クオリティの高いメーカーとして世界への中古車販売も拡大

(株)ガリバーインターナショナル

顧客から買い取った車を、オークションを通して卸売りする「買取」という業態そのものが存在していなかった1994年当時、ライフスタイルに合わせて車を気軽に乗り換えられるような自動車の流通革命を起こそうと、「車買取専門店」として開業した(株)ガリバーインターナショナル。買い取った車を1週間程度でオークション会場に売却するという、買い取りに主眼を置いた斬新なビジネスモデルで成長を遂げた同社のさらなる取り組みを紹介する。

買い取りビジネスの舞台裏

 1台ごとに状態が異なる中古車の価格設定があいまいで、一般的に不透明に見られていた従来の中古車業界。値落ちするスピードが速く、流通が未整備であった日本の中古車市場において、全国統一価格を提示し、適正な価格で流通させることで、中古車の信頼性と買い取りビジネスの認知向上に貢献したいとインフラを整備。(株)ガリバーインターナショナルの原点ともいえる、買い取りビジネス誕生のプロセスだ。1994年10月、福島県郡山市で産声を上げた。
 従来の中古車ディーラーが行ってきた展示販売では、一定規模の土地、展示車数が必要であり、加えて規模に応じて人件費も上昇するなど、多大なコストが発生していた。また、中古車の価格が2~3週間程度で変化する日本の中古車市場では、長引く在庫期間が商品の価値を劣化させ、中古車ディーラーは常にリスクを抱えていた。日本の中古車市場は、1992年に初めて中古車の年間登録台数が新車の販売台数を上回り、2008年現在では、新車販売台数の535万台に対して、中古車登録台数は753万台。ただし、中古車登録台数は業者間取引により二重にカウントされる可能性があり、実売台数は半分程度と推定されるため、これを加味すると、国内における新車販売台数と中古車実売台数の割合は3:2となる。一方、欧米においてはこの比率は1:2。つまり、日本は欧米と比較して新車の割合が高いために、中古車の値落ちが早いというわけである。
 かつて、中古車ディーラーといえば、イメージの悪さやマーケティング手法の未熟さ、さらには自動車の車種が多くマッチングする率が低いという中で、押し売り販売を行ってきたのが実情だった。そんな中で、あえて展示販売を行わず、新車ディーラーや中古車販売店で販売しきれなくなった在庫車両をオークション会場で他のディーラーに迅速に売却。在庫のリスクやコストを大幅に削減することにより、ユーザーにその分の負担をかけることなく、通常よりも高く車を買い取る仕組みを構築したのである。
 2000年3月の沖縄出店で、全国への店舗展開を達成。2008年2月末現在、全国約450店舗(うち直営300店、FC150店)において年間約25万台の車の買い取りを行うことで、1台当たりの粗利は低くても大量に車を扱うことで利益を上げる、スケールメリットを活かしたビジネス・スタイルを可能にした。売上高は1,900億円(2008年2月期)。内訳は85%が買い取り事業(卸売事業)で、残り15%が販売事業(小売事業)となっている。

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車買取専門店ガリバー環七西新井店

C to B to B to Cで優位にビジネスを展開

 同社が従来から力を入れてきた買い取り事業では、「本部一括査定システム」により、本部の査定士が最新のオークション落札価格データの分析を元に値付けを行っている。これにより値付けのバラツキがなくなり、全国で同じレベルでのサービス提供が可能になるのである。なお、同社では2005年に、車輌自動査定システムに関する特許を取得している。
 買い取りを中心に進めてきた同社が販売にシフトし始めたのが1998年。画像による車販売システム「ドルフィネット」をスタートさせ、全国の同社店舗で買い取った車をオークション会場へ出品するまでの7~10日という限られた期間にインターネット上で販売する仕組みを新たに構築した。このシステムはBとCの双方に対応するが、Cに関しては決済などの関係があるたため、来店か出張を通しての販売を行っている。
 画面上では、車両の画像や基本データをはじめ、過去の修復歴、および小さなヘコミやキズに至るまでを確認し、外装100点満点、内装5段階の評価で、当該車の価値をトータルに知ることができる。これにより、常時約3,000台の“新鮮”な車両の検索を実現すると同時に、実際に車を見てもわかりにくいコンディションや修復歴などの情報を詳しく伝えることで、購入時の不安を解消した。この「ドルフィネット」による販売は、B to BとB to Cを含め、年間約3万3,000台に上り、累計販売台数は約30万台となっている。
 また2005年からは、同社独自のインターネットによる完全リアルタイムオートオークション「GAO!Auction(ガオー!オークション)」を開始。これは、同社店舗で買い取った車を、会員企業である約1万8,000社の自動車関連事業者がインターネットを利用してセリ方式で落札するシステムである。
 サイクルとしては、月曜日に「GAO! Auction」が開催されるため、例えば金曜日に車を購入した場合、金曜日から「ドルフィネット」に車が登録されて売りに入り、月曜日に「GAO! Auction」へ出品され、残った車が全国約130カ所にあるオークション会場に流れるといった具合だ。

車両画像画面

画像による車販売システム「ドルフィネット」。当該車の価値をトータルに把握できる

従来になかった“中古車メーカー”への脱皮

 従来の中古車ディーラーに付きまとっていた“胡散臭さ”の払拭と、フレンドリーであるための仕掛け作りを考え、同社ではインターネットやテレビ、ラジオ、新聞、屋外広告、雑誌などあらゆる広告メディアを使って、Webサイトや店舗への集客を図っている。また最近では、女性スタッフのみの店舗もオープンした。
 同社では、車を売るために来店する顧客の60%が乗り換えを希望し、さらにそのうちの半分弱が中古車の購入を希望することから、車を売る客の開拓を重視。まずは自動車ユーザーによる相見積もり依頼先の1社に入ることが重要であると認識している。
 同社では以前から、顧客の誕生日にワインを贈ったり、定期点検や車検時に電話をかけるなど、顧客とのきめ細かな関係作りに取り組んできた。コールセンターでは、電話やインターネットを通してさまざまな問い合わせや相談に対応するほか、出張査定サービスも行うことで、買取と販売の双方に幅広く対応している。
 設立から14年目を迎えた今年は、1998年に株式上場してからちょうど10年の節目を迎える。これからの時代は“中古車メーカー”が主流になると考える同社では、今後はB to Cの販売と品揃えの強化を図っていく方針。環境・資源問題や新車価格の高騰により“車離れ”が進む昨今、顧客ニーズに合った商品を提供していくことが、中古車メーカーとしての社会的存在価値になると考えている。あえてメーカーを自称することで、今まで培ってきた品質や信頼、安心・安全の上に、中古車の買い取りからエンドユーザーへの販売に至るまでのループを完成させたいという。
 「メイド・イン・ジャパン」と同様に、「メイド・バイ・ジャパニーズ・カンパニー」ともいえる、日本の中古車の価値が出てくるとする同社では、世界へ向けた販売も見据えている。代表取締役社長2名を置く新経営体制を今年からスタートさせた同社。2008年を第2のスタートと位置付け、さらなる発展を目指していく。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年10月号の記事