eメールの徹底活用で顧客満足度を格段に向上

オイシックス(株)

安全で新鮮。最高の食品を顧客に届けることを使命とするオイシックス(株)では、頻繁にメルマガを発信することに加え、eメールを徹底的に活用することで顧客から高い信頼を得ることに成功した。

安全・新鮮な食材へのこだわり

 「一般家庭における豊かな食生活の実現」を企業理念に持つオイシックス(株)は、有機野菜などの食品販売会社として2000年6月に設立。同8月にオンラインショッピングを開始した後、同9月には牛乳宅配店・酒販店を通した食材宅配事業をスタートさせた。2001年度の総売上高は3億円、2002年度(見込み)は8億円と、急成長を続けている。現在、販売チャネルは上記提携店(250店・2002年11月末現在)とインターネットで、売上構成比は各50%となっている。
 同社では顧客視点に立脚した事業を目指し、従来の食品宅配事業とは異なり、①好きなときに好きな量を注文できる、②入会金・年会費が無料、③土・日曜日を含め到着日時の指定が可能、などのサービス体制を整えた。また、減農薬・減化学肥料栽培以上の安全性を確保した食材にこだわるだけでなく、扱う食材の安全性などを監査する第三者機関「食質監査委員会」を独自に開設。専門家3名とインターネットを通して募集した主婦3名(任期1年)からなる同委員会が、同社商品を厳しくチェック。新商品は同委員会の認可が必要という徹底ぶりだ。
 今回は、インターネットを通じて商品を購入する顧客との関係作りに焦点を当て、話を伺った。ちなみに、牛乳宅配店における顧客ターゲットは60代、70代のシニア層であり、インターネットでは30代主婦層や都市部在住者をターゲットとしている。

メルマガは週3回発行

 現在、インターネットを通した注文は月1万件ほど。週に3回発行するメールマガジンの購読者は2002年11月末現在、17万人となっている。取締役 顧客サービス担当 堤祐輔氏は「顧客との関係作りのほとんどをeメールによって行っている」と話し、その具体的な施策について明らかにした。
 まず、定期的に発刊するメルマガを活用した関係作りがある。メルマガは顧客を①未購入者、②購入経験者、③「おいしっくすくらぶ」会員のセグメントに分け、各セグメントに対して異なったメッセージを送っている。同社では基本的には会員制をとらないが、2002年中頃に顧客維持を狙って「おいしっくすくらぶ」を立ち上げ、セット商品を顧客に有利な条件で提供したり、送料や価格を割り引くなどの特典を用意している。1回当たりの購入金額は、牛乳宅配店利用者が2,800円なのに対し、おいしっくすくらぶ会員は4,500円だ。
 メルマガのコンテンツは、購入確率の高い上位十数品の紹介と、オイシックスの価値観を伝えるような情報提供を行っている。堤氏はメルマガには①顧客がメールを開封する、②読む、③買いたいと思う、④購入するの4段階があり、中でも①が最重要と指摘。同社では①をクリアするために、eメールには必ず個人名を付記するなどの工夫を凝らしている。
 週3回発行するメルマガのうち1回はさまざまな産地を紹介、産地直送型で商品を届けるかたちをとる。そこで、例えば柑橘類の産地と商品を紹介する際には、過去にほかの産地の柑橘類を購入したことがある顧客に対してのみ、5%程度の割り引きを提供する。これにより、通常5%程度のレスポンス率が最大約15%まで跳ね上がるという。
 さらに、①注文を確認するeメール、②出荷を知らせるeメール、③入金を確認したお礼のeメールを全顧客に送信している。注目に値するのは、商品が顧客に届いた日の夜に、「本日お届けした商品は、このようなポリシーをもって生産されましたが、いかがでしょうか」「このように料理すると美味しいですよ」などのメッセージを、生産者の声とともに送る“届け日メール”だ。「商品の生産者から直接、声が届く“届け日メール”は大きな反響を呼び、お客様から返信のeメールをいただくだけではなく、リピート率もぐんと上昇した」(堤氏)という。
 このほか、初めて購入してから1カ月経った頃に「何かお困りのことはありませんか」と尋ねるeメールを送信する。試みに、アウトバウンドと併用したところ解約率が激減したが、コスト的な問題もあり、現在ではeメール送信のみとなっている。同時期に、割り引きを提供するなどして顧客の固定化を狙ったプロモーションを行うこともある。

スクリーン 2

オンラインショップの主要顧客は、30代の主婦や都市部在住者だ
(URL:http://www.oisix.com)

成約率33%のアウトバウンド

 さらに、プロモーションやテストマーケティングも積極的に実施している。
 2002年末に行ったアウトバウンドを活用したテストマーケティングでは、成約率33%という驚異的な結果を得た。まず、セット商品を特別価格で販売。購入した顧客5,000名を対象においしっくすくらぶ入会促進のeメールマーケティングを行った後、それでも入会しなかった顧客4,000名を選んでアンケート調査を実施。同社サービスに満足度が高い層と、同くらぶに対する関心が高い層をセグメントした。さらに、①過去の購入経験、②居住地域の2条件を加味して入会の可能性が高い顧客500名をリストアップ。アウトバウンド・コールを行った結果、33%が入会に至ったのである。同社では通常、3~4名体制で電話による問い合わせなどに対応しているが、この時には、アウトバウンド業務をアウトソーシングして、テストを実施した。
 また、今後の計画としては、以下を実施したい考えだ。同社では毎週木曜日に商品を入れ替え、同日配信のメルマガで新商品紹介を行うが、この際、購入履歴に応じた商品提案を行うことで、レスポンス率を引き上げていく試みだ。例えば、1回の購入金額が3,000円の顧客と、6,000円の顧客では求めている商品が異なる。そこで、前者には野菜中心の割り引きを提案し、後者には単価の高い肉類・魚類などのディスカウントを行うといった具合だ。

顧客に感謝と感動を与え続ける

 以上、同社がeメールなどを活用して行っている顧客との関係作りに対する取り組みを紹介した。メルマガを頻繁に発信するだけでなく、届け日メールに代表される顧客との密接なやりとりが同社の成長を支えている。eメール対応は現在、2~3人が専属で行っているが、担当者は顧客の履歴を踏まえた上で一人ひとり個別に対応。顧客から「丁寧に対応してくれた」と満足したことを伝えるeメールが届くのも珍しいことではない。おいしっくすくらぶ会員に対して行う月1回のアンケート調査における、カスタマーサポートに対する満足度は非常に高いという。
 堤氏は、「メルマガは細かな仕組みを整えれば効果が出ることが分かっているし、コストもかからない。だからこそ、コンテンツ作りと顧客セグメンテーションには時間をかけ、じっくり行うようにしている」と語る。今後は、メルマガを通して同社の経営哲学やメッセージを伝え続けることで、ブランディングにもつなげていきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年3月号の記事