経営者視点・施術・接客技術 全スタッフに3つの品質を求める

(株)RAJA

航空会社からも「見習いたい接客スキル」と評価される、(株)RAJAが展開するサロン。その高いサービス品質は、同社が各スタッフに求めるサービス提供者としてのプロ意識と、品質管理によって支えられている。

施術スキル、接客技術、そして経営意識 プロが持つべき3つの能力

 「自分が本当にいいと思うものを提供することは、業種業態を問わずサービスの大前提。しかし、それを顧客が必要としていなければ何の価値もない。企業の思いと顧客の望みが合致したところにビジネスチャンスがあり、真のサービスが生まれてくるのではないか」。凛とした口調でそう語るのは、「リフレクソロジー」の普及を目的とした事業を展開する、(株)RAJA代表取締役社長の藤田桂子氏である。
 リフレクソロジーとは、[リフレックス(reflex)=反射]+[ロジー(logy)=学問]、 すなわち「反射学」で、足裏などにある身体全体の臓器や器官を反射投影している「反射ゾーン」を指でくまなく刺激することにより、血液やリンパの流れをよくして新陳代謝を盛んにし、老廃物を外に出して人間が本来持っている自然治癒力を高める健康法のことである。いわゆる「足裏健康法」と言えばイメージしやすいだろう。
 藤田氏がリフレクソロジーを初めて知ったのは、国際線のスチュワーデスとして働いていた30年ほど前。ロンドンでのことだった。人材研修会社の経営などを経た後、リフレクソロジーの普及を実現するために、1996年、日本リフレクソロジー協会、そして(株)RAJA を設立した。
 同社が展開する直営サロンは現在、全国に83店超あり、3つのタイプに分けられる。まず、64店舗を展開する、足裏マッサージの①「Queensway(クイーンズウェイ)」。次に、ハワイ伝統の癒しであるハワイアン・ロミロミを体験できる②「Na Lei(ナレイ)」(6店)。ロミロミとは、「揉む、マッサージする」という意味を持つハワイ語で、肘や腕を使って体重を乗せながらリズミカルに全身を刺激していくオイルマッサージである。最後が、全身のリフレクソロジーを受けられる③「Retreat(リトリート)」(3店)。完全個室制で、来店から退店まで、顧客同士が顔を合わせることのないようプライバシーを徹底重視。このほか、ひとりの顧客を2名のリフレクソロジストが担当するなど、最高のサービス品質を目指した店舗経営を行う。同社では、①を航空サービスで言う「エコノミークラス」、②を「ビジネスクラス」、③を「ファーストクラス」と位置付け、顧客がそのときどきの気持ちに合わせて選択できるよう、サービスに幅を持たせた。しかし現状にとどまることはなく、6月末からは首や肩などのリフレクソロジーがクイックで受けられるサービスも開始し、7月には「癒しの大通り」として、これらすべてのサービスがひとつの店舗で受けられる「KingsAvenue」をオープンさせた。
 こうしたサービスを提供する同社が品質マネジメントで重視するポイントは人材だ。各スタッフに対して施術および接客技術、さらには経営者的な視点を身につけることを要求している。

よりよいサービスのため高い技術を求める

 スクールは現在、東京をはじめとして、札幌、仙台、大阪、福岡といった主要都市に10校あり、リフレクソロジー、ロミロミの技術の徹底的な教育を行っている。独立開業したり、他の企業への就職、医療や介護の現場で技術を生かすなど、卒業生の進路はさまざまだ。卒業後、直営店での就労を希望する場合、各人の習熟度にもよるが、3週間~1カ月にわたって「サロン・プロ・トレーニング」を受けることが義務付けられている。内容は、単に施術ができるというだけではなく、接客マナーをはじめとして、顧客満足度を最大限に引き上げるプロとしての徹底教育だ。そして最後にスクールの校長または藤田氏のチェックを受け、合格すると、晴れて直営店に就職することが可能となる。

クイーンズウエイ

Queenswayでは気軽にリフレクソロジーを体験することができる

繰り返される品質チェック

 各店舗に配属された後も、品質チェックは継続される。まず、月に1回、各サロンに配置されている品質管理担当の「チェッカー」による、技術チェックを受けなければならない。さらに、年に2回、「サロンインストラクター」が、接客マナーなども含めたトータルな技術チェックを行う徹底ぶりだ。
 「目に見えないものの品質を管理するのは非常に難しい。放っておくとどんどん自己流になって、基本からずれていってしまう。そうならないようにするのが教育であり、チェック機構。それらを徹底してサービスレベルの維持、さらには向上を図ることが永遠の課題」と藤田氏は言う。
 毎月、毎年の厳しい品質管理をクリアするために、そして、さらに品質の高いサロンへの転任を目指すスタッフのために、各スクールや本社などには自主トレーニングのための設備を整え、インストラクターも配置されている。スキルの向上を求めるだけでなく、それをサポートする体制が整えられているのだ。熱心なスタッフは休日などに同設備を訪れることもある。
 一方、経営意識を養うための教育には、「RAJAネット」という光ファイバーのインターネット網を使ったシステムを活用している。これは藤田氏が東京で行う講議をオンタイムで全国9カ所のスクールに放映するもので、全国のサロンスタッフが同じ情報を共有できる優れたシステムだ。同システムを使って、藤田氏自身が月1回、接客サービスから、クレームへの対応の仕方、防犯対策といった研修を直営サロンの全スタッフに対して行う。経営者に限らず、スタッフ全員が店舗を運営しているのだという意識を持つよう促すだけでなく、藤田氏自身が自ら全スタッフに語りかけることで、経営理念の浸透やモチベーションアップを図っているのである。こうした施策により、店舗で客足が途絶えたときに自ら進んでチラシを配布するなどの行動が生まれてくるのだという。もちろん、リーダーを対象とした研修や、販促会議も行っている。

豊かな経験が生む接客マインド

 「接客の精神は『Only you』。要するに、大切な顧客を自宅に招待した時に自分はどう振る舞えばいいのか、ということにつきる。顧客が望んでいることを敏感に察知し、行動に移す感性や能力を持っているかが重要。しかし、正直言って、スクールでそこまで教え込むことは不可能に近い。スクールでは顧客に不愉快な思いはさせないという最低線を教育し、それ以上のことは、日々顧客と接する中で身につけていってもらうしかない。その成長を見極め、さらなる成長を促すきっかけを与えるのが教育なのかもしれない」と藤田氏は語る。
 どこまでやったらサービスを極めたことになるのかを論ずるのは無駄なことだろう。しかし、少しでも顧客に満足してもらうために、常によりよいものを目指して不断の努力を続ける姿勢こそが、企業の永続的な発展のために最も大切であることは間違いない。そして、こうした姿勢が同社の厳しい品質管理に表れていると言えるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年8月号の記事