「たっぴー」でモバイル・アンケートを実施

(株)第一興商

カラオケ店内で顧客に向けたアンケートを実施

 カラオケルーム・チェーン「ビッグエコー」約200店舗を全国に展開する(株)第一興商。同社では携帯電話を利用したインターネット・アンケート・メール配信ASP「たっぴー」を直営全店で導入している。
 「たっぴー」とは、カラオケ店内で顧客を対象としたアンケートを行い、アンケート回答者にカラオケルーム利用料金の値引きサービスを実施するというもの。その仕組みは次のようなものである。
 カラオケルーム内のテーブル上のPOPや、カラオケの待ち受け画面でURLと店舗IDを告知する。顧客はそれらを携帯電話に入力し、「たっぴー」サイトにアクセスする。そしてサイト上のアンケートに回答すると、即座にカラオケルーム利用料5%割引きクーポン券がeメールで送信される。回答者はこのクーポン券を精算の際にレジで提示することで、値引きサービスを受けることができる。
 「たっぴー」は、まず2001年4月に東京・西新宿センター店をはじめとする3店舗でテスト導入され、同年7月からは直営全店にて本格的な導入が開始された。当初その名称は「たっぴーねっと」であったが、本格導入の際に改良が加えられたのを機に「たっぴー」に変更された。

テスト運用の結果を受けてシステムを改良

 同社では以前から紙媒体によるアンケートを実施していたが、“カラオケルーム”という業種だけに、顧客が飲酒していたり、顧客の部屋、あるいはプライベートな時間に立ち入ることには限界があり、なかなか満足できる結果は得られなかったという。さらに、既存店のサービス向上や新規出店に際して活かせる顧客情報の収集方法を模索していたこともあり、(株)シーエス・ウィルが提供するシステム「たっぴー」の導入を決めたというわけだ。
 テスト運用の結果を受けて、前述のように直営全店での本格導入に際し「たっぴー」には大幅な改良が加えられた。これにより、店舗の統括マネジャーが管理する画面、および本部がすべての店舗の状況を把握できる画面が追加された。また顧客が閲覧する画面の使い勝手についても、より見やすさを追求したものに変更された。

携帯電話のリアルタイム性を活用

 「たっぴー」導入の目的は以下のようなものだ。顧客アンケートの結果に基づくCS(顧客満足度)の向上。アンケートを通して得られる顧客データの活用による効果的な販促活動。CRMの確立等々。
 CS向上については、携帯電話というメディアの特性を活かし、リアルタイムで顧客の要望に答えられることがその最大のメリットだ。例えば店内のトイレが汚れていたとする。以前であれば、顧客は不快感を感じながらも店員に直接それを告げることなく、“もう来ない”ことで問題を解決することが多かった。しかし「たっぴー」のアンケートの最後にあるフリーアンサー欄にその旨を書いて送信すれば、店舗側ではトイレをすぐに掃除するといった対応ができるのだ。さらに即座に顧客にお詫びのメールを返信すれば、「すぐに対応してくれた」と好感度アップにつながる。逆境をチャンスに変えることが可能になるわけだ。
 顧客情報に関しては、顧客がアンケート回答の際に入力した、氏名、生年月日、性別、自宅と勤務先の郵便番号、携帯電話のメールアドレスといった属性がデータベースに蓄積される。これら、アンケートの集計、データベースの蓄積は「たっぴー」を介し、シーエス・ウィルが行っており、後述するDMの発送などに活用されている。

たっぴー1

店舗と本部の情報共有システムのコンテンツ画面

たっぴー02

本部用の確認画面

迅速できめ細かな対応が可能に

 店舗が管理する画面上にはあらかじめいくつかの設問がセットされており、各店舗単位で、時節や開催するイベント等に向けた情報収集といった意図によって、適宜設定し直している。また本部においては、必要に応じて新規のアンケート項目を作成することが可能である。フリーアンサー欄に記入された項目は、「たっぴー」内で、クレーム、激励、要望、その他といった項目に大別され、状況に応じた素早い確認が可能になっている。各店舗でのアンケート項目、回収情報、回答内容は、どの店舗からも自由に見ることができるが、これは他店の良い部分を参考にすることによるサービス品質向上に向けての店舗間の相乗効果を狙ったものだ。
 「たっぴー」のフリーアンサー欄の設置により、以前は見逃しがちだった些細な意見もデータとして上がってくるため、よりきめ細かな対応が可能となった。前述のトイレの例はその典型だが、このほかにも、これまでに、フロントの接客態度をリアルタイムに正したり、アイス・カフェオレの味に関する指摘に基づき、そのレシピを速やかに変えるなどの対応を行ってきた。
 「たっぴー」を利用した具体的な販促活動としては、アンケートを通して得られた顧客のメール・アドレスに向けたeメールDMの送信が挙げられる。アンケート時にDM送信を了承している顧客数は2万1,077人(2001年12月現在)。地域や年齢・性別、あるいは顧客のニーズなどによって新規店舗の案内やイベントの告知を行っている。これらのDMに対するレスポンス率は多い時には30%以上にも上る。また紙媒体に比べ、量に関係なくかなり低コストであることから、効率のよい販促活動となっているという。
 カラオケルーム利用料金の低価格化にともない、カラオケ業界ではサービスの差別化が課題となっている。今後同社では、顧客視点に立ったサービスの開発、顧客の属性に合わせたサービスの提供など、料金以外の付加価値を高めていく考えだ。その実現において携帯電話の有効活用はますます重要になってくるだろう。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年2月号の記事