「宿泊特化型とシティホテルタイプのホテル市場で最も魅力的な宿泊ソリューションを、セグメント化した商品を通じて全国的に提供する」というミッション・ステートメントを掲げるソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(株)。同社は、2004年10月から本格的な人材育成とトレーニングを実施。スタッフ向けのサービス・スキルの向上のほか、特にGMクラスの管理職のトレーニングに力を入れることで、意識改革に努めている。
2006年末までに客室数を1万室に増やし国内最大級のホテルグループを目指す
ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(株)は、2003年以降、ローンスターファンドがスポンサーとなって、支援してきたチサンホテルチェーン (24ホテル)およびシェラトンホテル札幌、ホテル日航豊橋など(10ホテル)計34ホテルの運営を担うホテルグループ。現在、客室数は6,735室を数え、国内第12位を誇っている。
同社は、「宿泊特化型とシティホテルタイプのホテル市場で最も魅力的な宿泊ソリューションを、セグメント化した商品を通じて全国的に提供する」というミッション・ステートメントのもと、①宿泊特化型のホテルを主軸とすること、②シティホテルタイプのホテル市場でのプレゼンスを確立すること、③他セグメントでブランドを構築すること、④運営、サービス、ブランディングで“ソラーレ・スタンダード”を維持することを決めた。
同社では、お客様へのコミュニケーションの向上を主たる目的として、所有するホテルを新しいチサンブランドをはじめとした5つのカテゴリーに分類。「チサン イン」「チサン ホテル」のブランドは、限定したサービスを提供するホテルのカテゴリーとして設けられ、また、「チサン リゾート」「チサン グランド」は、フルサービスのホテルのブランドとして位置付けている。そのほかに、「ソラーレ コレクション」のカテゴリーを設け、独自のブランド名を冠しているホテルや、独特な特長のあるホテルなど、チサンブランドには入らないホテルをここに分けた。ブランドごとに分類することによって、それぞれに応じたサービス内容を明確にすることができ、お客様の期待に応えられるサービスの提供が可能になったのである。
また、一部の「チサン ホテル」には、レディースルームを設けて、今後は女性客の獲得にも注力していく予定だ。
そして同社では、2006年末までに客室数を1万室に増やし、国内最大級のホテルグループになることを目指している。
社名変更に伴いインターナル・ブランディングに注力
同社は、2004年2月に、ユニゾンホテルズ アンド リゾーツ(株)からソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ(株)に社名を変更した。それに伴い同社では、新しい企業ブランドを構築していくために、当初はインターナル・ブランディングに注力した。人材育成などに本格的に取り組み始めたのは、2004年10月からである。
マーケティング戦略や「ソラーレブランドとは何なのか」といったことを全スタッフに周知徹底してきた中で、新しい評価制度(人事)の導入を2005年1月1日からスタート。同社では、その前段階として評価制度の考え方や評価者の役割も含め、管理職とスタッフ向けのトレーニングと説明会を、2004年10月から実施している。
スタッフ向けには、「言葉遣い」「立ち居振る舞い」などのサービス・トレーニングを2004年11月から約5カ月間かけて行っている。実施に当たっては、外部のトレーニング会社とともに、ソラーレの独自プログラムを開発。クラスルーム形式で、1クラス20名、2日間のトレーニングに、8割近くのスタッフが参加する。高橋麻衣子・同社人材開発部長は、「長くホテルの仕事している人に、いまさら言葉遣いと思われるかもしれませんが、経験が長いゆえに自己流で行っている人が多々見受けられたので、初心に戻る意味で行いました」と説明する。
2004年は「あなたの立ち居振る舞いや言動がソラーレのブランドを作る」をモットーに、スタッフ個人のサービス・スキルに焦点を当ててトレーニングを行ってきた。2005年にも、現場のスタッフを交えたプロジェクトで、ソラーレとしてのサービス・スタンダードを構築する計画である。そのために、スタッフに対して、会社やホテル、各部門、自分の目標をどうやって連動させていくのか。スタッフ一人ひとりの意識改革とチームの中で目標をどう具現化していくのかといったトレーニングを実施していく意向だ。
「Friendly」をキーワードに、親しみやすさとおもてなしの心を持って、お客様に接することを心掛けている
リーダーを育成するトレーニングを実施
同社では、スタッフのトレーニングに加えて、各ホテルのGM(総支配人)をはじめとした評価者(管理職)のトレーニングに力を入れている。
管理職のトレーニングは4段階になっている。フェイズ1はパート1と2に分かれており、パート1は、一連のトレーニングの導入として、評価制度の説明、評価項目やツールの使い方などのシミュレーション、個人の思考パターンを理解することを目的とした。パート2は、マネジメントの定義や評価指標の共有化とPDCAサイクルの理解促進。フェイズ2では、目標管理と組織マネジメント。フェイズ3は、OJTとして部下とのかかわりの中で組織力を高めるコーチングなどのプログラムを行う。
こうした管理職に特化したトレーニングは、ソラーレとして進んでいく方向性やその指針を、具体的に共有をすることを目的としている。同社のマネジメントに求められる資質や考え方の共有をベースに、ロジック・ツリーを使った分析や、グループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションを行うことで、自分の言葉で咀嚼して伝えていくリーダーの育成を実施している。約100名の管理職を対象に、1回のトレーニングにつき2日間行う。現在、トレーニングは3段階まで終了しており、フェイズ3のトレーニングを残すのみである。
高橋氏によると、トレーニングを契機に、GMはリーダーとして、各ホテルのGOP(営業総利益)達成のため、戦略的に客室、料飲部門、宴会部門のどこに注力すればいいのかを考えることが求められている。その上で、部下の特性や能力を見極めながら、指針を与え、チームとして目標達成ができるようにマネジメントしていく能力を養うことが期待されている。
トレーニング効果の測定には、まだ半年しか経っていないので難しい面もあるが、今のところは、GMのトレーニング中の発言や普段の言動の変化を参考にしている。このほか、部下から上司に対する評価を導入しており、スタッフから上がってくる上司の評価も大いに参考になっているという。
このように同社では、GMをはじめとする管理職のトレーニングを重点的に行うことで、それぞれのカテゴリーのホテルがお客様の期待に応えて何をするのか、お客様との「プロミス」を果たすために、スタッフ一人ひとりがどのような目標を掲げるべきか。意識改革を推し進めている。
トレーニングを通して、同社では、お客様に付加価値の高いサービスを提供できるという意識をスタッフが持つことで、お客様から選ばれるホテルを目指していく。