(株)ヒガ・インダストリーズは、全世界60カ国以上で7,000店舗を上回る「ドミノ・ピザ」の日本法人。1985年に日本市場に初めて宅配ピザを導入。現在、関東・関西・名古屋・九州地区に約160の直営店舗のほか、フランチャイズ店を展開している。同社は、競合他社に先駆けてモバイルサイトを立ち上げ、いち早くケータイを活用したマーケティングを展開。2005年3月にはケータイ向けのオリジナルゲームも開発し、ブランディングを推進している。
宅配ピザとケータイの親和性の高さに着目
世界60カ国を超える国々で7,000店に上る宅配ピザショップを展開する「ドミノ・ピザ」。米国ドミノ・ピザ社とのライセンス契約により、日本においてドミノ・ピザを運営するのが(株)ヒガ・インダストリ-ズである。1985年、同社は日本において初めて宅配ピザをスタートさせた。以来、宅配フードビジネスのパイオニアとして、ピザの宅配という新たな市場の形成に大きな役割を果たしてきた。
同社がケータイを活用したマーケティングをスタートしたのは、1999年に(株)NTTドコモが「iモード」サービスを開始した時期に遡る。同社がWebサイトの構築に本格的に取り組み始めた頃で、それに併せてモバイルサイトを立ち上げることを決定した。当時のモバイルサイトには、商品メニューや店舗検索といった基本的な機能を搭載。競合他社に先駆けてモバイルサイトを立ち上げたのには、2つの理由がある。ひとつは、宅配ピザとケータイの親和性の高さ。もうひとつは、同社の主力販促ツールであるチラシは世帯単位の配布であるのに対し、ケータイはお客様一人ひとりに、しかもダイレクトに情報を伝えることができるということだ。そこで同社では、モバイルサイトを開設すると同時に、ピザボックスやメニューにURLを表示して、サイトへの誘導を図ってきた。
その後、2004年5月には、「どこでもドミノメール」という、ケータイ会員限定のクーポン提供サービスをスタート。このサービスを開始してから、ケータイ会員数が増大。ケータイを活用することに手応えを感じた同社は、他社に先駆けてケータイで「楽しいこと、面白いこと」を展開することで、ブランド・イメージのアップを目指した。
2004年暮れには、ケータイゲームの企画・開発、有償コンテンツの配信事業などを行っている(株)ジーモードから同社とのコラボレーションによる携帯ゲームの企画・開発の話が舞い込む。「ドミノ・ピザ」オリジナルのゲームを作ってはどうかというジーモードからの提案と同社の考えが一致。2005年3月に、ジー・モードの食ゲームシリーズ最新作として、「焼きたて!ドミノ・ピザ」をNTTドコモ、au、ボーダフォンの3キャリアの公式サイトにリリースした。
ゲームの告知は、当時7万人を数えていたケータイ会員へのeメール、チラシ1,000万部のポスティング、ジーモードのサイトでの告知のほか、ピザ配達時の口頭での案内などで大々的に行い、現時点で、15万人以上がダウンロードしている。
ゲームクーポンの利用者が毎月200名 ゲームだけでなく、購買にも寄与
「焼きたて!ドミノ・ピザ」は、ドミノ・ピザのスタッフとなって伝票通りのピザを作り、焼きたてのピザをお客様にお届けするゲーム。メニューや店内の様子、キャラクターや配達用のバイクに至るまで、ドミノ・ピザのイメージを再現、遊んでいるうちに思わずドミノ・ピザが食べたくなるゲーム作りを意識した。また、ゲームで一定の条件をクリアするとドミノ・ピザのクーポンが入手できる仕組みも設けた。
同社では、ケータイゲームの企画・開発に当たり、ブランド・イメージの向上はもちろんのこと、同社で働いているクルー(アルバイト)をはじめとする従業員の満足を意識した。それというのも、ほとんどのクルーがドミノ・ピザが好きで働いているため、リアリティがなく魅力のないゲームを作っては、マイナス効果になりかねない。リアリティのないゲームは作らないという方針のもと、絶対あり得ないトッピングの組み合わせが画面上に出てこないなど、開発担当者には細かい注文を付けたという。
また、顧客の購買内容を調べたところ、注文のたびに、同じピザしか注文しないお客様が結構多かった。そこで、商品名を覚えないと高得点がもらえないように工夫し、ゲームを通じて商品名を覚えていただいたり、興味を持っていただくことで、次回の販売促進につなげていくことを狙ったという。
前述の通り一定の条件をクリアするとクーポンが入手できる仕組みになっているが、この条件は同社の従業員でもクリアするのが難しいとのこと。それでも、2005年3月のスタート以来、ゲームクーポンの利用者は毎月200件ほどを数える。このことから、ゲームはブランド・イメージの向上だけではなく、実際の購買にも寄与していると見ている。ジーモードによると、一般的にはゲームのリリース後は時間経過とともにダウンロード数が減少するので、クーポン利用者もほとんどいなくなるという。その点、コンスタントにクーポンの利用があることから、継続してゲームを楽しんでいる人が多いと同社では判断している。
Web会員に比べてレスポンス率が高くアクティブな会員が多い
現在、同社のケータイ会員数は約10万人を数える。これまで同社では、定期的にクーポンメールを送るほか、生年月日を登録しておくと誕生日にお祝い&クーポンメールが届くサービスや降雨地域限定で自動的にクーポンメールが届くサービスなど、ケータイを活用したサービスを提供してきた。
同社によると、クーポンメールは通常の紙クーポンに比べて利用率が高いうえに、ケータイ会員はWeb会員に比べてレスポンス率が高く、アクティブ会員が多いという。そこで、ケータイ会員を飽きさせないための施策として、定期的にクーポンや新商品のお知らせなど、お得な情報をメール配信するのはもちろんのこと、ケータイ会員限定で映画チケットやポータブルDVDプレーヤーなどのプレゼントが毎月当たるサービスを実施している。一般的に、ケータイ会員にメール配信すると、半数近くが退会する傾向にある。しかし、同社においてはメール配信後の退会率が約3%と低いうえに、プレゼント情報をメール配信すると、その直後に1万~3万人の応募があるという。
このように、同社がケータイ会員限定のサービスに注力するにはわけがある。ピザを注文する予定のある人、つまり優良見込客をケータイで囲い込んでおきたいという狙いがあるのだ。「どこでもドミノメール」のスタート以来、必ずメニューには会員募集の案内を掲載。お客様がメニューに記載されている電話番号を見る時に自然と目に入るところに会員募集の案内を配置すると同時に、登録と同時に使えるクーポンを用意することで、注文に先駆けての登録を喚起している。
そのほか、メニューに「空メールアドレス」を掲載することで、「手で入力したのか、QRコードを使ったのか」「どのタイプのチラシを見たのか」などが毎日、店舗ごとにわかる仕組みになっている。これをもとに、新聞折込みチラシやポスティングメニューに掲載するアドレス表記の大きさなどレイアウトの変更に役立てているという。
同社によると、ケータイにクーポンメールを配信すると、約1割のお客様が利用するという。この数字は、注文件数そのものを押し上げるまでには至っていないものの、ポスティングや紙クーポンのレスポンス率を大きく上回っている。今後は、ゲームとの連動も視野に入れながら、メニュー選択機能の充実を図るほか、お客様の利便性を追求していく意向だ。
メニューを活用し、「ドミノ・ピザ」オリジナルのケータイゲーム登場を紹介。また、「どこでもドミノメール」の会員募集の案内を掲載し、登録を促している