メルマガやWebサイトをフル稼動しポイント倶楽部会員のランクアップを図る

楽天(株)

楽天(株)は楽天スーパーポイントを獲得しているアクティブユーザーを対象に「楽天ポイント倶楽部」を創設。会員を4ランクに分け、それぞれのランクに応じた特典を提供している。現在、同社では、会員ランク別にメルマガやWebサイトでランクアップやポイント倍増オファーを展開し、会員の利用促進と同時にランクアップを図っている。

楽天グループの相乗効果で過去最高の売上高を記録

 1997年の創業以来、来年で10周年を迎える楽天(株)。1997年5月のインターネット・ショッピング・モール「楽天市場」のオープンを皮切りに、企業向けサービス取引市場「楽天ビジネス」、ゴルフ場予約サイト「楽天GORA」、個人向けオークションサイト「楽天フリマ」、楽天証券(株)によるオンライン証券取引サービスなど、楽天グループはさまざまな新しいサービスを創出。また、M&Aや業務提携を通じて宿泊予約などの総合旅行サイト「楽天トラベル」、楽天KC(株)によるクレジット・カード事業などサービスの枠組みを拡大してきた。
 また、ID統合(各サービスのユーザIDを楽天会員IDとして統合)により、同グループが提供するさまざまなサービスをひとつのIDで利用することができるワンストップ・サービスを実現。さらには、「楽天スーパーポイント」の積極活用により、各サービス間の回遊性を促進し、ユーザーの利便性を格段に高めることに成功した。これらの取り組みの結果、サービス間の“シナジー効果”により、グループ全体の流通総額が大きく伸長。例えば、楽天市場と楽天トラベルを併用するユーザーの割合が、2005年6月の12%から2006年5月には20%に、楽天が提供するサービスを2つ以上利用している割合では、2005年3月の18.6%から2006年6月には23.1%に増加した。このことから、楽天ブランドでトラフィック(Webサイト来訪者数)を集め、あらゆる会員に質の高いサービスを提供することが高収益につながっていると見ている。同社がこの8月に発表した2006年6月中間決算では、売上高が前年同期比約2.9倍の1,053億円、営業利益は77.7%増の192億円、最終利益が37.1%増の71億円でいずれも過去最高となった。

楽天ポイント倶楽部を設けて会員を4ランクに分ける

 同社が中間決算において売上高などで過去最高を記録することができたのは、楽天市場や楽天トラベル、楽天チケットなどの各種サービスを利用する楽天会員の存在が大きいと言える。
 同社はこうした楽天会員に対して、2002年11月から楽天市場内の買い物やサービス利用時にポイントを付与する「楽天スーパーポイント」(100円につき1ポイント)の提供を開始した。2003年10月からは、ポイントプログラム「楽天ポイント倶楽部」を創設。「レギュラー会員」「シルバー会員」「ゴールド会員」の3ランクに分け、過去6カ月間のポイント獲得数と利用回数で会員ランクが決まり、翌1カ月は該当ランクの会員特典が受けられるサービスをスタートした。2006年5月からは、予想を上回るペースでゴールド会員が増え、さらに高いステータスのニーズが高まったため「プラチナ会員」という最上位ランクを新たに設けた。
 それぞれの会員資格は、レギュラー会員は楽天スーパーポイントを獲得すれば自動的に入会。シルバー会員はプラチナ会員が追加になったことで、半年間で300ポイント以上・3回利用から、200ポイント以上・2回利用に変更。ゴールド会員は1,500ポイント以上・10回利用から、700ポイント以上・7回利用に変わった。そして、プラチナ会員は2,000ポイント以上・15回利用が必要だ。同社では、購買金額よりも利用頻度を重視しており、購入金額に関係なく6カ月間で2回以上利用するとランクアップできるのが特徴のひとつになっている。もうひとつの特徴は、過去6カ月間のポイント獲得数と利用回数で会員ランクが変わっていくので、ランクダウンした場合でも翌1年間待つことなく、すぐに復帰できるということだ。現在、楽天ポイント倶楽部の会員数は公表されていないが、楽天会員約2,200万人に占める割合はそう低くないと推測できる。
 会員ランクは、「ポイント明細のお知らせ」メールで連絡すると同時に、プラチナ・ゴールド・シルバー会員は、ログイン後の楽天スーパーポイント専用のWebサイトのトップページ右上部にスーパーポイントの保有数とランク情報が表示されるようになっている。そこから、「プラチナ会員専用ページ」「ゴールド会員専用ページ」「シルバー会員専用ページ」にアクセスすることができるわけだ。
 さらに、それぞれのランク別の限定特典も豊富だ。「プラチナナイト倶楽部」は、夜だけ開催する激安タイムセールやお得なイベントをプラチナ会員だけにeメールで知らせる。「ボーナス福引」は、プラチナ・ゴールド会員限定で、楽天市場から月に1度のハズレなしのポイントプレゼントを行うもの。「ポイント優待キャンペーン」は、楽天市場の出店企業の協力のもと、対象ショップで買い物をすると、会員ランクがプラチナ・ゴールドならポイントが10倍、シルバーなら5倍、レギュラーは2倍になるサービスだ。「会員向けメルマガ」は、ポイント倶楽部会員限定のお得な買い物情報を、会員のランク別にポイント明細メールで配信するものだ。ランク別に異なる買い物情報がメルマガで提供されるため、レスポンス率も高いという。そのほか、詳細は割愛するが「バースデー特典」「スロット懸賞」「マンスリー倶楽部」といった特典がある。

ポイント倶楽部会員のカスタマーシェアの拡大を目指す

 同社によると、プラチナ、ゴールドの会員ランクを維持するポイント倶楽部会員が非常に多いうえに、毎月レギュラーからシルバー、シルバーからゴールド、ゴールドからプラチナへとランクアップする会員が増加。優良顧客と言えるシルバー以上の会員は増大傾向にあるという。
 同社がこうした優良顧客の維持・拡大施策として展開しているのが、楽天グループのサービスを横断的に利用することを促す「ポン! カン!! キャンペーン」である。これは、対象期間中(2カ月間)の楽天サービス利用数(3サービス以上)によって、期間中に獲得した楽天スーパーポイントが2倍から最大6倍になるサービスだ。例えば、楽天市場と楽天ダイニング、楽天ブックスの3つのサービスを利用すると、ポイントが2倍になるという仕組み。会員にとっては利用数をクリアすればポイントが最大6倍になるので、このサービスの利用率はとても高いという。また、楽天スーパーポイント専用のWebサイトの右側には「ポンカン攻略状況」が記載され、「あと3サービス利用で獲得ポイントが6倍に」といったオファーも行っているので、利用促進と同時にランクアップに結び付いている。
 そのほか、メルマガでアプローチして、それまでに購入したことのない商品を“ポイント”というインセンティブを通して購買に結び付けると同時に、会員のランクアップを図る工夫も行っている。
 現在は、 ランク別とはいえ、 メルマガで幅広くアプローチしているため、会員一人ひとりにマッチした情報を提供できていないところもあるので、今後は購買履歴などにより会員をセグメントして個々の会員に最適な情報を配信していくことも検討中だ。また、プラチナ会員に対してのリワードをさらに充実していく意向。
 同社では今後、楽天グループのシナジー効果をさらに発揮させ、ポイント倶楽部会員の消費金額に占めるグループのカスタマーシェア拡大を目指していく。

楽天

ログイン後の楽天スーパーポイント専用Webサイトのトップページの右上部には現在の保有ポイントやランク情報が表示されるようになっている。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年10月号の記事