(株)ドミノ・ピザ ジャパンでは2010年4月、Twitterの公式アカウントを取得するとともにFacebookの公式ファンページを開設し、ソーシャルメディアを活用したマーケティングの展開に着手。2011年1月には、これらを活用した新製品認知・販売促進イベントも実施した。
TwitterとFacebookの活用を同時に開始
東日本124カ所、西日本58カ所、合計182カ所の直営・FC店舗を拠点に宅配ピザ事業を展開する(株)ドミノ・ピザ ジャパン。同社では2010年4月、Twitterの公式アカウントを取得するとともにFacebookの公式ファンページを開設。これらソーシャルメディアを活用したマーケティングの展開に着手した。
同社では2003年からインターネットによる注文の受け付けを開始。以後、SEM・SEO、各種インターネット広告、メールマガジン配信など、さまざまなかたちでWebマーケティング施策を展開してきた。そして、これらの施策はそれぞれ効果を発揮し、同社への注文全体に占めるインターネット経由の注文の比率も年々増加してきた。
そうした中で、同社のマーケティング施策におけるWebマーケティングの重要性も年々高まってきていたのだが、2009年ごろから、その舞台となるインターネットの世界に大きな変化が生じた。TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアの台頭である。これに伴い、Webマーケティングの領域においても、従来の企業から生活者への一方通行の情報発信だけではなく、生活者の発信力をてこに、企業が発信する情報を増幅しようとする取り組みが目立つようになってきた。
同社ではこのような認識の下、2009年10月ごろから、特に影響力の拡大を感じるようになったTwitterについて活用の検討を開始した。効果や運用の手間、“炎上”の危険性などについて多少の危惧はあったものの、この分野で先行する食品メーカーの担当者からもらった「緩いコミュニケーションが成立している世界であり、リスクは少ない」といった助言などを参考に、トライアルの価値は十分あると判断。2010年4月に公式アカウントを取得し、運用を開始した。
そして、同社が米国にルーツを持ち、その米国ではすでにFacebookがソーシャルメディアにおける中心的な地位を確立し始めていたことや、米国をはじめとする海外のドミノ・ピザでFacebookのマーケティング活用事例が数多くあったことから、「ソーシャルメディアを活用するならFacebookも」という考えで、日本での普及があまり進んでいなかったFacebookについても公式ファンページを開設。活用を開始することにしたのである。
8,000人近いフォロワー 1,200人以上のファンを獲得
Twitterについては、公式アカウントを取得した後、例えば「ドミノ」や「ピザ」などのワードによる検索を行い、同社に関連するツイートを行っているユーザーにRTして「ご利用ありがとうございます」といったメッセージを伝えるなど、地道な取り組みを開始した。これと並行して、マーケティング部のスタッフ3名、商品開発部のスタッフ1名が同社の店舗や商品、また、同社と直接の関連はない料理にまつわるツイートを行うことなどで、徐々にフォロワーを増加。2011年1月末現在では8,000人近いフォロワーを獲得するまでになっている。
なお、関連ワードを含むツイートにRTすることは、botを活用すれば自動的に行うこともできるが、同社ではあえて人手をかけて対応することで、臨機応変な“血の通った”コミュニケーションにすることを心掛けている。また、継続的なコミュニケーションを成立させるためには、夜間・休日なども対応することが有効だと感じており、実際に前出のスタッフ4名が可能な限りの対応を行っている。同社では本社スタッフの大半が店舗スタッフの経験者であり、顧客とコミュニケーションすることに喜びを見出していることから、「仕事だから」というよりは、「楽しみながら」対応を行っているとのことである。
一方Facebookについても、当初は日本での普及が進んでいなかったので、ほとんど反応がないのではないかと危惧していたが、Twitterで「Facebookのファンページも開設しました」といったツイートを行ったところ、すぐに20名程度からの反応があったことから、それらをベースとして徐々に取り組みを進めてきた。その後、2010年の終わりごろからはファンの拡大ペースがアップし、2011年1月末現在では1,200人以上のファンを獲得するに至っている。
ソーシャルメディアを活用した新製品認知・販売促進のためのイベントを実施
同社では2011年1月15日、このような取り組みの一環として、ソーシャルメディアを活用した新製品認知・販売促進のためのイベント「ボナ ペティート大試食会」を開催した。
これは従来のピザとは異なる食感を持つ同社の新製品「ボナ ペティート」の魅力を伝えることを目的に、ドミノ・ピザ全店の店頭で15時から先着50名に、「ボナ ペティート」1枚を無料で進呈するほか、50名に漏れた人には半額クーポンを提供するというもの。告知はTwitter、Facebookを中心にeメール、店頭ポスター、リリース配信などデジタル系を中心に実施し、マス広告やポスティングなどの展開は行わなかった。しかし、Twitterのフォロワー、Facebookのファンからの口コミなどで、ネット上を中心に情報が広がり、スタート早々から多くの店舗で行列ができる状況となった。
また、このイベントは単発で完結するのではなく、継続的な試みの出発点としても位置付けられている。具体的な仕掛けとしては、Facebook公式ファンページ内に「ドミノ・ピザ ジャパン応援部」を設立。「大試食会」での試供品進呈の際に「あなたをドミノ・ピザ ジャパン応援部部員に任命します」という“辞令”を添え、その中で最初のミッションとして、新製品についてTwitterでツイートしたり、Facebookでコメントしたりすることを推奨した。
すでに多くのツイートやコメントが双方に書き込まれるほか、ブログの題材となるケースも目立っており、さらにネットニュースで取り上げられるまでに波及している。なお、同社では「ドミノ・ピザ ジャパン応援部」を継続的に運営していく意向であり、今後、「応援コンテスト」などのイベントを開催することも計画している。
「ボナ ペティート大試食会」で配布されたドミノ・ピザ ジャパン応援部部員の辞令(左)とボナ ペティートをかたどった半額クーポン(右)
定量的検証はこれから
同社では、ソーシャルメディアのマーケティング活用の成果について、展開を開始した2010年4月以降、例えば、すでに40%以上に達しているインターネット経由の注文の比率が増加したり、店舗数の減少にもかかわらず、2010年12月単月の売り上げが過去最高に達したりするという事象が見られたことから、一定の成果につながっているものと分析している。
しかし、同社のプロモーション施策の中心であり、すでにROIの方程式がある程度確立しているチラシのポスティングなどと比較すると、まだまだ未知数の部分が大きいことから、この点の解明については今後の課題と考えている。
とはいえ、ソーシャルメディアのマーケティング活用は段階的に拡大していく方針であり、特にFacebookについては、今後、ユーザーが急拡大することも期待できることから、海外のドミノ・ピザの事例などを参考に、その実名性を生かした取り組みをさらに進めていく意向である。