レストランカラオケ事業を展開するシダックス(株)では2010年12月、「レストランカラオケ・シダックス」アプリの提供を開始。その主要機能である時限クーポンを活用して、全国300店舗以上にも及ぶ「レストランカラオケ・シダックス」の責任者の裁量による機動的な販促施策の展開を実現している。
スマホの急速な普及に対応して「レストランカラオケ・シダックス」アプリの提供をスタート
事業子会社であるシダックス・コミュニティー(株)を通じて、レストランカラオケ事業を展開するシダックス(株)では、2010年12月、スマホのGPS機能を利用したモバイルサービスを運営する(株)ロケーションバリューと共同で、同社が提供する時限クーポン配信サイト「イマナラ!」を活用した「レストランカラオケ・シダックス」アプリの提供を開始した。
「レストランカラオケ・シダックス」アプリは、Googleマップ上に示されたユーザーの現在地情報から、近くのレストランカラオケ・シダックスの店舗検索や、時限クーポンの取得、メニュー写真・最新情報の確認などができるほか、レストランカラオケ・シダックスで利用できるQRコード方式の「ケータイ会員証」を登録できる機能などを備えたスマホ・アプリ。当初はiPhone版のみの提供であり、「ケータイ会員証」登録機能は備えていなかったが、2011年3月には同機能を備えたAndroid版の提供を開始すると同時にiPhone版にも同様の機能を付加。現在では、スマホ・ユーザーであればキャリアを問わずにすべての機能を利用できる環境が整えられている。
同社では以前から携帯電話のマーケティング活用に積極的に取り組んでおり、2009年11月には従来のケータイサイトを、エンターテインメント・ケータイサイト「SHiDAX CLUB MOViVA(シダックスクラブモビーバ)」としてリニューアル・オープン。エンターテインメント性の高いコンテンツを日常的に利用してもらうことで同社への親近感の醸成を図るとともに、登録会員に対してはメールマガジンなどによりキャンペーン情報を配信するほか、随時、クーポンなども発行することで来店促進に役立ててきた。
「レストランカラオケ・シダックス」アプリはその延長線上にあるもので、2012年10月現在、600万人を超える「SHiDAX CLUB MOViVA」会員が、スマホの急速な普及に伴い、徐々に端末機種をスマホに切り換えていくことを見越してスタートした取り組みである。
現場のニーズに対応した機動的な販促を実現する“時限クーポン”
「レストランカラオケ・シダックス」アプリの最大の特徴は、なんと言っても時限クーポンを発行できることにある。
時限クーポンの基本的な仕組みは、ユーザーが現在地周辺のシダックスの店舗を検索すると、近隣の店舗の情報が地図上に表示されるとともに、当該店舗で使用できる曜日や時間帯に応じた限定クーポンが提示され、ダウンロードすることにより、割引クーポンとして使用できるというもの。ユーザーによるダウンロードの手間に報いるという意味で、従来の各種クーポンと比較して割引率を高めに設定している。「○時までに入店の方 ルーム料○% OFF あと○枚」というかたちで、発行終了時間のカウントダウンとともに限定発行されるクーポンは、その発行枚数の多くがダウンロードされており、また、ダウンロードされたクーポンはその大部分が実利用につながっているという。
同社の販促戦略上から見たこのクーポンの大きなメリットは、全国で300店舗以上にも及ぶ「レストランカラオケ・シダックス」各店舗の責任者が、自らの裁量で機動的にクーポンを発行できることだ。カラオケ店は店舗型のサービス業であり、その繁閑状況には季節や日付、曜日といった全国共通の条件のほか、天候や地域の催事など、個店ごとの要因も大きく影響する。従って、販促施策はブランド全体と並行して店舗ごとにも行われることが望ましいが、従来は特にWeb関連の施策については、手間やコストの関係からその実現が難しかった。
しかし、「レストランカラオケ・シダックス」アプリの時限クーポンにおいては、同社グループ内の担当部門が直接オペレーションを行うことでこの問題を解決。通常でも発行希望日の3~4日前、緊急度が高い場合には前日でも、各店舗の責任者が割引内容や発行枚数を決めて申請を行うことで希望の日時にクーポンを発行できる体制が整えられており、現場のニーズに対応した機動的な販促を実現している。
前述の通り、ダウンロードされたクーポンはその大部分が実利用につながっていることから、実際に活用している各店舗の責任者の評価も高く、同社としては今後さらにその活用度合いを高めていきたい考えである。
近隣の店舗の時限クーポンをはじめ、お得な情報、エンターテインメント性の高いメニューを取り揃えて日常的な利用を促進している「SHiDAX CLUB MOViVA」
エンターテインメント性の高いコンテンツづくりで日常的使用による親近感醸成を図る
「レストランカラオケ・シダックス」アプリでは、時限クーポンや会員証機能など、いわば実用性の高いコンテンツ以外に、エンターテインメント性の高いコンテンツにも注力している。その代表例として、録音した自分の声や動物の鳴き声、物音などで楽器演奏(ピアノ、トライアングル、タンバリン、マラカス)ができる「音アプリ」機能などが挙げられる。これらを日常的に利用してもらうことで、同社への親近感が醸成されることを目指しているのだ。なお、同社では今後、例えばゲームや占い、さらには生活関連情報のコンテンツなども一層充実させていくことで、同アプリへの接触頻度をさらに高めていきたい考えである。
そのほか、「レストランカラオケ・シダックス」アプリに関連する今後の課題としては、適用範囲の拡大や利用会員のさらなる増大が挙げられている。
適用範囲の拡大については、同社グループが手掛けるスペシャリティーレストラン(和・洋レストラン)、カフェ・スイーツブティックなど、レストランカラオケ事業以外の飲食事業への同アプリの適用を順次、進めていく方針。すでに一部のスペシャリティーレストランについては2012年8月から適用対象に加えている。
利用会員の増大については、「レストランカラオケ・シダックス」アプリ利用者を含むケータイ会員を現状の600万人超から1,000万人規模にまで拡大していきたい考え。従来の店頭中心のプロモーション以外の新規会員獲得にも注力していく意向だ。
その中で重視しているのが通信キャリアを介した会員獲得であり、すでに2011年からソフトバンクモバイル(株)の携帯電話の一部機種について「レストランカラオケ・シダックス」アプリをプリインストールしていることに加え、2012年11月には同社のケータイサイトが主要3キャリアの公式サイトとなることも決定しており、今後はこのようなかたちでの通信キャリア各社との協力関係の下、新規会員の獲得を推進していきたい考えである。