ケータイとの連動でカラオケルームが販促メディアに進化

(株)第一興商

業務用カラオケの最大手、(株)第一興商は近年、ケータイやパソコンへの配信事業に注力し、おサイフケータイと同社のカラオケシステムを活用したサービスやタイアップ・キャンペーンなどを積極的に展開している。カラオケルームはおサイフケータイによって多彩なコンテンツが利用できるほか、タイアップ企業の販促効果を生み出す場になっている。

インターネット上に歌った楽曲を公開することができる「DAM★とも」

 業務用カラオケ事業のリーディング・カンパニーとして知られる(株)第一興商は、1971年に音響機器販売店として創業。その後、1976年に業務用カラオケ事業に参入し、1988年9月には福岡市博多区で最初のカラオケルーム店舗「ビッグエコー二又瀬店」を開設した。カラオケシステムが8トラック、レーザーディスク、通信カラオケと移り変わる中で、ハード・ソフト両面において多様化・高度化するニーズに対応してきたのが同社の歩みでもある。1994年から展開した通信カラオケ「DAMシリーズ」は、2003年発売の「BBcyber DAM」からブロードバンド環境に本格的に対応した。現在、商品力と実績に裏付けられた信頼性により、市場のトップシェアを獲得している。
 同社では、業務用カラオケ事業のほかにWeb配信事業を展開しており、その中の携帯電話向けサービスとして、着信メロディー配信サイトや「カラオケ@dam」など、計9サイトをそろえている。
 また、同社ではおサイフケータイを活用したポイントプログラムによる会員制度、「club DAMメンバーシップ」を設けている。有料コンテンツ利用時に100円につき1ポイント(1円分)が加算されるようになっており、ポイントの有効期限は最長2年間。
 当初は非接触型ICチップを使った「FeliCa(フェリカ)」を内蔵したカード発行による会員制度であったが、2004年4月からFeliCaの機能が搭載されたおサイフケータイのサービスが開始されたことに伴い、これに対応するアプリケーションを提供。カード会員と同等の機能をケータイで実現できるようになった。加えてケータイに付随する多彩な機能を活用することで、それまで以上にカラオケを楽しめるようになっている。
 その一例として昨年12月から開始した「DAM★とも」は、同社のカラオケシステム「プレミアDAM」と「DAMステーション」、または「プレミアDAM」と「デンモクiD」のあるカラオケルームで、自分が歌った歌を「DAM★とも」サイトに送信・登録し、インターネット上に歌った楽曲を公開することができるサービスだ。「DAM★とも」に登録された歌は、ケータイ、パソコンからアクセスすれば自由に聴くことができ、URLをeメールで送ったり、ブログに貼り付けることで、友人やSNSのカラオケコミュニティーの仲間に聴いてもらうことも可能になる。

ケータイからの会員登録者が急増中

 同サービスを利用するには、ケータイもしくはパソコンから「DAM★とも」サイトにアクセスし、ニックネーム・地域・性別・生年月日・年齢を入力して、「club DAMメンバーシップ」の会員登録(無料)を行うことが必要になる。
 現在、同社のカードとおサイフケータイを合せた会員数は約270万人で、サービスを開始してから毎月4万~5万人ペースで増加している。ケータイからの会員登録者は現状、全体の約1割だが、昨秋からQRコードによるプロモーションを強化したこともあって、ケータイからの会員登録者が顕著に増え、新規登録者ではカード登録会員数を上回っている。ケータイ会員の属性は20代が半数以上で、性別では約6割が男性となっている。
 またこの7月1日~31日には、おサイフケータイ5周年記念として、新規登録会員を対象に「ファースト・ログインキャンペーン」を実施。「DAM★とも」から専用アプリをダウンロードして「DAMステーション」または「デンモクiD」にログインすれば300ポイントが付与され、さらに「DAM★とも」サイトで「clubDAMメンバーシップ」の会員番号にひも付けすると(「DAM★とも」IDを登録)、200ポイントをプレゼントするキャンペーンを行った。貯まったポイントは有料コンテンツ利用時に清算できるほか、600ポイント以上であればEdy(エディ)ギフトやほかの商品との交換も可能だ。
 なお、現在、同社のカラオケシステムで利用できるコンテンツは「検定」「オーディション」「ゲーム&ミュージック」など9ジャンルがあり、コンテンツ数は期間限定企画を含めて30を超える。

おサイフケータイを活用して気軽にオーディションに参加

 同社のおサイフケータイ活用の特徴は、販促ツールとして積極的にタイアップ・キャンペーンなどを展開している点だ。メディアミックスの事例として、日本テレビ系のスター歌手を発掘するオーディション番組「歌スタ!!」は、同社の「DAMステーション」を通じてのみエントリーができる仕組みになっている。
 これはおサイフケータイによって、エントリー曲の登録を容易にし、エントリー料金も電子マネーのEdyで決済できるというもの。従来のオーディションに必要であったテープやCDなどパッケージ・メディアの制作と送付の手間を省き、ケータイ持参で同社システムがあるカラオケルームに行くことで、気軽にオーディションに参加できるのが特長だ。
 このほか、毎月、開催される同社のカラオケシステムを活用したアーティスト・タイアップ・キャンペーンも、おサイフケータイによって気軽にチャレンジできる企画になっている。そのひとつ「ポカリスエット合唱部」は、日本テレビ系列で放映中の番組「ブカツの天使」のテーマ曲を同社のカラオケ・コンテンツ「ランキングバトル」で歌うことで、9月まで毎月抽選で100名にポカリスエット1ケースをプレゼントするというもの。同コンテンツの利用件数は毎月約200万件に達する。
 これらの例からもわかるように、タイアップ・キャンペーンは、カラオケルームを基点に、テレビ番組とスポンサー、テーマ曲を歌うアーティストの販促・宣伝効果を生み出す仕組み。音楽のほかに、新作映画、タレント関連があり、毎月のプレゼントキャンペーンを目当てに同社のカラオケルームを利用するリピート効果も醸成されているようだ。
 また、カラオケルームの利用者の属性が“20代が中心”“音楽好き”と、明確にセグメントされていることから、プロモーション手段を模索していたレコードメーカーもカラオケルームを販促活動の重要な拠点として認識し、その販促効果に期待している。実際問題、同社への営業アプローチも活発で、毎月のタイアップ・キャンペーンの商材選出に腐心しているという。
 同社では、通信ネットワーク化によって、カラオケルームがメディアの機能も内包してきたと認識。タイアップ・キャンペーンはレコードメーカーなどの市場活性化に寄与するだけでなく、タイアップ企業に同社のカラオケシステムの宣伝をしてもらえるという相乗効果を生んでいる。
 今後もおサイフケータイの販促活用を機軸に、利用者との接点になる同社システムの利用を促進するため、簡単でわかりやすいサービスを心掛けるとともに、他社との提携により生活者にとって魅力的なコンテンツを提供し、DAMファンを増やしていく展望を描く。

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月刊『アイ・エム・プレス』2009年9月号の記事