、以前にも増してお客さまの大切さを一人ひとりが意識するようになったのだ。同社では、これを大きな効果ととらえている。
“人力レコメンデーション”を標榜
前述のように、要望の把握やスタッフの意識の変化といった効果は確かに得られたが、費用対効果などの定量的な効果は測定できていないのが現状だ。同社では現在、効果の数値化を課題としており、今後はカスタマーセンターにおけるサービスの評価指標との連携を図りながら、独自の指標を作成していきたいとしている。
現状、ひとつのアカウントで買い取り前・販売前のサポートと買い取り後・販売後のサポートを行っている点が評価を難しくしている面もある。そこで同社では、今後はもうひとつTwitterアカウントを取得し、プロモーションはマーケティング部、サポートはカスタマーセンターが担当するというように、明確な分業体制を構築する意向だ。これが実現したあかつきには、買い取り前・販売前の新規会員へのサービスをより充実させたい考え。例えば、目的買いでサイトを訪問したものの、合計金額が送料無料になる1,500円に達しないために購入をあきらめてしまう会員が多いことから、欲しい本をツイートすれば会員の好みに応じてスタッフが併買をお勧めする“人力レコメンデーション”なども行っていきたいとしている。