エイボン・プロダクツ(株)では2009年1月、アウトバウンドによる営業の専門チームとして「オペラシティディビション」を発足した。同ディビションでは、シニアディビションマネジャーの下、10名のスタッフが業務を遂行するという少数精鋭体制ながら、チームワークを重視して業務を遂行し、高いコストパフォーマンスを実現している。
アウトバウンド営業の専門ディビションを発足
エイボン・プロダクツ(株)は、世界100数カ国でビジネスを展開する化粧品ダイレクトセリング・カンパニーであるエイボンの日本法人として、1973年に設立された。設立当初はインポートアイテムを中心に取り扱っていたが、日本女性の肌に合った高品質な化粧品を提供するため、1976年には神奈川県厚木市に工場を開設。1979年には工場の隣接地にオペレーションセンターを設置し、ほぼ現在のかたちを整えている。
同社のビジネスの中心は、エイボンレディと呼ばれる訪問販売員が、年20回発行のカタログをベースに行うダイレクトセリング。そのほか、新聞折り込みチラシやWebによる通信販売も実施している。取扱商品は自社製造の化粧品がメインで、そのほか、健康食品、ファッション・ジュエリー、インナーウエアなども販売している。
同社では、従来からエイボンレディや顧客からの注文や問い合わせ、さらには全国各地でエイボンレディを採用・教育する外勤営業社員からの問い合わせに対応するコールセンターを設置しているほか、アウトソーシングによるアウトバウンド・テレマーケティングも展開しているが、2009年1月、これらとは別に東京都新宿区の東京オペラシティタワーの本社内に、アウトバウンドによる営業を専門的に行うディビション「オペラシティディビション」を発足し、電話による営業活動を本格的にスタートした。
同社では、基本的に外勤営業社員が全国各地でエイボンレディを採用・教育し、エイボンレディが実際の営業活動を展開するというスタイルを採っているが、近年では、営業部門のコストパフォーマンス向上のために、外勤営業社員の担当地域の見直しや人数の最適化を進めている。その一環として行われたのが、エイボングローバルグループのイタリア、オーストラリアなどで高いコストパフォーマンスを示している電話コンタクトによる営業業務の導入である。つまり、オペラシティディビションは、いわば“内勤営業”チームとして設置されたものであり、組織上もエリアごとに設けられている営業ディビションと並列するかたちで位置付けられた、完全にプロフィット志向のセクションである。
同ディビションの業務内容は、新聞折り込みチラシでの購入実績者や、エイボンレディからの紹介者、元エイボンレディなどのデータベース登録者に対し、エイボンレディへのリクルートを行うというもの。具体的には、まず、年20回発行のカタログで行っているキャンペーンなどを紹介するとともに、「スタートは口紅1本」という極めて少ない資金で収入の機会が得られることを説明して、エイボンレディとしての登録を勧める。その時点で応諾されれば申込用紙を送付するが、大半のケースではすぐには決まらないため、さらに詳しい説明のための手紙とサンプルなどを送付する。そして通常はその3日後に再度アプローチして、登録を推奨するという流れとなる。さらに、エイボンレディとなった人に対しては、6キャンペーン(カタログ発行6回)の間、電話によるコンサルティングを行い、新規エイボンレディが実績を上げるためのサポートを行っている。
少数精鋭体制で業務を遂行
オペラシティディビションの立ち上げ時には、社内からテレマーケティング経験者など3名を登用。5カ月間のテスト運用を経て、手ごたえが得られたことから、2009年6月、新たに4名の採用を行った。
採用においては、インターネットに募集広告を出稿。およそ100人の応募者があり、その中から電話で話し方や物腰などを確認する一次面接を実施。絞り込んだ応募者を対象に対面での二次面接を行い、意欲や社交性、営業活動への適性などを確認して採用者を決定した。その結果、2009年7月現在、同ディビションは責任者であるシニアディビションマネジャーの下、10名のスタッフにより運営されている。
1スタッフが担当しているデータベース登録者は約1,000人。ちなみにこれは、外勤営業社員の約7倍に及ぶ。架電時間は基本的に平日の10時から20時までで、1日・1スタッフ当たりの架電数は70コール前後となっている。
同ディビションの業務は前述の通り、“外勤営業社員が対面で行っている業務を、電話を媒体に行う”ものであるが、物理的に離れた場所でのコミュニケーションであることから難易度が高い。例えば商品について説明するケースでも、サンプルを送付していない場合、カタログだけが唯一の共有情報であり、化粧品の「香り」やインナーウエアの「手触り」などを伝えることができないため、「言葉」だけでいかに表現するかという点についてのノウハウが必須だ。また、先方の様子もわからないため、多忙かどうかを見極め、必要に応じて都合のよい時間を聞き出すトークに切り替えるフレキシビリティも要求される。さらに、一般的にコールセンターでは、円滑な対話が求められるケースが多いが、同ディビションにおいては、いわゆる「立て板に水」の話し方では共感が得られないことが多く、失礼のない範囲でのフレンドリーさが求められている。
そのほか、これまでの実際の業務を通じて、「大きな声で一方的に話すよりも、少し小さめの声でなるべく対象者に話してもらうようにした方がよい」「対象者の生活パターンを聞き出すことがその後の対応に有効である」「年齢や家族構成などデモグラフィック的な属性よりも本人の性格の関与度が大きい」など、いくつかの知見が得られている。しかしながら、現状ではいずれも断片的なものであり、成功パターンとして体系化されるまでには至っていないため、今後もオペレーションと並行して、ノウハウ・知見の蓄積・整理に努め、業務の効率化を進めていく方針である。
好業績のカギはチームワーク
オペラシティディビションが業績向上のために最も重視しているのが“チームワーク”だ。
例えば、同ディビションのスタッフの業務は、基本的に先輩スタッフが作成したスクリプトやキャンペーンごとのトーク例などをベースに行われており、大部分においては、比較的スムーズに業務が進行している。しかし、ときにはその営業志向の高さから、相手のペースを考えない押し付け型のトークにつながってしまうこともあり、そのような場合は随時、先輩スタッフが注意して是正している。また、過度に数字を追い求めなくてもよいように、月間目標などに対して先輩スタッフがなるべく早く実績を計上し、その後、後輩のサポートや指導に当たれるように努めているとのことだ。さらに、週3回ディビション全体でミーティングを実施。成功事例をシェアするとともに、全体としての数値的な目標達成をともに喜び合うことなどで、組織としての一体感を高めている。
なお、オペラシティディビションにおいては、フレックス・タイム制を採用するなど、業務における自己裁量度が高く、自分のペースで業務が遂行できる体制が築かれている。ちなみに、現状では責任感が強いスタッフが多く、また、「仲間とともに目標を達成しよう」という雰囲気が醸成されていることから、各スタッフとも極めて能動的に業務に取り組んでおり、組織として高いモチベーションが保たれているとのことである。
東京オペラシティタワーの本社内に置かれた電話コンタクトによる営業を専門的に行うディビション「オペラシティディビション」