コンタクトセンター最前線(第68回):「お客さま第一」 を推進しパートナー企業とともにCS向上に取り組む

東日本高速道路(株)

日本道路公団の分割・民営化に伴い、東日本地域の高速道路の管理・建設事業およびサービスエリア・パーキングエリア事業、新規事業を行う会社として2005年10月1日に設立された東日本高速道路(株) 。 同社では、問い合わせ窓口の対応力を強化し、適切で丁寧な対応を行うことで企業価値を高めることに貢献しようと、日々の業務に取り組んでいる。

ハイウェイガイドを一新し受付状況の変化に対応

 日本道路公団の分割・民営化に伴い、東日本地域の高速道路の管理・建設事業およびサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)事業、新規事業を行う会社として2005年10月1日に設立した東日本高速道路(株)(NEXCO東日本)。同社では、分割・民営化以前の1987年より「ハイウェイガイド」にてお客さまからの各種問い合わせを受け付けていたが、この機能を充実させることで企業価値の向上に役立てようとこれを一 新。2007年3月1日、「NEXCO東日本お客さまセンター」(以下、お客さまセンター)を開設した。
 同センターの開設に至る背景には、問い合わせ件数の増加と問い合わせ内容の多様化がある。日本道路公団の設立以降、高速道路は縦横に距離を伸ばすと同時にそれぞれがつながり、現在では約7,000km にも及ぶ巨大なネットワークへと発展している。これに伴いお客さまが増えたことで、ハイウェイガイドに寄せられる問い合わせ件数は増加していった。加えて、料金やルートの種類が増えたことで、問い合わせ内容の多様化も進んだ。しかし、公団職員が24時間365日、対応に当たるハイウェイガイドでは、問い合わせ件数の増加および多種多様な問い合わせに対応しきれなくなっていたのである。
 また、ハイウェイガイドと並行して本社、支社、管理事務所や料金所でも直接お客さまからの問い合わせを受け付けていたため、問い合わせ内容と受付先のミスマッチが起こりがちで、その結果、電話のたらい回しを招いていた。
 そこで、①問い合わせ窓口の一元化と専門オペレータの対応によりCSを高めること、②窓口の一元化により、管理事務所や料金所といった現場の担当者の負担を軽減し業務の効率化を図ること、③お客さまの声を分析して、サービスや新規事業に活用することを目的に、お客さまセンターを開設したのである。

あらゆる媒体を活用してナビダイヤル番号を告知

 お客さまセンターでは、電話、eメール、手紙による問い合わせや意見、要望を受け付けている。電話窓口には、お客さまセンターの開設を機に NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルを導入した。導入の理由は、利用者の通話料負担を軽減することにある。お客さまから寄せられる問い合わせや意見・要望はサービス改善などに役立つため、NEXCO東日本では通話料の一部負担が必要と判断したのだ。お客さまは、固定電話を利用する場合は市内通話料のみ、携帯電話を利用する場合は22.5秒10円で通話できる。
 ナビダイヤル番号は、0570-024-024と24時間365日の受付体制にちなんだ、覚えやすい番号を選択。ポスターやチラシ、Webサイト、ラジオCM、ポケットティッシュ、利用証明書、フリーペーパーとあらゆる媒体(資料1)を活用して告知に努め、電話による問い合わせの集約を図っているところだ。

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【資料1】お客さまセンターの告知に活用している、NEXCO東日本のフリーペーパー「HighwayWalker」(左)とチラシ(中)。「HighwayWalker」は北海道版と東日本版を年間100万部発行している。ポケットティッシュ(右上)も活用した

 席数は25席で、従来の6席から大幅に増大した。最も多く問い合わせが寄せられる午前9時から午後6時までは全席で対応するが、そのほかの時間帯は4〜10席で対応している。
 図表1は、問い合わせ対応の流れを示したものである。お客さまセンターに寄せられた問い合わせは、基本的にお客さまセンター内で対応しているが、即答できない内容に関しては該当部門へ対応を依頼。お客さまセンターでは該当部門から回答を得て、お客さまへ返答している。

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センター運営の要はチーフマネージャー

 NEXCO東日本では受付体制の拡充に伴い、お客さまセンターの運営をアウトソーシングすることにした。パートナー企業に迎えたのは、コールセンター運営に関して豊富な経験とノウハウを持つテレマーケティング・サービス・エージェンシー。パートナー企業では、オペレータの採用から導入研修までを1カ月間で行い、予定通りセンター開設に至ったことから、同社ではパートナー企業の教育ノウハウを高く評価している。
 図表2(43p参照)は、お客さまセンターの組織である。NEXCO東日本の社員がセンター長、調査役、副センター長、シニアチーフマネージャー、チーフマネージャーとしてお客さまセンターに常駐し、パートナー企業との連携を図る一方、本社などとの調整を行っている。

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 パートナー企業への情報提供において重要な役割を果たしているのが、チーフマネージャーである。チーフマネージャーは、予定されている工事やキャンペーンに関する情報をシニアチーフマネージャーから引き継ぎ、マネージャーに伝達しているのだ。また、事故や積雪などの自然災害による通行止め情報の周知も行う。
 キャンペーン情報など、前もって周知することが可能な情報にはeメールを使用。一方、通行止めについては、作業の進捗により片側車線のみ通行止めが解除されるなど状況が刻々と変化することから、ホワイトボードを用いている。突発的かつ刻々と変化する情報を、電話応対中、後処理中と状況の異なるオペレータに一斉に周知するのは難しいため、簡単に書き換えができ、瞬時に見ることができるホワイトボードが適しているのである。
 そしてもうひとつ、パートナー企業に適切な指示を与え、スムーズな応対を実現することもチーフマネージャーの役割となっている。オペレータが対応に苦慮した場合、まずSVに指示を仰ぐ仕組みになっているが、内容によってはSVも判断しかねる場合がある。こうしたとき、チーフマネージャーがスピーディーに判断を行っていくのだ。
 現在、チーフマネージャーは5名おり、シフトを組んで24時間365日お客さまセンターに常駐している。パートナー企業にとって、困ったときに頼れる存在がいつも側にいることは、非常に心強いと言えよう。

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お客さまセンターの様子(左)。壁にはパートナー企業のスタッフが手作りした、NEXCO東日本のスローガンが書かれたポスターが貼られている(右)

コール数が倍増しても取り逃しはほぼゼロ

 お客さまセンターに寄せられる問い合わせ件数は、1日平均約1,000件。週間の問い合わせ内容の集計(図表3)によると、料金に関する問い合わせが最も多い。次に多いのがETCの割引制度で、この2つで全体の60%を占めている。それ以降は、渋滞や事故などに関する交通情報、道路(ルート)案内、ETCシステムの使い方、SA・PAに関する情報と続く。ちなみに、上位の4項目で全体の80%に達している。

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 以上が通常時の受付状況であるが、イレギュラーな事態が発生すると、問い合わせ内容の内訳は大きく変わる。図表4は、東北道が積雪により通行止めになった 2007年3月12日を含む週間の問い合わせ内容の集計結果である。規制情報に関する問い合わせが急増したために、交通情報に関する問い合わせが3,000件を超えてトップとなった。この数字は、一般的な受付状況の4倍強に当たる。

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 さらに、3月12日に限っては、1日の問い合わせ件数が通常の約2倍に達した。しかし、コールの取り逃しはほとんどなかったという。同センターではその理由として、問い合わせ内容が天気の状況や通行止めの区間、解除の見込みといったようにある程度特定されており、回答の定型化が可能なものが多かったことに加え、通話時間も短かったことを挙げている。

お客さまの声を活用する仕組みを整備中

 お客さまセンターに寄せられた声は、お客さまの声入力・支援システムに入力し、データベース化されている。現在同センターでは、開設の目的の3つ目に挙げているお客さまの声の活用に向けて、仕組みを整備中だ。すでに、テキストマイニングシステムの導入を決め、業務内容に合わせてカスタマイズを行っている。カスタマイズが終了すれば、図表5のようなシステム構成が完成する。これにより、お客さまの声の分析結果を経営層から事業部門や支社はもちろんのこと、管理業務を行うグループ会社と共有することが可能となる。

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 また、SA・PAに設置されている「ハイウェイポスト」に寄せられる声もお客さまセンターで収集した声と統合し、管理・分析することを予定している。ハイウェイポストには、月間200〜300件に及ぶSA・PAの施設やサービスに関する意見・要望が寄せられる。中には厳しい指摘もあるが、SA・PAのサービス向上には欠かすことができない存在となっているのだ。
 同社では、これからも従来以上にお客さまの声を大切にし、真摯に耳を傾けていく考え。お客さまの声に基づくサービス改善を繰り返すことで、社内のCS志向を醸成していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年7月号の記事