コンタクトセンター最前線(第42回):お客様への応対品質と業務効率の向上を目指して「 JAF総合案内サービスセンター」 を開設

(社)日本自動車連盟

1962年10月に創立、 翌年2月から (社) 日本自動車連盟 ( 以下、 JAF) として正式に発足。 以降、ロードサービスを中心とした車に関する各種サービスを提供しているJAFでは、2005年2月に 「 JAF総合案内サービスセンター」 を開設し、各支部で対応していた問い合わせ受付業務を集約した。

課題解決に向けて新たな一歩を踏み出す

 約40年間にわたって、365日24時間体制でお客様の緊急事態に駆け付けるロードサービスを提供しているJAF。サービス開始当初1万1,066名だった会員数は、1973年が57万4,264 名、1983年が322万70名、1993年が1,023万5,729名、2003年が1,715万6,846名と増加の一途をたどり、2004年には1,720万1,308名に達している。この4月には二輪車ロードサービスをスタートし、サービスの拡充を図ったほか、満16歳から満17歳のジュニア会員の募集を開始したことにより、今後も会員は増え続けると見込んでいる。
 順調な発展を続けてきたJAFであるが、問題点がなかったわけではない。お客様対応のレベルアップをはじめ、業務効率の向上などに関する課題は多々あった。そこでJAFでは、これらの課題解決を目的に、2005年2月25日、会員および一般の方からの各種問い合わせを一手に担うコールセンター「JAF総合案内サービスセンター」(以下、サービスセンター)を開設したのである。
 では、具体的にどのような課題と目的があってサービスセンターの開設に至ったのだろうか。

目的その1 お客様への応対品質向上を目指して

 まず最初の目的は、お客様への応対の均一化である。
 JAFの組織体制は、サービス提供の実行部隊となる支部、支部の業務調整を行う地方本部、そして本部で構成。各拠点数は、支部が全都道府県に計53カ所、地方本部が北海道、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州の8カ所、本部が東京に1カ所となっている。サービスセンター開設以前は、各支部が最寄りのお客様からの問い合わせに対応しており、マニュアルにも独自に手を加えていたため、一部ではきめ細かい応対を実現していたものの、総体的に見ると応対品質のバラツキにつながっていたのである。
 次に挙げられるのは、窓口の明確化とワンストップサービスの提供である。前述の通り、支部ごとで対応していた当時は、問い合わせ用の電話番号が53を数え、お客様にとってわかりやすい窓口とは言い難かった。また、問い合わせ内容に応じて各部門で対応していたため、支部の中でいわゆる“たらい回し”にするケースもしばしば見受けられたのである。

目的その2 業務効率の向上を目指して

 そして、各支部の業務負担の減少も重要な目的だ。冒頭で紹介した通り、JAFの会員数は年々増加している。これに伴い、問い合わせ件数も増えており、支部の業務負担が増していたのである。
 また、サービスセンターとは別に24時間年中無休で稼動しているロードサービスの受付センターへの問い合わせの着信を回避するという目的もある。支部の受付時間帯は午前9時から午後5時までで、土日・祝日は休業だったが、ロードサービスが年中無休であるためか年中無休のイメージを持つお客様や土日でなければ電話できないお客様が多かったようで、休日の問い合わせの着信がかなりの数を数えていたのである。ところが受け皿がなかったために、休日の問い合わせの着信がすべてロードサービスのセンターへ流れ、救援を必要とするお客様の電話がつながりにくくなっていたのだ。そのため、ロードサービス担当部署からこうした事態の早期解消が求められていたのである。
 さらに、お客様の声を本部まで吸い上げる仕組みを作ることも大切な目的のひとつであった。前述の通り、JAFの組織体制は3階層になっていたため、お客様の生の声が本部まで届きにくい構造になっていた。そこでJAFでは、サービスセンターを設置。図表1のような受付体制を敷くことで、集約したお客様の情報をスムーズに本部へフィードバックし、お客様の声を政策決定の参考にするという狙いもあった。

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コールセンター勤務経験者を採用して研修期間を短縮

 さまざまな目的を担ってスタートしたサービスセンターであるが、その具体的な業務内容は以下の通りとなっている。
 ひとつは、一般の方からの入会方法に関する問い合わせ受付。もうひとつは、会員からの住所などの諸届け変更や継続方法の案内、優待サービスが受けられる施設の案内、国際サービスの利用案内、イベント情報の案内、道案内など、ロードサービス以外の問い合わせ受付。そして、本部へのお客様の声のフィードバックである。
 受付体制のイメージは図表1の通り。お客様からの電話がサービスセンターに着信すると、スタッフはまず専用端末で会員か否かを確認してから対応に当たる。そして、住所変更など指定の用紙が必要な場合は、お客様の地域を管轄する地方本部へ発送を依頼。地方本部からお客様へ必要な書類が送付されるという流れになっている。今後は、現在、地方本部が担っているフルフィルメントをサービスセンターに集約。受け付けから発送を含む諸手続きのスピードアップを図る意向だ。
 また、あふれ呼が発生した際には、コールの発信地域から最寄りの地方本部へ転送。取り逃しを最小限に抑えるよう努めている。
 続いて、具体的な受付体制を見てみよう。
 受付時間帯は、午前9時から午後8時まで。前述の通り、ロードサービスの受付窓口への着信を回避するために、年中無休での受付体制を実現した。
 スタッフ数はJAFの職員が5名、派遣スタッフが7名の計12名。ブース数は5席で、常時4〜6名が応対に当っている。
 言うまでもなく、彼らはいずれも今回のサービスセンター開始に当たって集められたスタッフである。マネジメントを担当する職員は、各地方本部から会員サービスや会員業務などを経験してきたベテランが揃えられた。また、電話での応対を担う派遣スタッフは、研修期間に限りがあることから、コールセンター勤務経験者を採用した。採用後は、業務マニュアルに基づき、約3週間に及ぶ導入研修を実施。サービス内容や業務知識を身に付けた後は支部に派遣し、OJTを行った。
 サービスセンターの告知には、Webサイト、会員情報誌『JAFMate(ジャフメイト)』、新聞、雑誌などに出稿する広告を活用している。
 コール数は公表していないが、受付内容の内訳は、入会・退会・継続、住所変更といった会員手続き関係が75%、国際免許証関連などその他問い合わせが15%、ロードサービスの出動依頼が10%となっている。また最近は、ETC会員証への切り替えに関する問い合わせが増加傾向にあるという。

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毎号約1,250万部を発行する『JAF Mate』。2005年3月号で、JAF総合案内サービスセンターの開設を告知した(写真左)/この4月からスタートした二輪車ロードサービスの告知広告に JAF総合案内サービスセンターのナビダイヤルを掲載している(写真右)

均一なサービス提供と運用面を考慮してナビダイヤルを採用

 サービスセンターの電話窓口には、0570ではじまるナビダイヤルが採用された。これはNTTコミュニケーションズが提供しているサービスで、通話料金の負担を発信者と着信者で折半できる点が大きな特徴となっている。
 JAFでは、サービスセンターを1カ所に集約したことから、発信地域によってお客様の負担する通話料に差が出ないよう公平性を保つために、ナビダイヤルを導入。お客様が負担する通話料を、一般加入回線からは1分10円、携帯電話からは20秒10円に設定している。
 また、時間外アナウンスや受付先変更といった機能だけでなく、センターの運営管理に役立つ機能が充実している点も導入の決め手になった。オプションサービスのカスタマーコントロールを利用すれば、受付時間や回線数の設定および変更がサービスセンター内の端末でできるほか、時間帯別に稼動状況を把握することも可能だからだ。
 さらに、電話番号を変更せずに済むことも導入理由のひとつに挙げている。将来的には受付体制を拡充する可能性があり、それに移転が伴ったとしても、現在の電話番号を継続的に使用できるというメリットがある。

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JAF総合案内サービスセンターの様子。専用端末で会員情報を参照しながら応対。時には後方のPCでインターネットに接続し、施設案内をすることもある

応対履歴データベースの構築とスキルアップが課題

 サービスセンターの開設から約3カ月が過ぎた。今は、あれこれ考えているだけでは前に進めないので、とにかくやってみようと試験的に稼動している段階。データを蓄積し、サービスセンターに課せられた目的を達成するために最善の体制を導き出すことに注力しているところだ。
 また、サービスセンターでは、システムと人材の両面において課題を認識しており、今後解決に取り組んでいく意向である。
 まずシステム面においては、応対履歴データベースの構築を課題としている。現在、サービスセンターでは、応対履歴がデータベース化されていないため、スタッフは専用端末で会員マスターを参照しながら受付内容を受付用紙に記録しているが、データの集計・分析や、本部、地方本部および支部との情報共有を実現するには、応対履歴データベースの構築が不可欠である。加えて、受付業務の効率を高めるという意味でも、対応しながら情報を入力できる環境が望ましい。そのため今後は、システム環境の整備に取り組んでいきたいとしている。
 一方、人材面においては、スタッフのスキルアップを課題としている。ありとあらゆる問い合わせにワンストップで対応するには豊富な知識が必要となる。勤続年数の長い職員であってもすべてを知り得ることは難しいのだから、入社間もない派遣スタッフがすべての知識を得ることはなおのこと難しい。日々の業務をこなしながら研修を行うにはさまざまな制約があるが、OJTプラスαの取り組みでスキルアップを図る意向だ。
 応対品質の向上と業務効率の向上に向けて、新たな一歩を踏み出したばかりのJAF総合案内サービスセンター。目的を達成するのはもちろんのこと、将来的にはロードサービスの使命でもある“安心感”も提供できるセンターを目指したいとしている。
 サービスセンターが乗り越えなければならない課題は多々あるが、決して不可能なことではない。今後の発展に期待したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年6月号の記事