セールス色を排除したアフターコール業務により顧客満足の向上を目指す

(株)ジェーシービー

全世界での会員数は3,980万人、加盟店数は688万店舗

 (株)ジェーシービーは、1981年から、日本のカード会社としてはじめて独自の国際展開をスタート。JCBを世界で通用する「国際ブランド」にするため、VISAやマスターなどの海外ブランドとは提携しないという独自のスタイルを徹底している。
 ニューヨーク、ロンドンなど世界の主要31都市に海外拠点を置き、加盟店・代理店との交渉や情報収集を行なっているほか、海外拠点を含む世界50カ所にはサービス窓口である「JCBプラザ」、「JCBデスク」を設け、より広域で質の高いサービスを提供できる拠点網の確立を目指している。また国内には30カ所の支社/支店を設置、フランチャイジー76社とともに、きめ細かいネットワークでJCBブランドの拡大に努めている。
 現在、全世界合計のJCBカードホルダーは3,980万人、加盟店の数は688万店舗。海外のJCBカードホルダーも16カ国、84万人に上り、売上高は4兆4,590億円(1999年9月末日現在)を達成している。この実績は、会員と加盟店の双方からの「JCBブランド」に対する高い支持を表しているが、同社ではこれを現金に代わる決済手段としての機能だけではなく、コールセンターなどを通して会員、加盟店、提携先などのさまざまなニーズを探りながら、サービスを創造し、カードの付加価値を高めた結果として位置付けている。

ターゲットを上得意客に絞り込み顧客とのリレーションシップを目指す

 同社のコールセンター機能は、東京都三鷹市にある「JCBカードセンター」内にある。同センターはカード会社最大級の事務処理センターで、同社のカードサービス拠点として重要な役割を担うため、FDDI(ファイバー・ディストリビューテッド・データ・インターフェイス)を利用したLANをはじめとするインテリジェント機能を備えている。
 アウトバウンド業務を担当する「JCBテレマーケティングセンター」は、1994年10月に設置され、当初はカード入会の勧めやプレミアムカードへの移行などを主要業務としていた。しかし、電話による勧誘のイメージや費用対効果を考えると企業としてのメリットは少なかったという。そのため1999年4月からは、業務内容を新規会員の獲得から、既存会員へのアフターコールに方向転換。顧客満足の向上を図るため、既存会員へのサービス情報の提供やアンケート調査などを行なうことで、ニーズを掴み、サービス内容に反映させることを目的としている。
 アウトバウンド業務には加盟店向けと個人顧客向けの双方がある。加盟店向けのコールの場合には御用聞き的な内容が中心で、キャンペーン用の備品の確認やJCBステッカーの貼付確認調査などを実施している。個人顧客向けのコールの場合は、新規会員には入会のお礼に合わせてJCBを選択した理由の確認、また既存会員には、カードへの不満や要望などを確認し、顧客の声を反映したカードとなるよう努力を続けているという。
 具体的には①営業支援である「DMフォローテレマーケティング」においてセールス色を排除したトークを展開し、DM送付のみの場合と比較して1.2〜3.0倍のレスポンスを獲得しているほか、②リサーチ業務では、JCBのサービスについて顧客満足度調査を実施し、サービス面の改善に寄与している。③メンテナンス業務では、更新カード発送前に5万7,000人の対象会員に調査を行い、電話に応対してくれた2万2,800人の会員に住所の確認を実施。そのうちの約20%の会員から住所変更を確認し、カードの未着を事前に防止したという。
 2000年度からは、特にセールス色をなくすことを徹底。具体的には、上得意客をターゲットにした、更新時期やキャンペーンなどのタイミングに合わせたアウトバウンド業務に徹している。
 また、あくまで顧客本位を遵守するため、顧客の都合が悪いときには、早々に電話を切るようテレコミュニケータに指導しているほか、逆に用件によっては、時間に関係なく電話を続けるようにアドバイスをしているという。

JCBテレマーケティングセンター

JCBテレマーケティングセンター

顧客の本音を聞き出し要望を把握する

 テレコミュニケータの教育面では、スクリプトを棒読みするのではなく、あくまで顧客の声を率直に聞くことからはじめ、顧客が何を求めているのか把握することを求めている。研修期間は2週間で、最初の1週間はクレジットカードそのものや同社やJCBカードの概要に関する基礎知識講習を行ない、後の1週間でモニタリングや言い回しの実習を実施した上で業務を開始する。また、テレコミニュニケータとして現場に入ってからも、システム内にマニュアルがインプットされているので、必要に応じてこれを参照することができるという。
 同センターの営業時間は、加盟店向けは平日10:00〜16:00、日曜祝日休み。個人向けは平日が16:00〜19:30、日曜祝日が10:00〜17:00まで。1日当たりの平均コール数は平日1,500件、休日2,000件。現在、同センターは社員(スーパーバイザー兼企画担当)5名、嘱託(スーパーバイザー)1名、アルバイト36名の計42名で運営されている。
 システムは、日本ヒューレット・パッカード社製の「K460エンタープライズサーバ」を採用。PD(プレディクティブ・ダイヤリング)機能付きの自動発信装置を導入し、先方が在宅している場合はもちろん、留守番電話になっていても音声を感知すれば自動的にテレコミニュニケータにつながるようにして、業務の効率化を図っている。


タイムリーに顧客情報を提供する「My JCB」が登場

 7月1日からは、タイムリーに顧客情報を提供する新たなサービスとして「My JCB」が登場。これは同社のホームページから、利用代金の明細や、JOY JOYポイントプログラムやゴールドポイントプログラムのカードの積算ポイントなどが照会できるサービスである。これまで利用代金明細の照会などは総合インフォメーションセンターを通して確認するしか方法がなかったが、このサービスの導入で顧客は手軽に照会が可能となった。同社では顧客ニーズは高いと読んでいる。
 JCBテレマーケティングセンターでは以前から利用代金の明細や、あといくら位利用できるのかをもっと手軽に照会したいという顧客の要望を把握していたという。
 なお、アウトバウンドでも入金依頼業務は調査部が、カードの申込確認、在籍確認業務はカード発行部がそれぞれ担当し、同センターはあくまで会員サービスやアフターフォローに徹している。インバウンド業務については総合インフォメーションセンター、ギフトカードセンター、チケットセンター、テレショップセンター、ゴールドデスク、オーソリセンターで業務ごとに分担、それぞれが顧客満足の向上を目指して業務を推進している。
 同社営業本部テレマーケティンググループ係長の井上潤氏は「今後も、顧客満足度の向上を最優先課題とする顧客第一主義をコンセプトに、アウトバウンド・コールによるアフターフォローを充実させ、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)実現に向けたサービスを徹底していく」と、あくまでCS(顧客満足)の向上に役立つアウトバウンド業務の展開を優先させていく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年8月号の記事