未来を予測する前に機敏に変化に対応
1973年に創業した日本のコンビニの最古参である(株)セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)。国内の店鋪数が8,600にもおよぶ業界最大手である。
レギュラー・チェーンである親会社の(株)イトーヨーカドーと異なり、フランチャイズ・チェーンのセブン-イレブンにおいては、すべての店鋪で、着実に売り上げを伸ばすことが本部の使命であり役割でもある。
創業以来、本部、つまり全体としての売り上げは伸び続けているが、既存店(新規出店から1年以上)のここ数年の売り上げ伸び率は低い(1996年には僅かながら前年を割っている)。そこで、個々の店鋪の売り上げ・利益を確保するため、本部は、商品開発はもとより、物流の改善、仕入れの見直し等を強力に推進している。売り上げ伸び率の低さの原因は、消費者ニーズに適合した商品・サービスが不十分なことにあると考えているのだ。
27年前の創業当時は「開いててよかった」というフレーズに代表される「タイム・コンビニエンス(時間の便利さ)」がコンビニの絶対的な強みであったが、深夜営業のスーパーや、ファミリー・レストランが登場してくると事情は違ってくる。差別化のポイントとして、商品の質──味・鮮度・ファッション性・即時性(買いたい時にある)──が要求されるようになったのだ。おにぎり・弁当といった商品は、どこのコンビニにも置いてあるが、セブン-イレブンに置いてあるのは「セブン-イレブンのおにぎり・お弁当」であり、「どこよりもおいしく、新鮮」という部分にとことんこだわって、自己差別化をくり返してきた。
そして21世紀に入って、コンビニに期待されるものは、「情報・サービスのコンビニエンス」であるとセブン-イレブンでは考えている。昨今、マスコミ等でコンビニが飽和状態にあると言われているが、顧客の時代時代のニーズに適確に応えることで、まだまだ出店の余地も工夫の余地もあると、同社は攻めの姿勢を変えていない。
セブン-イレブンには、一般企業のような3カ年計画、5カ年計画といったものがない。1年ごとの計画があるのみだ。これは不確定な未来を予測して計画を立てるよりも、その時々の消費者のニーズに合わせていくことこそ、コンビニのコンビニたる由縁であるとのポリシーによる。
新しいEコマースの展開を目指して
昨年2月1日に日本電気(株)、(株)野村総合研究所、ソニー(株)、ソニーマーケティング(株)、三井物産(株)、(株)日本交通公社、(株)キノトロープとの合弁により設立した(株)セブンドリーム・ドットコムは、新しいEコマースの展開を目指したものだが、その第一段階として、昨年7月1日にインターネットサイト、「7dream.com」を開設した。セブン-イレブン店頭での代金の決済、商品受取をサポートするサイトで、取り扱っているのは「音楽」「旅行」「物販」等、実に多彩。会員数は2月末現在で15万人を超えている。
セブン-イレブンにおけるEコマースの位置付けは、あくまでも「本業」の補完。今のところ決済のついでに買物をしてもらうことがメインの目的である。しかし、商品開発に消費者の意見を取り入れる「欲しいものプロジェクト」などの画期的な取り組みもはじめており、この分野での先行企業としても同社の動向からは目が離せない。
マルチメディア端末である「セブンナビ」は、日本電気(株)との共同開発で、昨年の11月に設置が開始され、今年の1月末には都内のセブン-イレブン全店に導入を終えた。
「セブンナビ」 は100m2の売場に2,800種類が並ぶといわれるコンビニの限界を打破するシステム。現在は音楽配信やフォトプリントなどの機能が主流だが、コンサート・チケットや航空券などの販売も近々開始されるらしい。カード決済も可能になる見込み。将来的には、非接触型のICカードを利用したサービスも考えられ、コンテンツのさらなる充実に向けてさまざまな試行がなされている最中だ。
「7dream.com」のトップページ(http://www.7dream.com/)
伸び続ける料金収納代行、期待される宅配業務
最近、銀行・郵便局といった金融機関の料金収納の取り扱い金額をコンビニが抜いたという。しかも、それら金融機関が開いている時間帯においても、コンビニの利用が多いという。セブン-イレブンでは、店頭での料金収納代行サービスが152社、8,000万件、6,000億円(いずれも2000年2月末現在)を超える規模に達し、加えて1999年11月からはじまったインターネットでの購入商品の料金収納の利用率もかなりの勢いで伸びている。だが店頭での商品の引き取りに関しては、当面「7dream.com」での取扱商品以外は考えていないという。
また、昨年の4月には、(株)ニチイ学館、三井物産(株)、日本電気(株)との合弁会社、セブン・ミールサービス(株)を設立し、宅配サービスを昨年の秋から開始した。これまで、埼玉・東京の一部で行われてきたが、現在は、神奈川までエリアが拡大されている。このサービスには2種類ある。ひとつめは配食サービスで、調理済みの食事や食材を専用車で宅配するもの。顧客が自分で近所のセブン-イレブンの店頭に受け取りにいくことも可能だ。もうひとつは買物代行サービスで、訪問介護事業のニチイ学館のヘルパーがセブン-イレブンで受け取って家庭に届ける。これは現在、準備中であるが、実施されればかなりの支持を得るものと推測される。
バーチャルとリアルのコンビニを連動させる「日本型EC」
セブン-イレブンは「日本型EC」──バーチャルなECとリアルのコンビニを連動させること──を標榜している。同社が出資しているソフトバンクグループの書籍販売サービス会社、イー・ショッピング・ブックス(株)では、決済の方法が3種類(店で支払い店で受け取る、店で支払い宅配で受け取る、クレジットカードで支払い宅配で受け取る)あるが、9割以上が「店で払い店で受け取る」方法を選択している。「日本型EC」はこのようなデータをもとに決定した方針だ。これはもちろん、セブンドリーム・ドットコムついても同じである。
注目のアイワイバンク銀行に関しては、現在、免許を申請中。顧客に最適なかたちでサービスを提供したいという考えから出発した結果、既存の銀行と提携するよりも自社で新しく銀行を設立する方が理にかなっている、という判断に至っての免許申請である。多くの金融機関との提携、セキュリティ性に優れたICカードの採用、テレホン・バンキング、インターネット・バンキング、携帯電話等の多様なチャネルの活用が予定されており、早期実現が待たれる 。
今後は、各店鋪レベルでEコマース関連サービスへの理解と従業員教育を徹底することが課題。本部、およびフランチャイズ・チェーンの15万〜16万人の従業員がさらにしっかりと連動し、社会の変化に対応していくことが何よりも大切だと同社は考えている。
昨年の11月に設置を開始したマルチメディア端末「セブンナビ」