コミュニケーション・スキルを備えた旅のエキスパートが、お得な情報を案内

(株)トラベルネット

国内初のネット専門旅行会社

 1997年、国内初の無店舗型のインターネット専門旅行会社として誕生した(株)トラベルネット。「店舗をもたない、電話しない、印刷しない」を合言葉に、商品紹介から予約まで、旅行に関するほぼすべての手続きをネット上で行えるサービスを実施している。
 2000年5月からは、同社が独自に開発した会員制インターネット専用旅行予約管理システム「VOYAGE」をスタート(現在ビジネスモデル特許出願中)。利用者が、同社ホームページ上で名前や勤務先などを入力して会員になると、会員専用のホームページ「My Travel」において、問い合わせや予約受付、手配結果など旅行に関わるほぼすべての手続きを行えるというものだ。出先のパソコンからでも予約状況などの確認ができるほか、顧客が自分の知りたい情報にあわせてコンテンツをカスタマイズできるなど、顧客利便性の高いサービスが大きな特長となっている。
 一方で、こうしたネット販売は、同社側にも大きなメリットをもたらしている。冒頭でも挙げたが、まず一般の旅行会社のように店舗を設置する必要がないことに加え、パンフレットやダイレクトメールの印刷費負担がなく、顧客に電話連絡する手間が省けることで、人件費も節約できる。また、予約やキャンセル待ちなどの状況を、顧客に逐次報告できる、顧客の声を収集・蓄積し、価格・サービス等に迅速に反映できるなど、サービス品質も大きく高められるのである。
 従来の旅行業界は労働集約型で利益率が低いと言われてきた。同社の取り組みは、そんな従来の常識を覆す新しいビジネスモデルを確立するものとして、今、大きな注目を集めている。

ひとりひとりのコンタクト履歴に基づいて情報提供

 同社では、旅行に関する問い合わせから商品紹介、予約受付まで、すべてを前述した会員制インターネット旅行予約管理システム「VOYAGE」の会員専用ホームページ「My Travel」において実施している。
 具体的な手順としては、まず同社のホームページにアクセス。会員登録フォームに、氏名、住所、電話番号、Eメールアドレス、また自分の好みのID、パスワードなどを入力する。会員登録が完了したら、次回からは同社ホームページにIDとパスワードを入力するだけで、「My Travel」が利用可能となる仕組みだ。
 「My Travel」では、航空券やホテルの料金表を参考にしながら、希望日程や目的地を入力すると、24時間以内に手続き結果がページ上に反映される。通常のEメールでのやり取りよりも、簡単・迅速に結果がわかるほか、前述のようにEメールとは違い、出先のパソコンからでも予約状況が確認できることは、少しでも早く状況を確認したい顧客にとって嬉しい利点だ(更新されるとEメールでの連絡もくる)。
 また自分のほしい情報を選んでコンテンツをカスタマイズできる点は、情報を検索したり手続きを行う上での利便性を一層向上させる。
 また、過去の問い合わせや購買データが残る「My Travel」の利点を活かし、会員ひとりひとりに合わせたEメールによる会員サービス情報「VOYAGE通信」を月に2回ほど配信。より効果的、効率的な商品訴求を行っている。また、1997年10月より、無料のメールマガジン“まぐまぐ”において、「知らなきゃ損する! 海外旅行情報」の配信を開始。この購読者数は4万人と「旅行」のカテゴリーではトップ。旅行に対する関心の高い読者層に、同社の週ごとのお勧め旅行商品情報を広く告知している。

コミュニケーション・スキルを備えた旅のエキスパートが、お得な情報を案内

 コンタクトセンターは8名のオペレータで運営。「My Travel」の会員数は現在3万人を超え、20〜30代を中心に、毎日100〜200人ずつ新規登録者があるが、総席数8席、ISDN×4(内線8)という非常にコンパクトな規模で対応している。これも予約など、ほとんどの手続きを自動的に行えるインターネットならではの利点だろう。
 オペレータの稼働時間は9〜19時。もちろんホームページは24時間対応。問い合わせには基本的に24時間以内に回答する。また「My Travel」上で問い合わせるまでもないような、ごく簡単な問い合わせや、どうしても今すぐ知りたいという要望に対しては、電話での応対も行っている。2001年2月1日のリニューアルでは、カスタマー・サポートとして東京と神戸の問い合わせ受付電話番号をページ上で告知した。対応はすべて神戸の本社コンタクトセンターで行う。東京の番号にかけられたコールは神戸のセンターに転送される仕組みだ。
 問い合わせ内容は、やはり料金や空席状況の確認などが中心。しかし同社の顧客には、ある程度旅慣れた人が多い。その点で、単に質問に答えるだけではなく、ひとりひとりのニーズに合わせて、より安い、あるいはより充実したプランを勧めることもセールス上、重要となる。つまり同社のオペレータは、旅に詳しい顧客も知らないような深い知識をもっていることが前提条件となるのだ。
 そこで、同社では旅行代理店や添乗員の経験者など、旅の知識とコミュニケーション・スキルを元々備えている人材をオペレータに採用。さらにヨーロッパ、アメリカなど、旅の地方別に専任制とすることで、よりきめ細かな対応に当たっている。言わばオペレータひとりひとりが旅の、そしてコミュニケーションのエキスパートであり、スーパーバイザーなど、センターとしての組織的な体制を敷いていない点も、同社の特徴と言えるだろう。
 ネット販売でポイントとなるセキュリティ面にも配慮。wwwブラウザ、wwwサーバ間で、データを安全にやり取りするための業界標準プロトコル、SSL(Secure Sockets Layer)や、企業内LANなどを不正侵入から保護するシステム、ファイアウォールなど、業界水準レベルの対策を施している。個人情報保護、災害対策などの観点から、データが入ったサーバそのものをデータセンターに預けている点もポイントだろう。

トラベルネットHP

トラベルネットのホームページURL:http://www.travelnet.co.jp/profile/index.html

「VOYAGE」システムを他のサイトにも提供

 一方で、インターネットの手軽さゆえに生じるデメリットもある。それは、問い合わせのみで受注に結びつかないケースも決して少なくないこと。前述のように、旅のエキスパートであるオペレータが、質問の回答と併せて、よりお得な情報を提供するのも、この点を考慮した結果だ。同社はこれを現時点での最大の課題と認識し、今後はサービスをさらに充実させる意向だ。
 具体的には「VOYAGE」システムの機能を拡充し、航空会社やホテルのサーバと連動。空室・空席状況をリアルタイムで把握できるようにする予定。また、「VOYAGE」システムをさまざまなサイトに提供すると同時に、「VOYAGE」のオペレーション用業務ソフトを開発。対応業務を成功報酬型でアウトソーシングすることで、同社システムの利用範囲を飛躍的に拡大させることも計画している。
 同社のポリシーは顧客ひとりひとりに合わせた「旅のオーダーメイド」。個人旅行に特化し、検索から予約まで、すべてをネット上で済ますことができるワン・ストップ・ショッピングを強みとし、今後も価格よりサービスを重視した、個性的な品揃えを展開する予定だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年5月号の記事