ネット予約で季節を先取りし販売動向をいち早くキャッチ

ドリームビジョン(株)

キュートな色づかいと時代を先取りした洗練されたファッション商品で10代から20代の女性の圧倒的支持を得ているドリームビジョン(株)。今年で創業10年の若い会社だが、順調に業績を伸ばしてきている。その強力な原動力になったのは、PC、モバイルでのインターネット通信販売。昨年9月には「モバイルショッピング大賞」(主催:D2C)を受賞、10月には東京・渋谷区にプレスルームを開店するなど、さらなる発展を見せている。

SPAで利益率のみならず社員のモチベーションを向上

 以前は路面店で雑貨の小売りをしていたドリームビジョン。10年ほど卸とリアル店舗での販売を経験した上で、ネット販売へ移行したという経緯がある。そのきっかけは、目の前に大型店ができ、またたく間に売り上げがガタ落ちしたこと。大資本でなければよほどの差別化を図らない限り、何があっても生き残れるだけの力は持てないと痛感した経験であったという。
 そこで同社では、2003年12月に、物理的な店舗や立地条件に左右されないネット販売に参入。立ち上げ当初の取扱商品はダイエットコスメであったが、2005年の薬事法の改正で広告が制限され、売り上げが激減。顧客の99%が女性だったことから、ファッションを扱うことにしたという。卸ではなく自社ブランドという道を選んだのは、岡社長自身の「モノをつくりたい」という強い意志によるもの。まずは、単価の安い靴・バッグの仕入れ・販売から始めて半年ほどで売る力をつけ、SPAとしてのビジネスに踏み切ったのは約1年後のことだった。
 SPAの利点は、利幅が大きいことである。現在の粗利は50~60%。数字上の利益ももちろんだが、自社ブランドをもつことでモチベーションが上がるなど、社内の意識面におけるメリットも大きいという。

ケーススタディ

プレスルームを兼ねた東京のショールーム

無名ブランドとしてのスタートだけに積極的な広告展開で認知度をアップ

 同社では、ネット販売開始当初からの自社ECサイト「夢展望」、楽天のショッピングモールに加え、2007年よりYahoo! ショッピング、ビッターズのショッピングモールへの出店も開始。このうち「夢展望」と楽天ではPC版とモバイル版の双方を備えていることから、現在では計6サイトでネット販売を展開していることになる。
 無名ブランドとしてスタートしたので、思うような認知を得られないという苦しさもあったが、10代後半から20代前半までの購読者層を持つ雑誌への広告出稿などに月間2,000万円を投入、積極的な広告展開で認知度を上げてきた。雑誌広告ではあえて“売り”を立てずに、ブランド・イメージの向上を図ると同時に、QRコードを用いたWebサイトへの集客に注力している。
 このほか、テレビドラマや映画などへの衣装提供も、同社の認知度を高める上で大きく寄与している。
 2008年度の総売上高は約30億円の見込み。このうちモバイルによる売上高が7割を占めており、楽天市場のモバイルショッピングでは同社がトップを誇っている。こうした中、昨年9月には(株)ディーツー コミュニケーションズが主催する「D2Cモバイルショッピング大賞」で優秀賞を受賞した。

自社サイトとショッピングモールを同じ建物への入り口として位置付け

 ネットショップでの取扱商品はアパレルとファッション雑貨約3,000アイテム。婦人物が大半を占めるが、紳士物も約5%程度取り扱っている。品揃えをタイムリーに変更できるというネット販売の特徴を活かして、ほぼ2カ月のサイクルで商品を入れ替えると同時に、店舗を2カ月先取りした商品ラインアップを実現。例えば、4月には水着や浴衣、6月にはブーツを販売するといった具合だ。また、需要予測の難しいファッション分野だけに、総取扱商品の90%前後は予約販売となっており、売上高ベースではこれが約50%にも達する。これがSPAとしての同社を支える大きな情報源と言えるだろう。
 また、「夢展望」もショッピングモールも、基本的に取扱アイテムは同じであることから、同社ではこれを「同じ建物の中央口・南口・西口のように入り口がいくつかあるようなもの」ととらえている。しかし、顧客の年齢層を見ると、「夢展望」が10代後半から20代後半まで広範囲に渡っているのに対し、楽天では24~25歳、ヤフーでは26歳前後、ビッターズでは10代後半から20歳前後と、各サイトのコア・ユーザーの違いが如実に現れている。
 また、商品単価が3,000円であるのに対し、平均客単価は約6,000円。5,000円以上になると送料無料としていることから複数アイテムのまとめ買いが多く見られるのが特徴だ。2点購入するにもそれほどの決心を要する金額ではないが、友人や姉妹で1点ずつ購入するというスタイルが多く、これがモバイルの売上高を増大させているというのが同社の見方だ。
 2008年度の売上高30億円のうち自社サイトの売り上げは2割。楽天、ヤフー、ビッターズを合わせて8割である。単純平均すると、ショッピングモール当たりの売り上げが自社サイトの売り上げを上回る格好だが、同社ではこの要因を、大手ショッピングモールは集客力が高いため、商品がヒットしやすいと分析している。自社サイトに関しては、運営経費が安く、制約も少ないが、当然のことながら、ショッピングモールほどの集客は見込めないのが実情である。

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自社サイト「夢展望」のトップ画面

自社サイトへの集客には、アフィリエイトとメルマガを活用

 「夢展望」への集客施策としては、前述の雑誌広告に加え、アフィリエイト・プログラム、および登録会員に対するメールマガジン(メルマガ)の配信を実施している。
 アフィリエイト・プログラムでは、リンクシェアのサービスを利用。現在、数千人のアフィリエイトが活動しており、自社サイトによる売上高約6億円の1割に当たる6,000万円前後をもたらしている。同社としては今後、アフィリエイトの人数を増大することで、現在1割の売上高構成比を3割にまで引き上げていく意向だ。
 また、メルマガについては、現在までの登録アドレス数は約80万件。メルマガ配信数は50万~60万件で、このうち同社の購買実績客は20万件弱とのことである。登録アドレス数とメルマガ配信数に開きがあるのは、アドレスを頻繁に変更する登録者が多いためで、このメンテナンスをどうするかが今後の課題になっている。
 なお、同社では、2010年の株式上場を目指している。岡社長によると、上場の狙いは「モバイル・ショッピングの信用度を上げる」こと。リアル店舗での経験を通してネット販売、そしてSPAモデルへとたどり着いた同氏の「夢展望」は、上場を通してネットショップ全体の信用度を上げ、そのリーディング・カンパニーとしての位置を確保することにあるようだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年5月号の記事