ハーレーダビッドソン ジャパン(株)では、1995年から、ハーレーオーナーをつなぐ会員組織「ハーレー・オーナーズ・グループ(H.O.G.)」を運営。特に近年では、オフィシャルイベントの多様化や会員との日常的なコミュニケーションの充実化など、会員の満足度向上施策に積極的に取り組んでいる。
メンバーにハーレーに乗る楽しみを提供
二輪車の世界的ブランドである「ハーレーダビッドソン」の日本国内におけるマーケティング、セールスを手掛けるハーレーダビッドソン ジャパン(株)。同社では1995年から、会員組織「ハーレー・オーナーズ・グループ(H.O.G.)」の運営を行っている。
H.O.G.は、1983年に米国でスタートしたハーレーオーナーをつなぐ世界最大のライダーグループ。世界131カ国で100万人以上の会員を擁しており、日本国内でも約3万5,000人の会員を集めている。
入会資格は同社が提供する二輪車、ハーレーダビッドソンのオーナーであること。年会費は1万円だが、同社正規販売店での購入の場合、初年度は新車の場合無料、中古車の場合は半額の5,000円(登録から1カ月以内の申し込みに限る)としている。
H.O.G.の目的は、メンバーに対してハーレーダビッドソンに乗る楽しみを提供すること。従って、そのプログラムの中心は、メンバーがハーレーダビッドソンに乗る機会を増やすための動機付けを行ったり、付加価値の提供によりハーレーダビッドソンに乗る楽しみを増やしたりすることに主眼を置いたものとなっている。
その中心となっているのが「H.O.G.マイレージプログラム」である。このプログラムは、ハーレーダビッドソンで走った距離に応じて“マイル”を提供し、獲得したマイルに応じて記念品をプレゼントするというもの。3,000マイル、5,000マイル、1万マイルといった節目ごとにさまざまな記念品を用意しており、さらに10万マイルを達成すると「走りの殿堂」入りした会員として、後述するH.O.G.メンバーズWebサイトや会報誌『H.O.G.MAGAZINE for Japan』上でも紹介する。ちなみに、これまでに「走りの殿堂」入りした会員は210名以上に及んでいる。
このプログラムでは、H.O.G.のオフィシャルイベントに参加するとボーナスマイルが進呈される点も大きな特徴となっている。多忙でハーレーダビッドソンに乗る時間をなかなか取れない会員でも、イベントに参加し、ボーナスマイルを獲得することでマイルを積み重ねることができるので、プログラムへの興味が継続するというわけだ。
一方、1万円という年会費の妥当性を高めるという意味で、「ロードサイドアシスタンス」や「盗難プロテクト」といったサービスも提供している。
ロードアシスタンスサービスは、ツーリング時に車両トラブルがあった場合、最寄りの同社正規販売店まで、その距離を問わず無償で搬送するもので、日本全国(離島を除く)、24時間365日受け付けを行っており、さらに帰宅費用、レンタカー費用、宿泊費用のいずれかのサポートも行う。追加費用を負担することでさらに充実したサービスを受けることができる「スタンダードプラス」「プレミアム」といったプランも用意されている。
盗難プロテクトサービスは、対象車両のメーカー希望小売価格の3%の加入料を支払うことにより、万が一愛車が盗難にあった際にメーカー希望小売価格の最大90%を補償するもので、盗難被害車両が発見されて損害を被っている場合には、修理代も補償される。
このような取り組みの結果、会員の年間ベースでの更新率は徐々に向上する傾向にあり、最近では70%を超える状況となっている。
オフィシャルイベントの多様化に注力
H.O.G.の運営において、同社が近年、特に注力しているのが、オフィシャルイベントの多様化である。
H.O.G.のオフィシャルイベントとしては「BLUE SKY HEAVEN」が代表的存在である。このイベントは、年1回、静岡県の富士スピードウェイで2日間にわたって開催しているもの。「チャプター」と呼ばれる同社正規販売店網の運営によるH.O.G.の“支部”的な組織に所属していれば、1,000台もの規模でレーシングコースを走行できる「チャプターパレード」などのプログラムで人気を集めており、参加者は毎年8,000人前後に達している。
そのほか、ツーリングイベント「シーズンラリー」やミーティングイベント「ファンライドラリー」なども随時、全国各地で開催しており、多くの参加者を集めているが、これらのイベントは基本的に土・日曜日に開催されることが多く、仕事の都合で参加できないという会員も多かった。そこで同社では新たに平日開催のツーリングイベント「ウィークデーラリー」を追加し、これらの会員の参加を促進。また、ハーレー・ライディングの上達法を伝授する「ライディングレッスン」、さらにその中でも女性だけを対象とする「レディースライドレッスン」、同社の研修施設で実車を使ってメカニズムなどを学ぶ「メンテナンスセミナー」、Twitterを通じて出されるヒントから開催場所を推理して集まる「シークレットラリー」など、バラエティに富んだイベントを多数用意することで、幅広い会員のニーズに対応し、H.O.G.への参加意欲の喚起を図っている。
今年5月26~27日に開催された、年間最大のイベント「BLUE SKY HEAVEN」の様子。イベントは、同社スタッフとハーレーオーナーの貴重な交流の場でもある
ユーザーの多様化に伴うニーズの細分化への対応が課題
会員との日常的なコミュニケーションの充実化にも力を入れている。
まず、年4回発行の会報誌『H.O.G.MAGAZINE for Japan』については、従来の36ページから60ページへの増ページを実施。内容についても、従来からのイベントのご案内などに加えて、“旬のツーリングおすすめポイント”や“誌上ライディングレッスン”、“ライディングファッション”など多彩な情報を追加し、“読み物”としての質の向上を図った。
また、H.O.G.メンバーズWebサイトについては、現在リニューアルを進めており、ユーザーインターフェースの改善により操作性の向上を図るほか、人気コンテンツのひとつで、ツーリングのルート検索などに利用できるオンライン地図ツール「ライドプランナー」の機能追加なども行っていく。さらにFacebookの活用なども検討しており、これらを通じて会員とのコミュニケーションのさらなる充実化を図っていく意向である。
H.O.G.の運営における今後の課題としては、ユーザーの多様化に伴うニーズの細分化への対応が挙げられている。
同社では、近年、実用以外の二輪車市場においてユーザーの高齢化が進む中で、若年層や女性などの新たなユーザーの獲得に取り組んでいる。その成果が徐々に表れつつある中で、H.O.G.においてもそれらの新規ユーザー層に対応することが求められているのだ。すでに“夫婦でハーレーを楽しむ”ようなユーザーの増加に対応して「ペアライドイベント」を実施し、好評を博しているが、今後もこのように細かいニーズに対応するイベント、サービスなどの充実化を図っていく意向。特に、新たにオーナーとなった“ビギナー”層の満足度を高めて、ハーレーダビッドソンを楽しむライフスタイルを少しでも長く続けてもらえる環境を整備していきたい考えである。