「お客さま中心主義」を掲げるAIU保険会社では、自動車保険ビジネスにおいて、代理店を通じた商品説明から契約に至るまでの営業活動と、事故対応の双方について顧客満足度の向上に注力。第三者機関による顧客満足度調査において、いずれも2年連続の第1位を受賞した。
顧客と直接コミュニケーションを行う代理店の教育・サポートに注力
1946年に外資系として初めて日本における損害保険事業を開始し、現在では、収入保険料において日本最大の外資系損害保険会社としての地位を確立しているAIU保険会社。同社は顧客満足度に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である(株)J.D. パワーアジア・パシフィックによる「日本自動車保険顧客満足度調査」の代理店系保険会社部門、および「日本自動車保険事故対応満足度調査」において、いずれも2009~2010年に2年連続で第1位を受賞した。
このうち、「日本自動車保険顧客満足度調査」は、「商品・サービス」「価格」のほか、「契約チャネル」や「契約手続」「情報提供」など、営業活動にかかわるファクターが満足度に大きく影響する構造となっている。従って、営業活動においては、いかに顧客に理解・納得してもらった上で契約に至るかが大きなテーマとなるのだが、その実現は容易なことではない。
同社のビジネスモデルでは、全国120箇所の営業拠点の下、稼動ベースでは数千のプロフェッショナル代理店(以下、代理店)が直接の営業活動を担っており、顧客と直接コミュニケーションを行うのは代理店の担当者ということになる。同社では「私たちは、お客さまにかかわるリスクに対し、コンサルティングを通じて、常に最適な解決策を提案します」という経営理念の下、「お客さま中心主義基本方針」と「お客さま中心主義行動指針」を策定、それらに基づいて事業を展開しており、当然のことながら代理店にもこの経営理念に沿った行動を求めている。
しかし、契約が利益に直結する代理店においては、ともすれば“契約を獲得する”ことが目的化しかねないという問題があることは否定できない。同社では、このような認識から代理店教育に注力しており、代理店を管轄する営業店の担当社員を対象にそのためのトレーニングを実施し、代理店教育レベルの均質化を図ることなどで、代理店の顧客対応レベルの底上げにつなげている。さらに、今後は代理店を対象とする顧客対応セミナーの実施や、代理店の顧客対応レベルを維持・向上するためのツールとして「アクティビティ・アセスメントシート」の提供なども検討中であり、営業現場での「お客さま中心主義」の徹底を加速していく意向だ。
なお同社では、業界に先駆け、代理店として独立することができる代理店育成制度「IS社員制度」を取り入れ、現在ではこの制度によって独立開業した代理店が中心となっている。このことが、同社への帰属意識、ひいては「AIUを代表してお客さまに対応する」といった意識の高さにもつながっており、本社主導の代理店教育に対しても、積極的に受容する代理店が多いようだ。
また、代理店をサポートするツール類の充実化にも余念がない。例えば新商品の発売や保険料率の改定の都度発行するパンフレットについては、同社担当者と代理店によるプロジェクトチームが内容や表現方法を検討。同業他社のパンフレットなども参考に、文字を減らしてイラストを多用したり、巻末に用語集を折り込むことで、必要に応じて用語を確認しながら読み進められるようにしたりするなど、顧客にとっての“わかりやすさ”を最大化するように努めている。
そのほか、既契約者とのコミュニケーションについても、例えば従来は代理店が行っていた自動車保険の満期案内を、2010年4月からは本社が直接DMを送付するなど、代理店に負担を掛けないかたちでの充実化を目指している。
事故受付・初期対応から保険金支払いまですべての過程で満足度向上を図る
一方、事故対応の満足度向上については、事故発生時の受付、修理工場の案内や病院への事務連絡といった初期対応(ファーストコンタクト)から保険金支払いまでのすべての過程について、契約者の満足を高めるためにさまざまな施策を講じている。
まず、AIU事故受付センターとファーストコンタクトセンターは内製により運営。全通話を録音し、上長がチェックしてオペレーターにフィードバックするほか、毎年、的確な対応を行った事例を個人情報を隠したかたちで約150例程度抽出して、その中から社内外の関係者によって特に優れた対応を選んで、担当したオペレーター1名を表彰する「ベストコミュニケーションコンテスト」を開催するなどして、品質とモチベーションの向上に努めている。
また、保険金請求の全案件は、事故相手との示談交渉など、その進捗状況を「クレームワークフローシステム」と呼ばれる進捗管理システムに入力・管理する仕組みを導入。部門内での情報共有化を図るとともに、契約者や関係者への進捗状況の定期報告などが必要な案件を担当者に毎日、リストとして提示することなどで、漏れがないよう契約者との十分なコミュニケーションの確保を図っている。
ちなみに、同社の保険金支払い部門では1事故1担当者制を敷いており、ひとりの担当者が月間50~100件もの案件を並行して担当するケースが多い。しかし、こうした進捗管理システムと担当者のお客さま対応姿勢の徹底により、多忙を理由に必要なコミュニケーションが行われないというような事態を未然に防いでいる。
そのほか、事故内容によっては同社から修理工場を紹介する必要があり、その対応品質も同社に対する評価につながるという認識から、自動車メーカー系のカーディーラーと遜色ない技術・品質レベルを持つ全国44カ所の提携修理工場を「AIUドライブインサービスセンター」として組織化。年1回、定期監査を行って技術レベルが保たれているかを確認するほか、接客対応についてもロールプレイング教育用のビデオを配布するなどして、品質の向上を図っている。
独自の顧客満足度調査を通じて業務をブラッシュアップ
同社では、今回第1位を受賞した「日本自動車保険顧客満足度調査」「日本自動車保険事故対応満足度調査」のような第三者機関による調査以外でも、独自に顧客満足度調査を実施し、業務改善に役立てている。
具体的には、最終保険金支払時に、契約者に対応の満足度を「満足」「ほぼ満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で評価してもらい、特に「やや不満」「不満」という評価が寄せられた場合にはその理由をヒアリングして内容を分析。担当者個人に課題がある場合は上長の指導や定期的な教育・研修を通じて改善を図り、オペレーションの構造上の問題があると認められた場合には業務フローの改善を実施するなどして、業務のブラッシュアップを図っている。
その結果、顧客満足度は右肩上がりで推移しており、直近では年間で「満足」「ほぼ満足」という評価の割合が94%近くに達しているとのことだ。このような試みは近年の損害保険業界では普遍化しているが、国内ではそもそも1996年に同社が業界で初めて導入したものであり、同社が早くから顧客満足度向上に取り組んでいたことの証左とも言えよう。
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