利益を生み出す仕組みを提供

プラス(株)

「アスクル」の利便性を盛り込んだ新しいサービス

 プラス(株)では、中小事業所を対象としたB to Bダイレクトマーケティング事業「アスクル」(本誌VOL.25参照)に加えて、大規模から中規模程度の企業を対象としたオフィス用品のダイレクトマーケティング事業「Biznet(ビズネット)」を展開している。
 新規事業開発に積極的に取り組んできたことで知られる同社では、1972年から教育環境事業に参入し、文具のみならず学校で使用するあらゆる機器や備品の取り扱いを開始。文具以外の多様な商品の仕入れルートと小口物流のノウハウを確立した。
 1984年からは学校に続く市場として企業に着目。「OFCO(オフコ)」の名称で、大規模から中規模程度の企業のオフィスで使用する自社製品以外のものを供給する事業に乗り出した。
 さらに1993年には中小事業所向けオフィス用品のダイレクトマーケティング事業「アスクル」をスタートさせ、1997年5月にアスクル(株)として分社化。ユーザーから直接注文を受け付けて商品を配達する仕組みを確立した。ひとつのカタログでオフィスで使うものを低価格で揃えることができ、しかも翌日には届くという利便性から、多くのユーザーを獲得。1998年4月末日現在のユーザー数は32万カ所以上、1998年5月期の売上高は105億円以上と、オフィス用品のダイレクトマーケティング事業としては日本でNo.1の規模を誇っている。
 そこで同社では、1997年12月から「アスクル」の利便性を採り入れ、なおかつ大口ユーザーに向けた付加価値の高いサービスを盛り込んだ「QDS(キュー・ディー・エス)」を開始。さらにユーザーの考えが、単にモノを安く購入することから、購入に費やす人件費や時間を含めた物品の購買に関わるすべてのコストを削減しようとする方向に変化してきたことに対応して、1999年5月21日からは「Biznet」に名称を変更した。名称変更と同時にコンピュータ・ネットワークを活用した購買代行サービスを強化し、ユーザー独自の帳票類・消耗品の取り扱いを開始するなど、単なるすばやい調達以上の価値をもった「コンサルティング&ソリューションビジネス」を推進している。

明確な役割分担でムダを省く

 「Biznet」は、大手、あるいは中規模程度の企業の各部署を対象に、同社が文具店、事務機店といった加盟ディーラーと共同で行う、これまでの商流と物流のムダを省いた新しい仕組みである。
 これまでの文具購入の流れを見ると、中規模以上の企業の場合、総務や庶務が消耗品や備品の購入を受け持ち、文具の在庫管理、発注、購入後の各部署への仕分けを行っている場合がほとんどである。それらの購入担当部署が各部署の希望をとりまとめ、出入りの文具店に一括発注。それを受けた文具店は、在庫のないものを卸に発注し、卸でも同様に在庫の揃わないものはメーカーに発注するという流れになっている。こうした流通ルートでは、メーカー、小売り、卸間でそれぞれに発注、受注、納品行為が発生するので、ユーザーにとって最終的な納期が見えにくいという欠点があった。
 これに対して「Biznet」は、その対象を実際に商品を使用する各部署に設定。同社が各部署から直接注文を受け付け、直に各部署に配達する形式をとった。これによって総務や庶務の購入に関わる手間が削減され、部課別、商品別、月別などの「購入実績レポート」の提供により、購入状況やコストの把握・管理も容易になった。また納期が確実なので必要最小限の購入にとどめられることから、在庫管理の手間や、在庫スペースを省くこともできる。
 また「Biznet」では同社が注文受付と配達を、加盟ディーラーが商品提案や請求業務、代金回収を担当。明確に機能を分化した。これにより、従来の商流と物流で発生していた発注、受注、納品行為の重複を解消し、短納期化とローコスト化を図ると同時に、加盟ディーラーがユーザーに見合った情報の提供や商品の提案といった本来の業務に専念できる環境を整えた。加盟ディーラーにとっては、仕入れや配送のコストが不要になるほか、従来と比べて幅広い商材を扱えるため、ユーザー当たりの売上拡大が図れるなどのメリットもある。
 「Biznet」は単にモノを売るのではなく、同社にも小売りにもユーザーにも利益がある“仕組み=システム”を売っているのだと同社ではとらえている。

【図表2】「Biznet」の事業の流れ

ユーザーに支持される製品を提供

 現在「Biznet」のユーザー数は8万4,000部署。その中には官公庁も含まれている。加盟ディーラー数は約480社。
 「Biznet」を利用するには、加盟ディーラーとの間で手続きが必要である。
 取扱商品の告知に使われている媒体は、専用カタログとインターネット。後者では、ユーザー向けの加盟ディーラーの店名を前面に打ち出したカスタマイズされた画面が表示される仕組みになっている。受注はFAX、インターネットで24時間行っており、1999年4月からはEDI(電子データ交換)による受注も開始した。現在、FAXによる注文が約95%、インターネットでの注文が約5%と、インターネットによる注文割合はまだ少ない。EDI利用企業については、来年5月までに15社を目標にしている。本州・四国は午後3時までの注文であれば、翌営業日に配達。福岡・北九州・熊本の3市は午後1時締め切りで、翌営業日の配達。それ以外の九州地域と北海道では、午後1時締め切りの翌々営業日配達となっている(沖縄は未稼働)。
 カタログはA4判、約640ページで、6月と11月の年2回発行。事務用品、ノート・紙製品、筆記具・修正具、ファイル、OAサプライズ、包装用品、典礼用品、掲示・表示用品、オフィス機器、家電、オフィス生活用品など、約150メーカーの1万1,000アイテムが掲載されている。
 カタログ掲載商品は自社製品にこだわっておらず、自社製品の割合は30%程度。メーカーではなく、流通業者としての立場からユーザーに支持される製品を提供していく姿勢を打ち出している。
 また、これまで総務や庶務では、ひとつの商品を選ぶだけでも何冊ものカタログを見比べなければならず、その手間ひまは大変というのが実状だった。しかし「Biznet」では1冊のカタログで数社の製品を比較することができる。

ホームページ(URL:http://www.biznet.co.jp)上でもカタログ同様1万1,000アイテムの製品を取り扱っている

ホームページ(URL:http://www.biznet.co.jp)上でもカタログ同様1万1,000アイテムの製品を取り扱っている

Biznet」のカタログにはユーザーごとの割引率を記入する欄が設けられている

「Biznet」のカタログにはユーザーごとの割引率を記入する欄が設けられている

ロイヤル・カスタマーに向けて

 「Biznet」ではユーザーとの接点はあくまでも加盟ディーラー。百貨店の外商のイメージだ。
 あらかじめ割引価格の記された「アスクル」カタログとは異なり、「Biznet」のカタログ掲載商品にはメーカー希望小売価格が記されている。これは価格については基本的にユーザーと加盟ディーラーの交渉となっているためで、カタログには各ディーラーが、ユーザーごとの割引率を記入する空欄が設けられている。また「Biznet」では商品以外に、機密文書のリサイクル(当面東京23区内限定)やレーザプリンタ用トナーカートリッジのリサイクル、名刺・封筒の印刷、印鑑・ゴム印・ネーム印の製作などのサービスも取り扱っている。
 同社としては「Biznet」を最終的には企業の総務、庶務のアウトソーシングをすべて請け負うサービスに拡大したいとの考えだ。つまり「Biznet」は、ユーザーのあらゆる要望に応えるロイヤル・カスタマー向け事業であり、それだけに消費額の大きい企業・団体ほど大きなベネフィットが得られる仕組みとも言える。
 「Biznet」の1999年5月期の売上高は25億円となる見込み。同社は2000年5月期には売上高80億円、ユーザー数20万部署を、2002年5月期には売上高400億円、ユーザー数50万部署を目指す。
 同社では、文具そのもの、あるいは文具店間の格差が非常に少ない中で、競争優位性を保つ鍵はサービスの質だと見ている。そして、ビジネスの根幹は“社会最適”であるとの考えから、ユーザーにとってより少ない経費で最大の効果を上げるための商品やサービスを提供していきたいとしている。その一翼として「Biznet」でも今後、ユーザーにとってどれほど便利か、どうしたら喜ばれるかを追求していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年6月号の記事