中高年層の顧客化を目指し会員一人ひとりに合った本物のサービスを提供

セントラルスポーツ(株)

1970年5月の設立以来、常にわが国の健康産業をリードしてきたセントラルスポーツ(株)。同社では2007年から「ウェルネスクラブ」において、会員からのさまざまな相談を受け付ける専用窓口「コンシェルジュデスク」の導入を開始した。中高年層の顧客化を目指したこの試みはおおむね好評を博しており、新規店舗を中心に随時導入を図っていく方針だ。

中高年層の顧客化に向けた取り組みの一環として「コンシェルジュデスク」導入を開始

 世界に通用するアスリートの育成を目指し、1970年5月に設立され、以後、1983年11月にはスポーツクラブの名称に初めて“フィットネスクラブ”を冠した「セントラルフィットネスクラブ新橋」を開設、さらに2004年3月には東京証券取引所市場第一部上場を果たすなど、常にわが国の健康産業をリードしてきたセントラルスポーツ(株)。現在では、“カラダの健康”をつくる「フィットネスクラブ」から、リラクゼーションや癒しといった“心とカラダの健康”をつくる「ウェルネスクラブ」へと事業を拡充し、「0歳から一生涯の健康づくりに貢献する」という企業理念に基づいた活動を続けている。
 同社では2007年から、「ウェルネスクラブ」において、会員からのさまざまな相談を受け付ける専用窓口「コンシェルジュデスク」の導入を開始した。また、2005年の後半から、団塊の世代の退職が始まる2007年に焦点を当てたプロジェクトチームを発足。リタイア後の中高年層の顧客化に向けた取り組みを開始していた。同チームでは、この世代の特徴を「本物志向」と「多様性」にあると考え、その顧客化のためには会員一人ひとりに合った本物のサービスの提供が必須であると結論付けた。そして、その実現のための一策として、運動にかかわることだけでなく、健康維持に向けた日々の食事やクラブ周辺の情報、さらには近隣の他社施設の提供プログラムなど、総合的な相談・問い合わせを受け付ける窓口として「コンシェルジュデスク」の導入を決めたのである。インストラクターやフロントスタッフなど、いわば“現場スタッフ”とは一線を画したスタッフによってきめ細かい対応を提供することで会員満足度の向上を図り、さらにそれらの会員からの口コミなどによる入会促進につなげていこうとしたわけだ。

コンシェルジュ役はマネージャークラスのスタッフが担当

 「コンシェルジュデスク」の導入は、成城店(東京都世田谷区)、大森店(東京都大田区)、北本店(埼玉県北本市)など、2007年にオープンした新店舗5店からスタートした。既存店舗では物理的にデスク設置スペースを確保できないケースが多いことから、今後も新店舗を中心に導入を進めていく意向だ。ただし、既存店舗でも責任者であるマネージャーがレセプション(受付カウンター)の外に出て、会員に積極的に話しかけるようにするなどして、同様の役割を果たせるようにしている。
 「コンシェルジュデスク」には、会員からの相談や問い合わせに即応することができるよう、マネージャークラスのスタッフを充てている。通常業務と並行して担当していることから常時開設することはできないが、各クラブにおいて来館者が多い時間を見計らい、原則として1日2時間×3セット以上開設するようにしているとのことだ。なお、経験豊富なスタッフを充てていることから、これまでのところ導入のための特別な研修などは行っていない。
 実際の相談・問い合わせの内容としては、施設やインストラクターなどのスタッフに対する意見・要望・クレーム、プログラム改編に関する要望などが中心。また、身体の痛みに対する対応方法やトレーニングの方法など、本来、インストラクターに聞くべき内容も少なくないが、これらにも対応している。なお、実施前にはクラブに関連するさまざまな事象についての質問があることを想定し、例えば施設内の植栽や施設に展示している絵画、周辺の飲食施設などについても情報を収集し、対応の準備をしていたが、これまでのところ、そういった内容は少なく、同社が提供しているサービスに直接関係するものが大半であるとのことだ。

セントラル写真

「コンシェルジュデスク」では、施設やインストラクターなどのスタッフに対する意見・要望・クレーム、プログラム改編などを中心に、会員の相談・問い合わせに対応している。今後は、新規店舗を中心に随時導入を図っていく予定

フロント運営の円滑化や安全面の向上効果も

 同社では「コンシェルジュデスク」の導入から間もないこともあり、数値的な効果検証はこれからという段階である。しかし、導入目的である中高年層の顧客化という観点で言えば、導入店舗における中高年層の月間退会率は、同社全施設の平均と比較して低い模様であり、また、「マネージャーの顔がわかり、安心できる」など、会員の反応もおおむね好評であることから、一定の効果は上がっていると認識している。
 また、副次的な効果もあった。例えば、レセプションに長時間におよぶ問い合わせ対応が求められ、チェックイン/チェックアウト業務が滞るようなことがなくなるなど、フロント運営が円滑に行われるようになった。さらに、2007年12月に長崎県佐世保市のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」で発生した銃乱射事件などにより、入会希望者や見学者などを含め不特定多数が来訪する施設の安全性確保がクローズアップされている中、レセプションより出入り口に近い場所に「コンシェルジュデスク」を設置し、来訪者に積極的に声掛けをすることで、来訪目的の確認などができるようになり、安全面の向上にもつながっている。

最大の課題は人員体制の確立

 同社では今後も「コンシェルジュデスク」導入を進めていく方針であるが、すでにいくつかの問題点も挙げられている。
 最も大きな問題点は人的リソースに関するものだ。前述の通り、「コンシェルジュデスク」にはマネージャークラスのスタッフを充てており、通常業務と並行して担当しているが、当然のことながら当該スタッフの業務負担は大きくなる。また、これをカバーするためにスタッフを増員すれば労務費が増加することになり、個別に採算性が求められる各店舗にとっては重荷となる。今後は「コンシェルジュデスク」導入効果の数値化を図ることで、費用対効果を明確にし、人員体制確立の指針にしていく考えだ。
 そのほか、例えば現状では「コンシェルジュデスク」担当スタッフはスーツを着用しているが、一部で「堅苦しく、敷居が高い」といった声も聞かれることから、カジュアルな服装にすることを検討するなど、ディテールについても随時改善を図っていく意向だ。
 なお、今後は、新規店舗を中心に随時「コンシェルジュデスク」の導入を図っていく方針だ。そして、満足度向上により既存会員の継続率を高めることで、新規会員獲得のための広告宣伝コストを圧縮。その部分を施設の充足などに振り向けることで、既存会員のさらなる満足度向上につなげるという好循環を実現していく考えである。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年6月号の記事