「収益向上は顧客満足の結果」と考えカスタマー・エクスペリエンス向上を推進

DHLジャパン(株)

DHLジャパン(株)のカスタマーコンタクトセンターでは、カスタマー・エクスペリエンス向上を目指し、顧客満足度指標“NPA”活用などの諸施策を展開。いずれも各エージェントの能動的な参画を基本とし、“納得”して取り組める環境を整えることで、効果の最大化を図っている。

顧客満足を最重要視する企業文化の下でカスタマー・エクスペリエンス向上のための諸施策を展開

 世界220以上の国・地域を結ぶグローバル・ネットワークを誇り、ビジネス書類はもちろん、小型から大型まで、さまざまな貨物の「安全」「確実」かつ「スピーディー」な輸送を行う「DHL Express」の日本法人として、国際航空輸送(エクスプレス)事業を展開するDHLジャパン(株)。顧客サービスを重視する同社では、コールセンターを擁するカスタマーサービス本部を社長直轄セクションとして位置付けている。そして同本部の下に集荷依頼やサービス内容に関する問い合わせ受付などのフロント機能を担う「カスタマーコンタクトセンター」のほか、貨物の配達アレンジや追跡調査、お客さまへの案内といった二次対応を行う「カスタマーケア」、専任担当によるきめ細やかなサービスでグローバルおよび日本国内の重要顧客をサポートする「キーアカウントサポート」、センタースタッフの教育・研修やワークフォース・マネジメント(WFM)などを担う「デベロップメントチーム」といった部門を置き、これらを連携させることで、充実した顧客サービスの実現につなげている。
 さらに最近では、グローバルのカスタマーサービス部門全体で、ICCC(Insanely Customer Centric Culture)プログラムの展開を開始。日本でも2013年11月から“超・顧客中心主義”とも訳すべきこのプログラムを遂行すべく準備を進めており、2014年から本格展開を行うことで、「エージェント1人ひとりがお客さまと同じ気持ちになって対応する」体制を一層強化し、さらなる顧客満足度の向上につなげていきたい考えだ。
 このような取り組みを展開する同社では、当然のようにカスタマー・エクスペリエンスの向上を重要視している。その源泉にあるのは、「お客さまにとって不利益になる出来事が起きたら、強い不快感を覚えるべきだ」という、同社内にグローバル・レベルで浸透している企業文化。収益向上は、あくまでも従業員とお客さまの心の結び付きの中でもたらされる高品質なサービス提供に対する顧客満足の結果であるという考えの下、時にはコストを度外視し、また通常の業務フローを逸脱してでもサービスの提供を行い、顧客満足の向上に努めている。

お客さまに気持ちや考えを直接伺う機会を設けることでNPA導入の効果がアップ

 同社カスタマーコンタクトセンターで実施しているカスタマー・エクスペリエンス向上のための具体的な施策としては、顧客満足度指標としてのNPA(Net Promoter Approach)の活用が代表的だ。
 一般にはNPS(Net Promoter Score)と呼ばれるこの指標は、商品・サービスやブランド・企業などに対する顧客のロイヤルティ(忠誠度)を示すものであり、“究極の質問(Ultimate Question)”と言われる「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思うか?」という問いに対する答えを0 ~ 10の11段階で調査。10 ~ 9を「プロモーター(推奨者)」、8 ~ 7を「ニュートラル(中立者)」、6以下を「デトラクター(非難者)」と分類し、プロモーターの割合からデトラクターの割合を引いて指標化するものであるが、同社では2012年秋からこの指標を導入。継続的な運用を進めている。
 具体的な運用方法は、カスタマーコンタクトセンターに寄せられる1週間に1万5,000 ~ 2万件にも及ぶ集荷依頼コールの中から、無作為にサンプルを抽出。外部調査機関が実際にそのコールをかけたお客さまに、カスタマーコンタクトセンターや集荷を担当するドライバー、通関部門など、タッチポイントごとのNPAのスコアを尋ね、その平均スコアの推移を検証。さらにスコアが8以下の対象者については、“セカンドコール”として、スーパーバイザーやエージェントが直接、お客さまに電話をかけて、スコア付けの理由やどうしたらワンランク上のスコアを得られるのかといったことを伺うというもの。このような取り組みによって、定量的なスコア向上を追求するだけではなく、その裏側にあるお客さまの気持ちや考えに直接触れる機会を設けることで、エージェントの「お客さまのために」という意識は目に見えて向上しているという。その結果、NPAのスコアも週ごとに多少、上下しながらも、全体的なトレンドとしては確実に右肩上がりになっており、直近8週間の平均では、同社のグローバル・ネットワークの中でも上位に位置する42 ~ 43点前後のスコアを記録している。

エージェントの「記憶に残った応対」をビデオ化し社内他部門にも配布

 そのほかにも、同社カスタマーコンタクトセンターにおけるカスタマー・エクスペリエンス向上のための施策は枚挙にいとまがない。
 例えば、お客さまから寄せられる感謝やお礼の声などは“サンクスコール”としてセンター内で共有。一方、お叱りやご指摘の声などはケーススタディ化し、エージェント研修の教材とすることなどで、不満やトラブルの再発防止につなげている。さらに2013年秋にはこのような取り組みのいわば“進化形”として、エージェントから「応対の中で記憶に残った経験」を募集。中でも感動的なストーリーを基にテキスト、スライドショー、音楽を組み合わせた5分程度のビデオを制作。センター内のチーム・ミーティングなどで鑑賞するほか、営業部門など社内他部門にも配布し、センターの取り組みの理解向上などに役立てている。
 また、2013年10月のCSウィークには、各エージェントが、担当するお客さまへの“感謝の気持ち”を記した直筆の手紙を書き、集荷担当ドライバーに直接手渡してもらうといった試みも実施。お客さまとの“心の交流”の促進を図っている。
 さらに、同社のクライアント企業の中でもヘビーユーザーと位置付けられるキーアカウントサポートの対象となるお客さまからの集荷依頼コールに対しては、“ お得意さま”として、どのような対応をすべきかを模索。2012年からミステリー・ショッパーなどの取り組みによって「通常スクリプトとどのような点を変えるべきか」「感謝を表すために、どのようなフレーズを追加すべきか」などを検証し、2013年から本格的な運用を開始している。
 これらの取り組みに共通しているのは、現場のエージェントの参画を重要視していることだ。もちろん、施策の基本的な方向性はマネジメント層が示すが、取り組みの具体的な内容についてはトップダウンではなく、エージェントを交えてミーティングやトライアルを実施。各エージェントが“納得”して取り組める環境を整えることで、施策効果の最大化を図っている。
 今後については、例えば、現状では業務フロー上、カスタマーコンタクトセンターでのワンストップ対応が難しいお客さまの要望などについても、ワンストップで解決できるようにしていくため、全社的な業務フローの最適化に関する提言などを積極的に行っていく考え。これらを通じて、カスタマーサービス本部の究極の目標である「“カスタマーサービスといえばDHL”と言われる存在となること」の実現を目指していく方針である。

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各エージェントが主体的に参画する施策の実施により、顧客満足、ひいては収益向上を実現しているDHLジャパンのカスタマーコンタクトセンター


月刊『アイ・エム・プレス』2014年2月号の記事