マインドシェア向上のために 「NECPCあんしんサポート」

日本電気 (株) 

顧客とのパーソナルなコミュニケーションを推進する「パーソナルC&Cカスタマーコミュニケーション本部」

 「PIC(ピック)」の愛称で知られる日本電気(株)の電話サポート窓口「パソコンインフォメーションセンター」の設立は、1982年9月。パソコン・メーカーの電話相談窓口としては、囲内で最も長い歴史を持つ。
 かつて同社製品のユーザーの大半はパソコン・マニア、および企業であり、「パソコンインフォメーションセンター」に問い合わせをしてくるのはコンピュータの知識に明るいマニア、またはシステム管理者がほとんどであった。ところが1995年11月、「Windows95」の発売を契機としてパーソナル・ユーザーが爆発的に拡大すると、問い合わせ件数が増加したばかりでなく、専門用語のわからない初心者からの初歩的な質問が増えて、センターは量と質の両面から変革を迫られることになった。このようなマーケットの要請に応えて順次、体制を強化してきた同社では、1997年4月、“マインドシェアの向上”を旗印に掲げ、組織改革に着手した。それまで顧客に対するサポートやサービスを担っていたサービス本部と、マーケティング本部の一部機能を統合して、「パーソナルC&Cカスタマーコミュニケーション本部」を設置。これはビジネス・ユースかパーソナル・ユースか、あるいは、購入客か見込客かにかかわらず、すべてのユーザーとのマーケティング・コミュニケーションを統括する部署である。
 同本部の業務は大きく4つ。①顧客、および見込客への“情報提供”、②自動車教習所のように単元制で、パソコン技術を学べる「PCカレッジ」、ユーザー自身の疑問点に沿って約2時間のマンツーマン指導を行う「個人教授」などによる“教育・啓蒙”、③「パソコンインフォメーションセンター」と、全国約50カ所の「PCクリーンスポット」で対面で行っている“相談”、そして、④“保守・修理”。①には、ショールーム「Bit-INN」、インターネットのホームページ「パソコンインフォメーションセンター(PIC)ROBO」「98Information」、「BIGLOBE」およびパソコン通信のフォーラム、自動応答の「パソコン情報FAXサービス」を通じた情報提供のほかに、以前はマーケティング本部が担っていた広報、広告・宣伝活動も含まれている。

インターネットホームページにも、「パソコンインフォメションセンタ」の案内を掲載

インターネットホームページにも、「パソコンインフォメションセンター」の案内を掲載

 多様なサポート&サービス窓口を活用して、「“見て”“聞いて”“触って”嗅いで”“味わって”、五感でパソコンを知ってほしい」とパーソナルC&Cカスタマーコミュニケーション本部長 佐藤将彦氏は語る。

全国13カ所、450人が電話相談に対応する「パソコンインフォメーションセンター」

 同社では97年7月1日、「パソコンインフォメーションセンター」にフリーダイヤルを導入した。同時に土・日曜日の営業も開始。年中無休で午前9時から午後5時まで、相談に応じる体制を整えた。これに際してスタッフ数をそれまでの300人から400人に、回線数を150回線から200回線にそれぞれ拡充。6月30日には業務を休業し、念入りな試験を行って新体制のスタートをきった。
 フリーダイヤル導入以前は全国に5カ所のアクセスポイントを設け、利用者が最寄りの電話番号に電話をすると、そこからさらに数カ所の拠点に電話が振り分けられる仕組みだった。現在、全国共通の「0120-609821」にかかってくる電話は、発信地域によって、協力会社を含む全国13カ所のうち最寄りの拠点に振り分けられ、さらにその拠点に空きがない場合には、自動的にほかの拠点に転送される。これによって、地域によって6倍以上の差があった電話のつながりにくさが平準化したという。
 今年9月にはスタッフ数を450人に拡充。また、製品情報や、過去に問い合わせのあった人の氏名、住所や対応内容を蓄積・管理する「対応者支援システム」の充実が通話時間の短縮を実現したことなどから、「平日でも3回にl回は電話がつながる」(佐藤氏)環境が整った。現在の受付コール数は平日で1日平均約4,000件。土曜日が約2,500件、日曜日が約800~1,000件である。
 内容は、購入前の広告や製品に関する問い合わせが約1/3、購入後の設定、操作方法についての相談が約2/3。大口のビジネス・ユーザーには販売店の営業担当者が個別にサポートしていることもあり、個人、それもパソコン初心者からの相談が圧倒的に多い。
 電話応対に当たるスタッフは、まず同社が作成したテキストに基づいて、製品や接遇に関する3カ月間の初期研修を受ける。その後は随時、新製品オリエンテーションや、中堅スタッフの拠点聞の交換研修などを実施して、対応の質の向上を図っている。
 同社では今後、利用者の満足度調査に力を入れる計画。「まず、満足度を左右するのが何のパラメーターなのかを見つけ出したい。そのためのデータ収集を急いでいるところ」(佐藤氏)だ。

「1対n」のメディアを最大限に活用

 今では「電話がつながらない」という苦情はほぼ皆無であるとは言え、パソコン・ユーザーが拡大を続けていることを考えれば、電話の混雑解消がいまだ大きな課題であることに変わりはない。
 その解決策のひとつが、電話をかけなくても済む環境を整えること。ショールームなどの対面窓口や、教育・研修プログラムの充実がこれに当たる。また同社では、今年、業界初の試みとして、機材を積んだ専用車が全国各都市に出向く「NECデジタルワンダーランドキャラバン」を実施した。
 もうひとつは、電話以外の電気通信メディアの活用だ。現在、インターネットのホームページ「PIC ROBO」へは1日に約1万3,500件、パソコン通信には1日に約1,800件、「パソコン情報FAXサービス」には1日に約1,200件のアクセスがあり、いずれも増加しているという。これら「l対n」での情報提供を充実させることによって、どうしても電話でなければわからないこと、あるいは、どうしても電話で聞きたい人に、確実に電話がつながる状況を作り出したいと同社では考えている。
 同社の製品を購入し、ユーザー登録を行った個人ユーザーは、累積で約400万人。同社では今年1月から、ユーザー登録者に対して「オフィシャルパスカード」を発行しており、現在までに約60万枚を発行した。これら登録者のデータを前述の「対応者支援システム」に入力。「パソコンインフォメーションセンター」に問い合わせのあった時に、機種などを改めてうかがう必要がないようにした。また、これらのユーザーの中で電子メール・アドレスを登録した人に対しては、新製品情報などを随時、個別に配信。10月までに約16万通の電子メールを発信した。「たとえば生年月日を登録してもらい、誕生日にメッセージを送るといったパーソナルなコミュニケーションも実現できる」(佐藤氏)と夢は膨らむ。
 同社のユーザー・サポート・メニューの総称は「NEC PCあんしんサポート」。いつも安心して同社の製品を使ってもらうために、多様なメディアや窓口を通じて「お客様を包み込む、水も漏らさぬサービス体制を築いていきたい」と佐藤氏は語る。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年12月号の記事