三位一体の会議体・委員会をベースに顧客満足度向上活動を推進

富士ゼロックス(株)

富士ゼロックス(株)は、「Go To Customers」という経営指針の下、2008年度から「ダントツのCSNo.1活動」をスタート。山本社長をはじめ経営トップ層を議長とする「CS会議」「お客様接点CS委員会」「品質会議」や、販売会社社長を議長とする「CS向上委員会」を中心にCS向上施策を推進している。

“お客様の満足(CS) ”が企業活動のすべての起点

 1962年に、当時の富士写真フイルム(株)と英国ランク・ゼロックス社(1997年にXerox Limitedに商号変更)との合弁会社として設立されて以来、多くの企業に複写機、プリンタをはじめとするオフィス機器やITソリューションを提供し続けてきた富士ゼロックス(株)。
 同社は顧客満足度に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である(株)J.D. パワーアジア・パシフィックによる「2010 年日本カラーコピー機顧客満足度調査(中小企業市場、大企業市場ともに)」「2010 年日本カラープリンタ顧客満足度調査」、および「2010 年日本ITソリューション顧客満足度調査」において第1位を獲得した。
 同社には伝統的に「お客様の満足(CS)が企業活動のすべての起点になる」という考え方が根付いている。これは創業当初に、“モノではなく効用を買っていただく”というコンセプトの下、レンタルビジネスを展開していたため。
 同事業では顧客の満足が得られずにレンタルが中止されると休眠資産の増大につながり、経営全体を揺るがすことにもなりかねない。そこで直接の顧客接点となる営業部門のみならず、商品開発部門から総務・経理などの間接部門に至るまで、すべての部門が常に顧客の声を聞き、それに基づいて業務の改善をし続けることが習慣化した。いわば同社のDNAとして根付いているのだ。
 さらに、2001年12月には5項目からなる「CS行動指針」を、関連会社を含む従業員一人ひとりの価値基準として明示。そして、2008年度に「Go To Customers」という経営指針を定め、「ダントツのCS No.1活動」をスタートすることなどで、さらにその動きを加速している。

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CS革新センターが中心となり顧客満足度向上施策を推進・調整

 同社は3階層の会議体・委員会を設置し、それらが連携することにより、組織的かつ継続的な顧客満足度向上を図っている。
 1つ目は社長が議長を務め、常務執行役員以上をメンバーとする「CS会議」である。2008年度からスタートしたこの会議は、営業部門やコールセンター、Webサイトなどを通じて日々収集される顧客の声や後述するCS調査などから、経営トップ層として認識すべき課題を抽出し、スピーディーな解決を目指すもの。
 基本的には月1回の開催だが、必要に応じて月に数回開催されることもある。3年目となった2010年度には、これまでに抽出された課題に基づいて各部門で取り組んでいる改善施策の進展状況を確認するとともに、従来、複写機・プリンタなどの主要製品部門を中心に展開してきた顧客満足度向上施策の範囲をITソリューション部門や海外営業部門などを含むグループ全体に広げるべく検討を重ねている。
 2つ目は「お客様接点CS委員会」「品質会議」である。営業部門担当の常務執行役員が議長を務める「お客様接点CS委員会」は、「CS会議」での決定事項を受け、具体的な課題解決を推進。一方、開発・生産担当の専務執行役員が議長を務める「品質会議」は、商品にかかわるCS上の問題解決を担っている。
 3つ目は、全国に34社を数える販売会社に設置されている「CS向上委員会」だ。同委員会は各販売会社の社長を議長とするもので、顧客の生の声から営業活動や保守サービス活動におけるCS上の問題を明確にし、プロセスの改善や強化を図る活動を行っている。
 これらの会議体・委員会はそれぞれ単独で機能するのではなく、さまざまな場面で連携しており、例えば全国の「CS向上委員会」担当者が集まって優れたCS改善施策を相互に共有することで、グループ全体への浸透を図る「ベストプラクティスに学ぶ」といった会合に、「CS会議」の議長を務める社長も参加することなどにより、方針と実際の施策の整合性向上を図っている。
 なお、同社では、2009年にカストマーサービス本部カストマーリレーション部内にCS革新センターを設置。同センターを全社的な顧客満足度向上施策の推進・調整役とすることで、施策実現のスピードアップを図っている。さらに今後も、同センターを中心として顧客満足度向上施策の内容や進捗状況のグループ内での“見える化”を進め、全体の底上げにつなげていく意向である。

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お客様とのコミュニケーションの仕組み

2つの視点で独自の顧客満足度調査を実施

 同社は、顧客に提供する商品や営業活動などを評価してもらう「お客様満足度調査」を1975年から継続して実施してきたが、2009年度、「お客様との関係性を強く、太くしていくこと」を目的に、従来の調査体系を大幅に改定し、「企業比較CSプログラム」と「富士ゼロックスユーザーCSプログラム」の2つに整理した。
 「企業比較CSプログラム」は同社の市場内でのポジション把握を目的とするものであり、年1回、同社の名前を出さない“ブラインドサーベイ”のかたちで実施している。2009年度では約1万4,000社を対象に調査を行った。
 一方、「富士ゼロックスユーザーCSプログラム」は、顧客からの評価を基に業務改善を促進し、顧客との関係性を強化することを目的としており、製品導入後3カ月、15カ月、30カ月経過時に顧客を直接訪問し、要望を聴取するかたちを採っている。こちらは、2009年度、約1万5,000社を対象に調査を行った。
 なお、これらの調査の結果は、顧客との直接接点である営業部門や保守部門だけでなく、開発部門へもフィードバックして、新たな商品の開発などに反映しているとのことだ。
 また、同社は顧客の声(VOC)の収集・活用にも力を入れている。
 全国の営業担当者や保守担当者、コールセンターなどを通じて寄せられる顧客の不満や要望は、原則としてすべて独自に構築したVOCシステムに入力しており、例えば2009年度では、約48万件の情報が入力された。そして、入力された情報の分析結果は、前述の調査結果と同様に、社内各組織で共有され、問題解決や再発防止、新商品の企画・開発などに役立てられている。

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お客様満足度調査


月刊『アイ・エム・プレス』2010年12月号の記事