カスタマーサービス部門でTwitter専用の問い合わせ窓口を運用

ソフトバンクモバイル(株)

ソフトバンクモバイル(株)ではTwitterによる問い合わせ窓口「SBCare」を開設。同社携帯電話ユーザーのツイートに対するアクティブサポートを実施している。今後は、特にツイートの意図をどのように読み取るかという点についてのノウハウのブラッシュアップを図っていく方針だ。

きっかけは同社携帯電話ユーザーによる同社サービスに関するツイート

 ソフトバンクモバイル(株)では、2010年7月からTwitterによる問い合わせ窓口「SBCare」を運用している。同社では、代表取締役社長兼CEOの孫正義氏が2009年のクリスマスイブにTwitterでのツイートを開始して話題となり、2011年9月現在で130万人以上のフォロワーを獲得。そうした企業風土の中で、実際に多くの社員がTwitterを利用しているのだが、ある日、顧客対応を担当するカスタマーサービス本部の担当者がTwitter上の話題の傾向などをモニタリングしていたところ、孫正義氏宛ての「○○の使い方がわからない」「□□を改善してほしい」といった同社携帯電話ユーザーによる同社のサービスに関するツイートが散見された。
 そこで同社では、2010年3月から「携帯電話」「ソフトバンク」などのキーワードによる本格的なモニタリングを開始し、同社に対する意見やクレームなどのツイートが一定数あることを確認した。これを受けて同年4月からは、スタッフ数名が「氏名+SBCare」というアカウントを取得し、それらのツイートへの対応に着手。約3カ月間のテスト運用を通して、「担当者の顔や名前を出した方がよいか」「アカウントは集約した方がよいか」「コールセンターの1対1のクローズドなコミュニケーションと異なる、1対1対nのオープンなコミュニケーションのあり方は」などの点について一定の知見とノウハウを集めた上で、2010年7月、「SBCare」を正式にスタートすることとなった。

担当スタッフ常時10名体制で業務を遂行

 SBCareは、電話やeメールで同社の携帯電話ユーザーからの問い合わせやクレームに対応するコールセンターを補完すると同時に、ユーザーが「コールセンターに連絡するほどではない」と考えてTwitterに書き込むようなちょっとした不便・不満などに対するアクティブな対応=アクティブサポートを行うチャネルとして位置付けられており、コールセンター業務と同様に「カスタマーサービス本部カスタマーサービス統括部」が担当部署となっている。
 対応時間はコールセンターに準じており、担当スタッフが常時10名体制で業務を遂行している。なお、担当スタッフは専任ではなく、座学やロールプレイングなど1週間程度の専門トレーニングを経たコールセンターのオペレーターが交代で当業務に就くかたちとなっている。
 使用しているアカウントは、サービス内容、携帯電話の操作方法、各種手続方法に関する問い合わせに対応する「@SBCare」、エリア(電波) 改善の要望に対応する「@SBCareDenpa」、ソフトバンクWi-Fiスポットについての問い合わせに対応する「@SBCareWiFi」の3種類。独自開発したツールによりTwitter上を5分おきに巡回して、あらかじめ設定した500前後のキーワードに関連するツイートをピックアップし、アクティブサポートを行っている。

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サービス内容、各種手続方法などに関する問い合わせに対応する「@SBCare」、ソフトバンクWi-Fiスポットについての問い合わせに対応する「@ SBCareWiFi」、エリア( 電波) 改善の要望に対応する「@SBCareDenpa」の3種類のアカウントを使用)

1日当たり300~500件の対応を実施

 SBCareについては、開設当初はほとんど告知を行っていなかったが、同社関連のツイートを発見して、アクティブに対応していくという作業において、対象者に同社の対応であることを信じてもらえないケースも生じたことから、同社公式Webサイトの「お客さまサポート」ページに紹介コンテンツを掲載。また、同社からの情報発信を担うTwitterアカウントなどでも紹介を行ったことなどから、徐々に認知度を高めつつあり、同窓口のアカウントのフォロワー数も1万5,000人以上に上っている。
 対応件数は東日本大震災の影響で一時減少したが、最近では震災前のペースに戻りつつあり、1日当たり300~500件程度の対応を行っている。対応の内容としては、約3分の2がキーワードによってピックアップしたツイートに対するアクティブサポート、残り約3分の1が同窓口のアカウントに寄せられる問い合わせへの対応や情報発信であり、その割合は対応件数の増減にかかわらず、ほぼ一定となっているとのことだ。

迅速な対応のための体制づくりに注力

 Twitter上を巡回してピックアップしたツイートについては、アクティブサポートの対象とするほか、1日2回、その内容を技術部門、営業部門、コールセンターなどの社内各部署に送信して、課題や問題の発見に役立てている。一方、SBCareでの回答のソースについては、コールセンターに寄せられる問い合わせなどを参考に必要な情報を社内各部署から収集。また、Twitter上で話題となりそうな内容のプレスリリースが発信される場合には、広報部門から事前にその内容についてのレクチャーを受けるなど、的確な対応のための準備を整えている。
 業務の評価軸としては時間当たりの回答数やツイートされてから回答するまでの時間、問題の解決率、情報発信数など、定量的なKPI指標を設定しているほか、月1回、1週間にわたって窓口利用者への満足度調査を実施し、顧客満足度向上への貢献度を測っている。特にツイートされてから回答されるまでの時間については、サービスのスタート当初はアクティブサポートの認知度が低く、ユーザーにとっては対応自体が“うれしいサプライズ”として受け止められている感もあったが、最近では認知度の向上につれて「対応が遅い」といった声も聞かれるようになってきたことから、迅速な対応のための体制づくりに注力している。ただし同社においては、以前、対応の迅速化のために、よくある問い合わせについて回答のテンプレートを用意して使用したところ、タイムラインに同じような回答が並び、「画一的な対応しかしない」といったユーザーからのクレームが発生し、すぐにテンプレートの使用を取りやめたという苦い経験もある。そこで今後は、Twitterの特性を十分に考慮した対応を行っていく意向である。

アクティブな対応により顧客満足度を向上

 同社では、SBCareのアカウントへのフォロワー数が確実に増加傾向にあることから、同社スタッフとのコミュニケーションを楽しむユーザーが拡大しつつあり、その面から顧客満足度の向上に役立っているのではないかと考えている。
 また、SBCareの最終的な目的である、Twitterを通じて同社携帯電話ユーザーの具体的なクレームや問い合わせにまでは至らない潜在的な不満の声などを拾い上げ、アクティブな対応を通じて顧客満足度を向上するという点についても、定量的な検証はこれからという段階ではあるものの、一定量の対応ができていることから、ある程度の効果を発揮できているものと考えている。なお同社では前述の通り、SBCareのユーザーを対象に月1回、1週間にわたって満足度調査を実施しているが、これまでのところ母数の少なさから結果の変動が大きく、効果的な検証を行うレベルには達していない。そこで今後は、対応件数を増大することで調査の信頼度を向上。これが実現したあかつきには、満足度にかかわる定量的な目標値を設定し、その実現のための施策を随時実行していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2011年10月号の記事